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メカニカル☆ウィッチ  作者: 星乃祈
第1章「二人だけの約束」
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第8話「本物の戦いと偽物のバトル」



『――さて、今回はバトルの進行を務めるMCがいないからね。 君たちの機体が動くのを、バトルスタートの合図としようか?』

「何? どう言うつもりだ?」

『分からないのかい? 先手を譲ると言っているんだよ?』

「良いだろう、後悔させてやる!」


 輝の挑発に乗ったサターンが機体の背中の大型ブースターに火をつけ、一気にノーブルヴィーナスの元へとアークサターンを突っ込ませた。

 それなりに距離が離れていたとは言え、僅か数秒で距離を一気に詰められる辺り、やはり父の作った機体は凄い。

 

 展開したアークソードの刃が、輝たちの機体へと切りかかる。

 しかし……。


『流石は明日斗博士の作った機体だ……。 でも、()()()()()()僕たちの機体の方が上だ』

「チッ! 速い!?」

「消えた? いや、違いますわ!」


 美月が瞬きした一瞬の間に、輝たちの機体は消えており、アークサターンの剣が空気を裂くように空振りする。

 

 消えたように見えるが違う、魔力が見える目が残った魔力からその移動先を教えてくれた。


「上に逃げっ……もうあんな高い場所に!?」


 その後を目で追うと、ノーブルヴィーナスは遥か上空を飛行していた。

 背中の翼の様な二対の大型ブースターに加え、全身のスラスターと、折り畳んだ両足から白い光を放出させ、飛ぶその姿はまさに天使と呼ぶのに相応しい。

 そして、空を自在に飛ぶのは強者の証でもあった。


「飛行魔法は……上級者向けで難しい筈ですのに……」


 バトルで使用されるマジカルスキルは主に発動時に魔力を消費する攻撃魔法などの打ち切り型と、常に消費し続ける代わりに機体の性能をアップさせる補助魔法などの補助型がある。

 マジカルバリアを始めとしたデフォルトで搭載されている基本的な魔法を除いて、全部で十個まで自由にセットできるのだ。


 その中でも後者に分類される飛行魔法は、誰もが憧れから一度はセットするが、これがかなりの曲者であった。

 そもそも人型の巨大なロボットを浮力を無視して飛ばす関係上、常に多くの魔力を消費し続けることになり、燃費が悪いし、そもそも扱い自体が難しかった。

 空を飛ぶだけならまだしも、それに加えて機体の魔力を管理しながら、攻撃魔法などを使うとなると一気に難易度が上がる。下手すれば魔力切れで自滅しかねない程に。

 

 それ故にそれを使いこなせるのは、プロ並みのテクニックを持っている者だけだった。


「逃すか!」


 サターンはデフォルトで搭載されている『マジカルブースト』を発動させ、魔力を爆発させることで機体を加速させると、一気に空へと飛び上がった。

 殆どの機体は飛行魔法よりも、この魔法を使って一時的に飛ぶことを選ぶのだ。


『そうはさせないよ。 ヴィーナス、頼む』

『はい、マスター。 『ノーブルマルチウィング』発射』


 するとノーブルヴィーナスが背中の二対の翼を切り離した。

 切り離された翼がそれぞれ独立した動きで、空を自由自在に飛び回る。

 この動きはまさか……。


「これは……ドローン武器ですの!?」

「チッ! 厄介な!?」


 メカニカルウィッチの武器には様々な種類があるが、その中でも『ドローン武器』は頭ひとつ抜けた操作難易度を誇る武器種だった。


 メカニカルウィッチの操作方法が、マジカルウォッチを介して相棒とのリンクして、自分の体を操る様に動かす都合上、人外の動きは再現しずらいのだ。

 機体と直接繋がっている武器ならまだ操作しやすいのだが、ドローン武器の様に遠隔操作で機体から切り離して使ったり、機体そのものを飛行機などの人型以外に完全変形させるとなると一気に操作難易度が上がってくる。

