第59話「ごきげんよう、お姉様!一回戦ですわ!」
「——いや〜、麗さんたちはほんまに凄いわ〜。 うちも全武器種を一通り使える様にはなったけど……まだバトル中は種類を制限しないと完璧には扱いきれへんのよ……」
「いや、あれだけのギミックを搭載した機体を完璧に使いこなせる夏凛ちゃんたちも十二分に凄いぜ!」
「ああ、とんでもねぇ才能だぜ!」
(夏凛ちゃんたちはすっかり居着いていますね……)
焔たちの試合の応援を終えた美月は、自分たち番が回って来るまでにはまだ時間があった為、こうして控え室まで戻って来ていた。
そんなミライトウキョウ校の控え室には、他校の夏凛と千秋とジェミニたちがしょっちゅう遊びに来る様になっていた。
まあ確かに、夏凛たちの従兄弟の冬馬だけではなく、明日斗博士の娘の自分に、二大チャンピオンバディと大学生チャンピオンバディと高校生チャンピオンバディと言う、凄い面子がこの場には揃っているので、そうなるのも無理はなかった。
夏凛はその面子でも特に二大チャンピオンバディに話しかけに行くことが多かった。やはり憧れなのだろう。
ちなみに美月も夏凛たちから友達認定されたこともあり、お互いに名前呼びする仲になっていた。
「麗さんもウラノスさんもありがとうございます! あ、ネオンさんにネプチューンさん! うちもいろんな種類の魔法を使える様になったけど……まだネオンさんたちの領域には全然届かへんのよ……。 どうすればネオンさんたちみたいになれますか?」
「……」
「ん〜? まあ、あたしとネオンちゃんは特別だからね〜♪ 無理だから諦めてとしか♪」
そんな夏凛に対して、麗とウラノスは未来のプロ候補として積極的にアドバイスをしていたが、ネオンとネプチューンは相変わらず同じ本物の魔女である美月以外には興味が無い様子だった。
「む、無情過ぎるわ〜!」
「おい、夏凛。 あまり皆さんに迷惑をかけるな」
「だって冬馬〜!」
駄々をこねる夏凛を、従姉弟の冬馬が宥めていた。
最初は夏凛のお目付け役として着いて来た千秋がその役割を担っていた。
しかしその当の本人は……。
「うお〜! これが御霊さんが自らの手で一から作ったと言う、『ゴーストプルート』! アシンメトリーでアンバランスな様に見えて、機体バランスを完璧に計算して設計されとる! ほんまに凄い完成度や!」
「まあ、御霊はメカニカルウィッチに関しては、本当に天才ですからね」
「フハハハハハッーー!! プルートの言う通りさ!! だが、千秋君の才能も素晴らしい! 『デュアルジェミニ』、本当に良い機体だ!」
「み、御霊さん、ほんまですか!? ありがとうございます!」
「「千秋が褒められてジェミニたちも嬉しいですー!」」
千秋はメカニックとして、未来の明日斗博士と呼ばれる御霊の元に師事しに行き、お互いの相棒のジェミニたちとプルートの機体を見せ合いながら盛り上がっていた。
そんな千秋は、明日斗博士のハンドメイド製であるアークサターンにも興味があった様だが、バトルの前に手の内を見るのはフェアじゃないからと我慢していた。
それなら美月も、千秋が作った機体を見ても大丈夫なのかと思ったが、どうやら素体の状態であるから問題ないらしい。千秋曰く、デュアルジェミニはバトルごとに装備を自由に変更できる機体らしい。
そんなデュアルジェミニは青を基調とし、白の装飾を纏った機体で、素体としての精巧な作りと、腰の大きなリボンの様な物も相まって、綺麗な人形の様な見た目をしていた。
