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在野の聖女は何処なりや? 我、聖女にならんと欲す  作者: 白麦茶
2章 あたしが立つ場所

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34話 災獣 -決着-

「帯域が掴めると言いましたか……!?」

「はい……!少しずつですけど、取り込めてます」


振り返らずも、驚きの声を隠せないブイヤールの言葉に答える。

昨日、散々繰り返した感覚と同じだ。

自分の中にある朱金の炎のような魔力の感覚。それが世界にもあり、少しずつそれを受け取っている感覚が確かにあった。


「私の方は相変わらず駄目ですね……一体どうして……。いえ、理屈はいい。アンジェ君、目一杯の魔術を使えますか?」


疑問を押し殺してブイヤールが問いを投げる。

全力で魔術を使えるのか、魔術を使った後もお荷物にならないのかと。


——この遠征では色々な学びがあった。

山歩きを学んだ。お陰で根性を鍛えることができた。

帯域を学んだ。新たな魔術の可能性に心ときめいた。

群れの脅威を学んだ。立ち続けることがどれだけ困難か身に沁みた。

たった二日、されど二日の学びは確かにアンジェの中にあって——だからこそアンジェは胸を張って頷いた。


「……行けます。任せてください」

「……分かりました。ですが火力について、奴に通じるかどうか私は知りません。一か八かですがここは私が攻撃を、」

「ちょっと待って下さい」


割り込むように静止の声が上がった。アンジェの隣から。

これまでラッツと二人で抱きしめ合い、ただ震えていたグレッグから。


「一体なんですかグレッグ君。今は流石に余裕がありませんので手短に」

「攻撃役はコイツに——アンジェに任せてやってください」


その言葉を聞いた時、正直なところ驚きよりも戸惑った。

あのグレッグが、攻撃役に推しだすなんて。

同じ疑問を抱いたのか、ブイヤールもまた困惑の色を隠せない。


「どういう風の吹き回しです?あなたはアンジェ君を認めていなかったかと思っていましたが」

「別に、ただ……」


大きく息を吐きながらグレッグが立ち上がる。

その姿はまるで、なにか抱えきれないものを吐き出すみたいだった。


「パリストン草原の焼け跡、見たっスよね。あれをやったのがアンジェで、使ったのが連鎖詠唱っス」

「そうですか…………分かりました。その焼け跡とあなたを信じましょう。攻撃はアンジェ君に任せます」


一歩前へと踏み出し、ブイヤールが叫んだ。


「これから仕掛けます!注意を引いてください!!」


返答は、流星群だった。

これまで茨を迎撃していた分をも割り当てて、小流星の釣瓶打ちがバラの災獣、その本体を打ち据える。

それを行うノンナ自身は握りしめた双剣を、今まで以上に閃かせた。その身を茨が掠めようとも、構いなく小流星を撃ち続ける姿はワルツのようだ。


「地下だ!地下を狙え!!」


ノンナとは別の方角から鋭い声が上がる。

ムチを受けたのかボロボロになりながらも、その目は爛々としたザンデンがそこにいた。


「どんだけ撃ってもへこたれねぇ!そもそも昼間コイツはこんなにデカくなかった!!

ならコイツの魔石は地下だ!地下を狙え!!」


地下を狙う。だったら手段は——


「まずは触手を減らす……!

"――私は祈る。一重二重(ひとえふたえ)九重(ここのえ)と、巡り廻りて祭祀を成すは炎の民

縒われし血潮は赤き舌、束ねし熱は赤き陽炎

焔の吐息よ嘗め尽くせ" 【紅吐息】!!」


掌から放たれた火炎の帯が、腕の動きに合わせて大きくうねる。

本体は水分を含んでいるからかさほど燃えなかったが、触手はその数を減らしていた。

焦げ付いた茨の触手はこれまで違って中々再生しない。


——キィィィイイイ

焼かれたことに反応してか、燃え残った茨が唸りをあげて迫るがブイヤールが再び【水晶壁】を展開して防いだ。


「今度は氷……!"――都度願う。霜付く六花よ咲き誇れ"【氷青華】!!」


赤いバラ目掛けて六花が放たれたが、小流星や矢同様に太いムチで防がれる。しかし、【氷青華】は防がれてこそ意味がある。

六花が突き刺さったバラのムチに大きな青い花が咲き誇った。


「……〈モノ・テイル〉!」


即座に放たれた小流星が凍りついた蔓を打ち砕く。断面は氷で塞がれて伸びることが出来ないみたいだ。

怒りにバラの災獣全体が大きく震える。

放たれた触手は【水晶壁】を周り込むように攻め込み、


「ぃぃやぁぁぁあああ!!」

「ぉおらぁぁぁあああ!!」


ラッツの掲げる盾に弾かれ、グレッグの一閃に斬り取られた。

これまで出来なかったことが二人に出来るようになった。

ならばあたしも続きたい。置いていかれたくない

その思いが口から溢れた。


「今からやることは明日のあたしに自慢できることかしら」


カウントは一個しかない。だか、やる。絶対に届かせる……!

世界に横たわる帯域の魔力を鷲掴みにして、全てをここに注ぎ込む……!


「……ハッ!森の栄養になるのはアンタの方よクソ植物!!

"——一度の願いを今ここに!私は祈る。時告ぐ砂よ、あるがままに"!【逆さ山溜る柳】!!」


瞬間、バラが根を張る地面が大きく陥没した。

本来ならばもっと深く、広く呑み込むはずだった。だが蓄積は一つ。地面を崩せても、巨体を落とし切るには到底足りない。それでもいい。地面が消えたことでバラの巨大が沈む。しかし落ちきることはない。陥没の範囲外にも届く大きな根が七本、それが巨体を支える柱となっていた。そして——


「……ん。見えた……魔石!!」


満月を背に天狐が空を舞う。

周囲にある光点は八つ。故に、


「……〈オクタ・テイルス・メテオライト〉!!」


天から地へと振り注ぐ八つの小流星。

それは根を断ち、逆さとなったバラの災獣、その地中にあった魔石を撃ち抜いた。

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