 

 さらにドローン武器の場合は、マルチタスクと呼ばれる右手と左手で別々の作業を同時に行える並列処理できる能力が要求されるのだ。それも使用するドローン武器の数だけ。

 一応はオート操作もあるのだが、それでは動きが単調になり、基本的にマジカルスキルの劣化になりかねないので、これを使用する人は大抵が自分で操作するマニュアル操作だった。

 その真髄は、単騎によるフォーメーション攻撃である。


(は、速い……! もう視界外にっ……!?)


 目に追うのがやっとなレベルの速さで飛び回るノーブルマルチウィングたちが視界から外れてしまう。

 

 でも輝たちの機体本体から目を離す訳にはいかない。

 現にノーブルヴィーナスは両手に持った二丁の拳銃『ノーブルガンソード』をこちらに構えていた。

 銃身の長さからして遠・中距離用のライフルであるにも関わらず、まるで超長距用のスナイパーライフルのごとき正確さでビームの狙撃が飛んでくる。


「そんな物は効かない!」


 サターンが咄嗟にアークシールドを展開して防御する。

 そのまま一気に輝たちの機体の元へと飛び続けるが、相手の攻撃は正面からだけじゃない。


(左右から声が聞こえる……でも、速過ぎます……!)


 魔力が見える目の視界外なので、精度こそは落ちるが、美月の耳はドローン武器たちの動きを捉えていた。

 しかし、あまりにも移動が速過ぎる為、現在の位置の特定にどうしてもワンテンポ遅れてしまう。


「サターン、右から来ますわ!」

「はい!」


 右から飛んできた方をアークサターンの剣で受け止める。

 でも、まだ終わりじゃない。


「まだですわ! 今度は左!」

「ええい!」


 続いて左から飛んで来るが、今は剣も盾も使用していて、防ぐ手段がない。

 

 そこでサターンは全身のスラスターを利用して、機体を空中で無理やり回転させると、輝たちの狙撃の斜線上から外れて、自由になった盾でその攻撃を防いだ。

 そのまま左右のドローン武器を弾き飛ばすが、逃げ場のない空中で足を止めてしまった。

 一度アークサターンから距離を取ったノーブルマルチウィングに内蔵された銃口からビームが放たれる。


「無駄だ!」

「待っ……!」


 それを見たサターンは、反射的に再び機体を無理やり動かして回避するが、そのせいで美月からの指示が届かなかった。


「……罠ですわ!」

「――ッ!?」


 再びノーブルヴィーナスから放たれたビームの雨が降り注ぐ。

 回避は……できない。ドローン武器の攻撃を無理やり回避した今のアークサターンでは、今からではどう動いて、避けられない様になっていた。

 さらに今の姿勢では盾で防御することも間に合わない。美月の目がそれを証明してしまう。


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?」

「お嬢様!?」


 無防備なアークサターンの背中にビームの雨が直撃した。

 マジカルバリアで守られている為、直接的なダメージこそは、コックピットのある魔石内には届かないが、その光と振動が伝わって来る。

 この機体に乗ってから初めてまともに受けたダメージに、美月は本能的な悲鳴を上げてしまう。

 

 そのまま叩き落とされる様に、アークサターンは地上にある工場へと墜落する。

 工場の屋根を突き破り、そのまま地面に衝突しそうになるが、ギリギリのところでサターンが機体の制御を立て直し、どうにか無事に着陸させる。

 

「くっ! ……お嬢様、ご無事ですか?」

「ええ、何とか無事ですわ……。 ――ッ!? もう来……!」


 しかし、仕切り直す暇など与えてくれない。


 前後に見える工場の壁をビームが突き破ると、その後ろから続けて挟み込む様にノーブルマルチウィングが飛んで来る。


「何度もやらせるか! マジカルスキル! サターンスラッシュ!」

「ダメっ……!?」

(上からも狙われています!)


