一章 幕間
カタン、カタンと周期的に物音が室内に響き渡る。
その部屋には机があり、椅子がある。この部屋主にして椅子に深く腰を下ろした黒髪の少女リアは、何を言うでもなくピアスを指で摘んでは落とす行為を繰り返していた。
何も見えない夜闇の中、カタン、カタンとピアスが机に落ちる音がする。
この物品の調査自体は、リアはすでに終えている。今しているのは、得られた要素を頭の中で並べ直し、思考の底へ沈むことだけだ。
しばらくするとバチンとスイッチが入る音がして室内が明るく照らされた。
「……ただいまーって、何やってんの?」
「ノンナ、か。……このピアス、どう思う?」
ピンッ、と甲高い音を響かせて、弾かれたピアスがノンナの小さな掌に収まる。ノンナは掌中のピアスを改めて摘んで確認した。
「……別に……普通のシンプルなピアスに見えるけど」
「そうか……呪詛使いとして、どう見る?」
「………………!?」
静かに顔を強ばらせていくノンナを尻目に、席を立ったリアは食器棚からコップを2つ取り出した。そしてそのまま、魔導式冷蔵庫から取り出したピッチャー内の麦茶を注いでいく。
「違和感あったから調べてみたが……その顔なら確定だな」
「……このピアス、何処から?」
「アンジェが身につけてた奴だ。んで、なんつーたか。あの一緒にいた女神官。あいつにつけてもらったらしい」
「……エミリーね。エミリーは何処からこれを手に入れたんだろ」
「取り調べじゃ、エミリー本人も知らないし覚えてないって話だ。認識系の暗示は呪詛の領域だったな」
コツッと、コップが机に置かれる。1つは席に戻ったリアの前に。もう1つはノンナの定位置に。
だがノンナはピアスを持ったまま動かない。
するとノンナもよく知る不可視の力がノンナの指からピアスを摘み取り、リアの手元へ持ち去った。
「アンジェから詳しく聞いたが元は家畜の管理用魔導具で、編み上げようとした術式を妨害し激しい頭痛を引き起こすそうだ」
「……こんなので?本当に?魔導具としては小さすぎない?」
「んな理由ない。確かに家畜にタグピアスはつけるが、位置発信ビーコン程度の機能しかないはずだ……コスト面でな。
こんなに小型で高性能にする必要がない」
「……ということはそこも含めて認識イジられてる?」
リアが指先で弄ぶピアスをノンナは強く睨みつける。過去に呪詛に触れた経験がある彼女にとってそれは、容認することのできない何かだ。
「魔導具ではない……術式が刻まれていない。かと言ってアーティファクトでもないな……残響が聞こえねぇ」
「……うちでアンジェ引き取ることになったけどさ。なんかヤバいヤマ引き当てちゃった?」
「かもな……誰かがアーティファクトを真似て作った、だったりしてな」
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