その一方でゴーストプルートは、妹の御影のシャドウカロンと同じく、全身の殆どが黒く染められ、全体的にどこか生物染みたトゲトゲしいシェルエットをした機体だった。
千秋の言った通り、アシンメトリーな姿をしており、まるでいろんな機体の装備をごちゃ混ぜにくっつけたキメラの様な姿をしていた。
だが以前バトルしたシャドウカロンには数々のギミックがびっくり箱の如く搭載されていたことに加え、そんな機体を自らの手で一から作ったと言う御霊の一強状態と言われる今の大学生の部を見るに、きっととんでもない機体なのだろう。
(あ、そろそろですね……)
美月がそんなことを考えていると、呼び出しのアナウンスと共にマジカルウォッチの方にもメールが届いた。どうやら出番の様だ。
「「お嬢様、ご健闘をお祈りしております」」
「リン、爺や、ありがとう。 サターン、行きましょうか?」
「はい、お嬢様」
美月たちはリンと爺やに見送られながら控え室を出た。
すると入り口の近くでは小春が、彼女の母の風花と父の良馬と話をしていた。
「頑張ってね、小春。 それにジュピターも。 だけどくれぐれも無理だけはしないようにね?」
「ジュピター、小春のことをお願いするね?」
「ま、任せて……! 小春ちゃんは私が守るから……!」
「もお〜、ママもパパも、それにジュピターも心配し過ぎ! あたしはもう元気になったってのに!」
控え室には一般の観客は立ち入りは禁止されているが、リンと爺や御霊や小春の両親の様に、選手の家族や親族に関してはこうして許可されていた。
それに小春は昔は病気だったので、両親も心配なのだろう。
すると小春が美月に気づいた。
「あ、美月ちゃん! それにサターンも! お互い一回戦頑張ろうね! そして二回戦では負けないよ!」
トーナメント表では美月たちと小春たちは隣合っている為、お互い勝ち上がると次の二回戦で当たることになっていた。
そんな小春からの宣戦布告に美月も応えた。
「はい……! 私……んんっ、わたくしたちも受けて立ちますわ!」
*****
——一方その頃。
「——どうしよう……ママとルミとエールと逸れちゃった……」
輝の姪のレイが、競技場内で一人で歩いていた。
レイは母の光と家族のルミとエールと一緒に、今日の美月の試合の応援に来ていたが、あまりの人の多さにこうして逸れてしまったのだ。
さらにレイは母を探している内に、いつの間にか人が全然いない場所に入り込んでしまい、完全に迷子になってしまっていた。
そしてレイが当てもなく登っていた階段の先にあった自動ドアを人力で開けると、建物の外に出てしまった。どうやら屋上?に来てしまった様だ。
「あ、誰かいる……!」
レイの視界の先にある屋上の手すりの上に、女の子がポツンと立っていた。
すると背中を向けていた女の子はレイの声に気づいたのか、こちらを振り返った。
(綺麗な人……まるでお人形さんみたい……)
女の子はロングヘアの色が抜け落ちた真っ白な髪に、血の様に真っ赤なハイライトの消えた瞳をしていた。
真夏だと言うのに、暗い赤のセーラーブレザーの制服を着ていて、さらにその上から体のシルエットを隠すくらいにブカブカなコートを羽織っていた。さらに口元もまるでマスクの様に服で隠しているし、もしかして寒がりなのだろうか?
そんな彼女の肩の上には、漆黒の髪に、血の様な真っ赤なハイライトの消えた瞳をした、メカニカルウィッチの少年?がいた。相棒なのかな?