 自分の声が届く前にサターンがマジカルスキルを発動させる。

 

 ただでさえ、そのあまりのスピードに、一手先を見ているに等しい美月自身もそれを認識するのにワンテンポ遅れるのに、それをサターンに伝達するまでにさらにワンテンポ遅れてしまう。

 僅かにも見えるその時間の内に、サターンが自分で行動してしまい、こちらの指示を伝えられない。


 サターンスラッシュが起動し、辺りを吹き飛ばすが、ドローン武器もすぐさま表面のシールドで防御すると、その衝撃を利用して外に離脱していくのが見えた。

 そして、足を止めたアークサターンの頭上にノーブルヴィーナスの狙撃が降り注ぐ。


 機体にダメージが蓄積していき、建物自体も崩れそうになる。


「チッ! お嬢様、離脱します!」

「待っ……!?」


 サターンが機体のスラスターを加速させ、工場の出入り口を目指す。

 でも、そこには外に離脱したドローン武器が左右から回り込もうとしている。早く伝えなければ。

 しかし、そんな暇などなかった。入り口の外に降り立ち姿を表したノーブルヴィーナスを見て、サターンがさらに機体を加速させた。


「奴だ! これ以上に好きにはさせない!」

「サターン!」


 咄嗟に名前を呼ぶことしかできなかった。でも、もう間に合わない。

 アークソードを構え、輝たちの機体へと突撃したアークサターンは、工場の外に出たその瞬間に、左右から飛んで来たドローン武器により、両手に持っていた武器を弾き飛ばされてしまった。


「しまっ……!?」

『終わりだよ』


 主武装のアークソードとアークシールドを失い、思わず足を止めたアークサターンの頭部に、外で待ち構えていたノーブルヴィーナスが、その銃口を向けた。

 さらにその左右をノーブルマルチウィングが取り囲む。

 無理だ。この距離では、絶対に避けられない。


『武装を失い殆ど丸腰……これで君たちの負けかな? どうやら三分もいらなかったようだね?』

「輝……先輩……」

「貴様!?」


 焔たちとのバトルとは逆転した様な結果になっていた。こちらの攻撃は一度も届かず、一方的に蹂躙された。


『赤火焔君とのバトルでは、確かに君たちは強かった。 ()()()()()()()()()様な美月さんの目も、不調だった美月さんなしでも殆ど一人で戦えたサターン君の実力も確かに凄かった。 君たちの二人には凄い才能があった』

「――ッ!?」


 魔力が見える目には気づかれていなが、バトル中にトラウマに苦しんでいたことを言い当てられ、動揺してしまう。


『でもそのせっかくの才能が活かしきれない程に、君たちの二人はバラバラ過ぎる。 美月さんがバトルを恐れているのは今はまだ良い。 ()()()()()()()()()()()()()()ね。 問題は君だよ、サターン君。君は美月さんを()()()()()()だろ?』

「何だと!? 僕がお嬢様を信じていないだと!?」


 輝の言葉にサターンが強く反応した。その声には強い怒りを滲ませていた。


『事実だからね。 君は美月さんに戦ってほしくないあまりに、無意識に拒絶しているんだ。 だから、このバトルの様に、美月さんが僕たちの攻撃を察知しても、君が勝手に動くから対応できなかったんだ』

「それはわたくしが足を引っ張っているからで……」

『それは違うよ。 美月さんは足を引っ張っているんじゃない。 サターン君を縛る鎖になっているんだ』

「鎖……?」

『美月さんを守る為に戦うと言う使命と、美月さんを戦わせたくないと言う葛藤の中で、鎖に縛られたサターン君は本当の意味で全力を出せていない。 今の君たちの強さはあくまでも明日斗博士が作ったその機体の性能でカバーしているに過ぎないんだ』


 自分の存在がサターンを縛る鎖になっている?

