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在野の聖女は何処なりや? 我、聖女にならんと欲す  作者: 白麦茶
1章 彼女は決意した

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2話 彼女の理由

「なるほど。確かにハンターをやっている聖女もいる。中には癒しを不得手とする者もね」

「はい。歴史を紐解けば、癒しの奇跡によらず聖女と認められた方もいます」

「だが、それを知っているのは学者か、よほど熱心な信徒くらいだ」


テンドーが少し身を乗り出した。


「世間が聖女に求めるものは、もっと単純だよ。――傷を、病を、癒してほしい」


アンジェは押し黙る。


「君がどれほど立派な聖女になったとしても、『聖女様なら治してくれる』と訪ねてくる者は必ずいる。それが悪意のない期待だからこそ厄介なんだ」

「……」

「だから多くの聖女は教会や神殿にいる。本人一人では抱えきれないものを、組織で受け止めるためにね」


テンドーはアンジェをまっすぐ見た。


「だが君は、ハンターとして世界を巡りたいと言う。では聞こう。君が治せない者に出会った時、代わりに託せる回復術士はいるのか?」

「……いません」

「世界を一緒に回ってくれるような、腕の立つ回復術士の友は?」

「……いないです」


返す言葉がなかった。

それでも。


「でも、諦められません」


アンジェは顔を上げた。

子供の頃からの夢だった。

昔読んだ、聖人や聖女たちの伝記。

世界を巡って人々を護った者も、一つの土地に根を張って迷える者を導いた者も、幼いアンジェには皆まぶしく見えた。

いつしか、自分もそうありたいと思った。


教会に残る道もある。

地方へ赴き、人々を支える道だってある。

それでもアンジェは、自分の足で世界を見たかった。

かつて聖人たちが歩いた土地を巡り、その先で、自分自身の手で誰かの役に立ちたかった。


わがままなのかもしれない。

それでも。


「……あたしは、聖女として世界を巡りたいんです」


しばらくして、テンドーが大きく息を吐いた。


「まったく。これじゃ私が悪役だな」

「……申し訳ありません」

「謝らなくていい。若さっていうのは、そういうものだ」


そして、人差し指を一本立てる。


「一つ、手がないわけでもない」

「……手?」

「伝手がないなら、作ればいい」


アンジェは瞬いた。


「アンジェ・スプラウト。君は魔導神官としてハンターになりなさい。その旅の中で、共に世界を巡れるだけの腕を持つ回復術士を仲間にすること」


テンドーが笑う。


「それが出来たら、私の名前で聖女審査に推薦しよう」

「――っ!」


胸の奥が跳ねた。

ハンターになってから、自分でどうにかするしかないと思っていた。

そこへ突然、一本の道が示された。


「ただし見つからなければ、君はそのまま教会出身のハンターだ。もっとも、戻りたくなったら我が部門で歓迎するよ」

「ありがとうございます。でも――見つけます」

「いい返事だ。なら餞別を一つ」


テンドーは手帳を取り出した。


「ティルフィタリアという街は知っているね?」

「魔獣戦線都市ですよね」

「ああ。そこに、とんでもなく腕の立つ回復術士がいるという噂がある」

「回復術士……」

「大規模な魔獣災害で多数の負傷者を救っただの、祖竜を相手に時間を稼いだだの。噂だから、どこまで本当かは分からないがね」


盛られている可能性は高い。

だが、火のない所に煙は立たない。

それにティルフィタリアなら、噂の人物でなくとも回復術士との出会いは期待できる。

行く理由としては、十分だった。


「その人物、背中ほどまである銀髪だそうだ。ただ――」

「何か問題でも?」

「女性のはずなんだが、実は男だとか女装だとか、情報がひどく錯綜している」

「……はい?」

「というわけでアンジェ君。ついでに調べてきてくれ」

ここまでお読みいただきありがとうございます。


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