レイが思わず見惚れていると、女の子は興味を無くしたのか再び背中を向けてしまった。
「あ、ねえ! 何を見てるの? そんな所にいると危ないよ?」
レイがそう言いながら駆け寄ると、女の子はポツリと口を開いた。
「……人間」
「……人を? 何で?」
「……外の世界。 ……多くの人間。 ……珍しい。 ……初めて見た」
「……? あ、そっか! 確かにびっくりするくらいに人がいっぱいいるもんね!」
レイが屋上から下を見下ろすと、地上は全国大会を見に来た多くの人で溢れ返っていた。レイもこの人混みのせいで母たちと逸れてしまったのだ。
「……」
すると女の子はまた口を閉ざしてしまった。
だけど女の子のことが気になるレイは、自分から自己紹介をすることにした。
「私、レイ! 白金レイって言うの! お姉ちゃんたちのお名前は?」
「……零」
「……ん? どうしたの?」
レイは一瞬自分の名前を呼ばれたと勘違いした。
「……ボクの名前。 ……蛇遣異零」
「あ、そっか! お姉ちゃんの名前もレイって言うだね! えへへ……! 私と一緒だね! 相棒のお兄ちゃんのお名前は?」
「……サーペンス」
「お〜、カッコいい名前だね!」
零もサーペンスも抑揚の無い機械の様な喋り方で、一見すると冷たく見えるが、それでもちゃんと名前を教えてくれたことから優しい人たちなんだなとレイは思った。
すると突然、屋上の自動ドアが人力でバンッと開かれた。
「やっと見つけたぞ、蛇遣異! ……ったく、何勝手にほっつき歩いてんだ! 探すこっちの身にもなりやがれ!」
「キャハハハッ! あちこち駆け回る姿は本気でウケたわ!」
「チッ! うるせぇ!」
現れたのはウルフカットの暗い赤い髪に、赤い瞳を持つ、ガラの悪そうな少年だった。何だか不良っぽい……。
そんな彼の肩の上には、暗い赤い髪に、青い瞳をした、メカニカルウィッチの少女がいた。少年のことをバカにする様に笑っているけど、一応相棒でいいのかな?
「ほらさっさと戻るぞ! ……って、何でこんなところにガキがいんだ?」
「む! 私、ガキじゃないもん! 白金レイって言う名前があるもん!」
「げ!? 白金だと!?」
少年は白金と言う名字を聞いて露骨に嫌そうな顔をした。
ママのパパはJP国の代表として、ママの弟の輝は高校生チャンピオンバディとして有名だが、もしかしたら何かあったのだろうか?
「そう言うお兄ちゃんたちのお名前は?」
「ああ? チッ! 山羊沼天魔だよ」
「アタシはカプリコーンよ! 何度も名乗るのはダルいからちゃんと覚えときなさいよね!」
不良っぽいと思っていたけど、ちゃんと名前を教えてくれた。優しい。
「あー、レイだっけ? 迷子か?」
「うん……美月お姉ちゃんたちの応援に来たら、ママたちと逸れちゃったの……」
「黒土美月のかよ……!」
今度は美月の名前に露骨に嫌そうな顔をした。本当になんなんだろうか?
すると天魔はめんどくさそうに頭を掻きながら、ポケットから棒が着いた小さなキャンディを取り出した。
「チッ! めんどくせぇな……」
「じ〜」
「あ? ああ……レイも食うか?」
「食べる! ありがとう!」
レイがキャンディを見つめていると、天魔はポケットからもう一つ取り出してくれた。やっぱり優しい。
しかもレイが最近好きなグレープ味だった。
「……ったく、しょうがねえな! 迷子の子供を置いて行く訳にはいかねえし……蛇遣異たちを連れて帰るついでに送ってやるよ」
「天魔お兄ちゃん、いろいろありがとう!」
「……おう。 ほら、蛇遣異たちも帰るぞ!」
「……分かった」
「……了解」
「キャハハハッ! 不良の天魔が子供二人+αの引率をしてて本気ウケるんですけど!」
「チッ! 後で覚えていろよ、カプリコーン!」
*****
——同時刻。バトルフィールドへと繋がる選手用の通路にて。
『みづみづ☆ サー君☆ いよいよ二人の一回戦だね☆ 私は公式MCだから応援はできないけど、それでも個人的には注目しているからね☆ P.S.みづみづたちの紹介に明日斗博士の話を入れる様に運営から指示されたんだけど、大丈夫かな?』
「えっと……『スーちゃんの期待に応えてられる様に頑張りますわ。 それとお父様の話を入れても問題ありませんわ』っと……」
美月はマジカルウォッチに届いたステラからのメッセージに返信を行っていた。
すると秒で返信が返って来た。
『了解☆ 後は任せといて〜☆』
「アハハ……相変わらずスーちゃんは返信が早いですね……。 さてと……」
そしてステラとのやり取りを終えた美月は、改めて相棒のサターンへと声をかけようとした。
——その時だった。
「——ごきげんよう、お姉様! 一回戦ですわ!」
突然聞こえて来たハイテンションな声に、美月が思わず後ろを振り向くと、少女が両手を広げながらこちらへと走って来た。
この少女は確か……一回戦の対戦相手の子の筈……。いやそれよりも、もしかしてお姉様とは自分のことを指しているのだろうか?