 確かにサターンは式典で自分を守ってくれた。でも、その理由を自分は知らない。あんなに必死だったのは、父に命じられたからだけなのだろうか?

 自分はサターンのことを何も知らないことに今更ながら気づく。

 輝の言っていた、相棒にすらなれていないと言う言葉の意味を理解してしまう。


『あくまでも()()()()()()()()()()()()に過ぎない僕たちにすら負けるんだ。 これでは()()()()()を前にした時に()()()()()()()()()ことになってしまう。 だから、その前に君たちに一度負けて貰って、そのバラバラな関係を修復する必要があったんだ。 特にあまりにも敗北を恐れているサターン君に、自分の()()を自覚してもらう為にもね……』

「黙れッ……! ()()()()()()()しかしたことがない貴様に何が分かる……! 僕に敗北は許されない……僕の敗北はお嬢様の命に関わるんだ……!」

『……』

「弱い僕に存在する価値なんてない……! ()()()()()は勿論、こんな()()()()()()だって、僕は負ける訳にはいかないんだ……!」

()()()()()()か……』


 サターンの魂の叫びに胸が締め付けられる。

 弱かったら価値がないだなんて、何がそこまでサターンを追い詰めているのか?自分の存在が鎖になっていると言うのなら、自分がサターンを苦しめているのだろうか?


 そんな美月とは対照的に、輝の声は怖いくらいに冷静だった。


『……一つだけ思い違いをしていた様だね。 君は負けて美月さんを危険に晒すこと以上に、彼女を守れない弱い自分に存在する価値なんてないと思っているんだね……』

「黙れッ! 黙れッ! 黙れッ! 黙れッ!」


 サターンがまるで子供の様に絶叫する。その悲鳴が胸に突き刺さる。


()()()()()()()()()()()()よ。 だからこそ、君には敗北と共にその弱さを受け入れて貰う。 もう一度武器を取るんだ。 見せてあげるよ、君の言う()()()()()()の真髄を……! ヴィーナス!』

『はい、マスター』


 ノーブルヴィーナスはドローン武器を回収すると、飛行魔法で空へと飛び上がり、距離を取った。

 サターンも同時に弾き飛ばされたアークソードとアークシールドを回収して、再び機体に装備させる。


『これこそが、人間とメカニカルウィッチが共に至る到達点。 限界を超えたその先にある領域……!』

『『――シンクロゾーン!』』


 その言葉と共に、ノーブルヴィーナスの動きが一変した。


(何ですか……これ……?)


 一心同体ならぬ人機一体とはこのことなのだろう。

 もはや人間の様な動きと言うレベルじゃない、ロボットであることを感じさせない、その内部に機械ではなく血肉が入ってい様な生物じみた動きをノーブルヴィーナスと、ノーブルマルチウィングは行っていた。


