プロローグ編062/【息吹 獅狼(いぶき しろう)】サイト0/後ろめたさから来た依頼
【天羽】の話は衝撃的だった。
だが、有益だった。
そこで、【亜里砂】と【希望】は拒否したものの、彼女だけは、情報を聞き終えるまで、しばらく名ばかりの【秘書】としてついてもらう事になった。
【天羽】は、
「【獅狼様】、今日もお仕事ですか?」
と尋ねた。
【獅狼】は、
「あぁ、そうだ。
これから依頼人と会う事になっている。
話を聞いてみて魂が震えたら、俺は依頼を受ける事にしている。
依頼料は依頼人の気持ちとしていくらだろうと受け取る事にしている。
俺はそのやり方でやっているのだが、かまわないだろうか?」
と言った。
【天羽】は、
「私はかまいませんよ。
あくまでも形ばかりの【秘書】ですので。
あれこれもうしません。
私が出来るのは有益な情報をお伝えする事だけです。
また、何かお聞きになりたい事が見つかりましたら、私にお伝え下さい。
私の言える範囲、知っている範囲でお答えしますので」
と言った。
その様な感じで、お互い理解を得ていた。
今回の依頼人は、2度目の依頼をしにきた【香月 美亜】と言う女性だ。
前回は、【迷い猫探し】と言う依頼だった。
見つけるまでの10日を要したのだが、報酬は【ご縁】と言う事でたったの【5円】だった。
全く元が取れないどころが大きな損失しか残らない依頼だった。
こんな依頼人の依頼などまともな者なら二度と受けない。
そう思われがちだが、【獅狼】は何度来ても受けるのである。
それが【息吹 獅狼】と言う人間なのだ。
一方、【美亜】の方だが、前回の依頼で散々、【獅狼】に苦労させたあげくの報酬がたったの【5円】と言う事で味を占めたのかと言うとそうでは無かった。
【獅狼】の真面目さは不真面目に生きる者に後ろめたさを感じさせる不思議な力がある。
前回、【5円】と言う恩を仇で返す様な真似をしてしまった彼女は、何とか、【獅狼】に正統な報酬を与えたいと思う様になり、依頼を探して持ってきたのだ。
今回は前回の分の上乗せも加えて報酬は弾むつもりで居る。
その上での依頼だが、厄介払いをされるのでは無いかと不安だった。
だが、【獅狼】は、
「2度目の依頼、感謝する。
今回はどのような用件で?」
と言った。
【美亜】は、
「あの・・・
怒ってないの?」
と尋ねた。
【獅狼】は、
「怒る?
何についてだろうか?
生憎、心当たりが全くないのだが?」
と聞き返した。
「だって・・・
前回、【5円】だったから・・・」
「【猫探し】の件を言っているのか?
あれは、今後とも【ご縁】がありますようにという事で【5円】だったはず。
お互い、それで納得したと思うが?
それに【ご縁】があったでは無いか。
こうして、2度目の依頼をしに来てくれた。
前回の【5円】は適正価格だったと言う事だ。
何の問題も無いと思うが?」
と返され、思わず、きゅぅぅぅんとなってしまう【美亜】。
惚れてしまいそうな感覚となった。
こんな男性に抱かれたい。
不覚にもそう思ってしまった。
前回の依頼ではからかってやろうと思っていた。
だが、【獅狼】は真摯に取り組み。
依頼を果たしてくれた。
彼の誠実な行動に対して、自分は何て惨めな真似をしていたんだ。
そう、思えてならなかった。
だから、彼と友達になりたいと思える女性になりたいと思うようになり、そのためには、前回に上乗せして、依頼料を払いたいと思って、一生懸命働いて稼いでから依頼にやって来たのだ。