混乱している美月に少女が思いっきり抱きついて来た。
「お姉様! こうしてお会いできる日を心待ちにしておりましたわ!」
「ええっと……?」
「おい、貴様! いきなり馴れ馴れし過ぎるぞ! お嬢様は貴様のことを知らない様だが?」
「おっとこれは失礼いたしましたわ!」
サターンの声を聞いた少女は一旦美月から離れると、まるでドレスの裾を掴む様に優雅なお辞儀をした。流石に夏服だからあくまでもフリだけど……。
「お初にお目にかかりますわ、お姉様。 それに、サターン様も。 わたくしの名は、早乙女心と申しますわ。 雨水瓶自動車の重役の娘で、カガクアイチ校の二年生ですわ。 そして彼女がわたくしの相棒の……」
「心姉様の相棒兼妹のヴァルゴと言いますぅ〜。 心姉様共々、よろしくお願いしますぅ〜」
心は金の髪を縦ロールにした、金の瞳を持つ少女だった。
そのお嬢様口調の強気な性格とお嬢様の様な容姿もあってか、どこか鏡の自分を見ている様だった。
そんな彼女の相棒のヴァルゴは、金の髪に、ピンクの瞳をした少女で、甘えん坊な妹の様な性格をしていた。
心が口にしていた雨水瓶自動車と言えば、確か……JP国有数の大企業の一つの筈。
そんな企業の重役の娘なので、もしかしたらどこで会ったことがあるのかもしれない。だけどやっぱり思い出せない……。
「お姉様、まずはわたくしとお姉様の運命の出会いを語らせて下さい」
「ど、どうぞ……ですわ……!」
どうやら心の方から語ってくれる様だった。正直に言って、心当たりが無かったのでありがたい。
そして心は自身の美月との出会いを語り始めた。
心は小さい頃からずっと両親の言うことを聞いて生きて来た。
両親の示す道はいつも正しかったが、それを黙って聞くだけの自分はまるで人形の様だと思っていた。だけど自分から何かをする気なんて起きなかった。
そんなある日、メカニカルウィッチ研究所の再建に関わった雨水瓶自動車の社長夫婦とその娘の代理として、重役の両親とその娘の心が式典に参加することになった。だかそれは美月も巻き込まれたテロ事件が起きた式典だった。
それに巻き込まれた心はヴァルゴと両親と一緒に研究所と陸地を繋ぐ唯一の大きな橋がある場所へと急いで避難をした。しかし研究所で一番高い建物である電波塔が爆発を起こし、その場所へと崩れて来そうになった。
心は悟った。自分の人生はこれで終わりなのだと。
——その時だった。
黒い騎士の様な一機のスーパーメカニカルウィッチが空へと飛翔したかと思うと、マジカルスキルで崩壊しかけた電波塔を破壊した。
それを見た皆が助かったことに安堵している中で、心は自分の心臓がドキドキと鼓動しているのを感じていた。皆を救ったその機体はとてもカッコよくて、その機体が使ったマジカルスキルはとても神秘的で美しかった。その姿に心は憧れた。
そしてその後日、その機体にはあの明日斗博士の娘の美月と相棒のサターンが乗っていたことを、ある伝手から心は知った。
それからと言うもの、心は自分の恩人であり憧れこの人でもある美月たちの追っかけをする様になった。初めて自分から何かをしたいと思ったそうだ。
「……と言う訳で、わたくしは恩人であり憧れでもあるお姉様へのリスペクトを込めて、お姉様と同じ口調にしてみたのですわ! それからきっと学園リーグランキングトップ十となって全国大会に出て来るお姉様と合法的に会う為に、こうしてわたくしたちも全国大会の場に参ったのですわ!」