『『マジカルスキル! ヴィーナスセイバー!』』


 ノーブルガンソードの先端に魔力が集まり、金色の光を放つビームの剣が生成される。

 そのまま最早、目で追えないスピードで動く輝たちの機体がアークサターンを切り刻んでいく。


「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!?」

「う……あ……」


 自分の魔力が見える目を利用して、サターンが死に物狂いで防御し、致命傷を防ぎ続ける。

 しかし、機体にどんどんダメージが蓄積していく。


 もはや美月は目の前の戦いに全く着いていけなかった。完全なお荷物になっていた。

 相手の動きが見えていても、脳の処理がまるで追いつかない。どうすれば良いのかすらも分からない。

 ずっとずっとこの魔力の見える目を使うのはずるいと思っていた。

 でも、本物の強者の前では、ハンデにすらなっていなかった。


 限界に近いアークサターンがついに地面に膝を突いた。


『終わらせるよ、ヴィーナス』

『はい、マスター』

『『マジカルスキル! ヴィーナスノーブルゲート!』


 ノーブルヴィーナスは一気に上空へと飛翔すると、呼び戻したノーブルマルチウィングを円を描く様に旋回させる。

 それにより巨大な光の門が生成され、そこに向かって撃ち込まれたノーブルガンソードのビームが、その威力と数を増大させて、アークサターンへと降り注いだ。

 最早ビームの雨どころではない、視界に映る全てがビームで埋め尽くされた嵐そのものだ。


「負けない……負けられない……僕が生まれた理由の為にもッーー!! ()()()()()()()の為にもッーー!!」


 絶望的な攻撃を見て諦めかけた美月とは反対に、サターンはまだ抗い続ける。

 アークソードとアークシールドを合体させ、アークX(クロス)アックスを作り出し、この機体最強のマジカルスキルを発動させた。


「マジカルスキル! サターンアークブレイク!」


 振り下ろされた巨大な斧と共に、暴力的なまでの紫色の光の魔力が放たれ、その余波で周囲の工場を破壊する。

 

 前回とは違い、人を助ける為ではなく、敵を倒す為に放たれた魔法は、破壊の限りを尽くしていた。


「立ち塞がる敵は全部倒すッーー!! お嬢様に害を為す全ての敵を僕がッーー!!」

「もう良いよ、サターン! 私はっ……!」


 機体がじゃない、今にも壊れてしまいそうなサターン自身を見て、美月はお嬢様人格を捨てて、必死に叫んだ。

 その叫びをかき消す様に、二つのマジカルスキルがぶつかり合う。

 両者はほんの一瞬拮抗したが、サターンのまるで命をかける様な攻撃は、輝たちのマジカルスキルを消し飛ばし、その背後にあった水場を真っ二つに割った。

 

 吹き飛ばされた大量の水がまるで雨の様に、アークサターンへと降り注ぐ。


「お願い、私の声を聞いてっ……! サターン!」

「お嬢……様……?」


 目の前の敵を倒したことでアークサターンがその動きを止めた。

 ようやく届いた美月の声に反応したサターンが焦燥した声で返事をする。

 しかし……。


『すまない、君を追い詰め過ぎてしまった様だ……』

「――ッ!?」

『だけど……これで終わりだ』


 いつの間にかアークサターンの背後に、ノーブルヴィーナスがいた。ヴィーナスセイバーの光の剣が迫ってくる。

 美月は気づかなかった。気づけなかった。もうサターン以外の周りのことなんてどうでも良かったから。


 それでも、反射的に反応したサターンが咄嗟に機体を振り向かせようとするが、遅かった。

 アークサターンの腹部に光の剣が突き刺さる。


「が……あ……」


 メカニカルウィッチには五感はあっても痛覚はない。

 仮に機体の頭部や手足を切り飛ばされても、それこそ機体本体が木っ端微塵になっても、痛みでショックを受けることはない。

 本体があくまでも実体を持たない人工精霊の為、基本的に()()()()()()()()()()()

 それを頭では分かっていても、サターンの漏らした苦痛の声が胸の奥深くに突き刺さった。


 それでもサターンはまだ執念で機体を動かし続ける。

 そんなアークサターンの左右に、トドメを刺すべく、飛んで来たノーブルマルチウィングが激突する。

 ついに機体が限界を迎え、マジカルバリアが砕け散った。

 機能を停止し、糸が切れた人形の様に、その場に崩れ落ちた。


「負け……た……? 僕……が……? う、嘘だ……? こんなの……?」

「サターン……」


 呆然とした様子でサターンの呟き続ける。

 美月は何も言えなかった。何を言えば良いのか分からなかった。


「う……あ……! 許されない……! これじゃあ僕は……お嬢様を……()()を守れない……!? うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!?」

「っ……!」


 まるで小さな子供が泣き叫ぶ様な悲痛な悲鳴だけがその場に響き続けた。


 ――こうして美月とサターンは初めての敗北を味わった。


 

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