「そうなんですぅ〜。 心姉様は四月の事件以来、本当に明るくなって、生き生きとする様になったんですぅ〜。 今まで殆どやって来なかったバトルにも取り組む様になって、こうしてカガクアイチ校の六位になったんですぅ〜。 や〜ん、心姉様〜! 頑張ったヴァルゴのことももっと褒めて下さい〜!」
「よーしよし、流石はヴァルゴ! わたくしの自慢の相棒兼妹ですわ!」
まさか四月に起きたテロ事件の際に助けた人たちの中の一人だったなんて……。
最初にいきなりお姉様と呼ばれたと時には驚いたが、こうして自分ことを尊敬してくれていることは素直に嬉しかった。流石に自分の真似をされるのは恥ずかしいが……。
すると時間になったのでバトルフィールドに向かう様にとアナウンスが聞こえて来た。
「……あらもうそんな時間ですの? ではではお姉様! それにサターン様も! またバトルフィールドでお会いしましょう! ごめん遊ばせ!」
「あ、でもぉ〜、心お姉様とヴァルゴは、実質的にバトルを始めてからまだ四ヶ月ちょっとの初心者なのでぇ〜、お手柔らかにお願いしますぅ〜」
心たちは最後にそう口にしながら走り去って行った。足が速い。あれなら本来心たちがいるべきであろう反対側の選手用の通路にギリギリ間に合う……かもしれない。
その背中が見えなくなるのを見届けた美月は、改めてサターンに声をかけた。
「サターン! 早乙女先輩とヴァルゴはバトルを始めてから四ヶ月でカガクアイチ校の六位になった、謂わゆる無名の怪物ですわ! だからわたくしたちも油断せずに行きますわよ!」
「はい、お嬢様! 一回戦、絶対に勝ちましょう!」
「「——マジカルチェンジ!」」
変身魔法が発動し、足元に巨大な魔法陣が出現すると、巨大な光と音と共に、スーパーメカニカルウィッチとなったアークサターンが現れた。だがその姿は今までのものとは違うものになっていた。
アークサターンのベースの部分はそのままだが、父である明日斗博士が送って来たアタッシュケースには入っていた強化パーツを取り付け、新たな武器を装備していた。
胸部、肩部、腕部、腰部、脚部の前面を中心に増加装甲を取り付け、新たな武器として、強化パーツにより非展開時もキャノン砲として使える様になった『アークXウィング』と、とある武器を核に『アークガン』と『アークランス』を合体させた、機体の身の丈に迫る巨大な銃槍の『アークXランス』を装備していた。待望の遠距離武器だ。
機体の攻撃力と防御力が大幅に強化された分、その代償として重量が増えた影響で運動性は低下していたが、それを補う為に増加装甲と新たな武器にはそれぞれ追加のスラスターとブースターが取り付けられていた為、加速力に関しては寧ろ上がっていた。
それから美月は目を閉じて、お守りのペンダントを両手で握り締め、勇気のお呪いを唱えた。
「——頑張れ、私! 頑張りなさい、わたくし!」
美月は本気のバトルに備えて、素の精霊人格から人間人格へと意識を完全に切り替えると、アークサターンの全身のスラスターと武器のブースターに火を灯した。
「行きますわよ、サターン!」
「はい、お嬢様!」
——攻撃と防御とスピードのあらゆる面で進化したアークサターンが、バトルフィールドへと発進した。




