プロローグ編038/【雨条 雪寿納(うじょう ゆきずな)/(偽者)/元、札月 るわ(ふだつき るわ)】サイト0/再出発
不本意な形で【雨条 雪寿納】となってしまった【元、札月 るわ】は、心底震えている。
何故ならばいつ殺されるか解らないからだ。
彼は本物の【雨条 雪寿納】と超特別再生医療として、【AUHI(ARTIFICIAL ULTORAHYPERINTELLIGENCE/人工極超絶知能)】を使った自動手術を行い、【形状記憶肉体情報】を交換した。
それにより彼は、【雨条 雪寿納】としてしばらく生活をする事になった。
贅沢が出来ると言われたが思ったよりも出来なかった。
それは別に良い。
初めからそんなに期待していなかったから。
問題は【るわ】として活動していた本物の【雨条 雪寿納】の方だ。
よりによって、彼の愛人の【大沢 真弓】を殺しに行って返り討ちにあって殺害されてしまった事だ。
本物が殺されてしまった事で【るわ】には戻れなくなったし、【るわ】は死んだ事になってしまったから戻っても戸籍も無くなってしまう。
オマケに【雨条 雪寿納】のままで居ても【真弓】の刺客に命を狙われると言う事が人づてに伝わって来て震え上がった。
このままでは殺される。
だから、本物の【雨条 雪寿納】の知り合いの居ない別の場所に夜逃げするしかない。
そこで1からやり直すしかない。
【雪寿納/るわ】は、そう考えて高飛びした。
何をどうやったかは一切覚えていない。
とにかく使える手段は使いまくって逃げて逃げて逃げまくった。
そこで誰も知らない所で再出発を開始する事にした。
名前はあえて【雨条 雪寿納】のままだ。
この名前を何故か知っている気がすると言う者が出た場合、また逃げると言う事にしているからだ。
【雨条 雪寿納】の一人称は【俺】だったが、本来の【るわ】の一人称の【僕】に戻して生活する事にした。
もう、元の【るわ】に戻る事は諦めている。
勇気と呼べるかどうかは疑問だが、死ぬ勇気は無い。
やっぱり死ぬのは怖い。
だから、【雨条 雪寿納】として怯えながら暮らす事を覚悟していた。
【雪寿納/るわ】は、
「僕は1人で生きて行く・・・
生きて行くしか無いんだ・・・」
とつぶやいた。
自分に言い聞かせているのだ。
その時、
「そんな寂しい事言わないでよ。
人生はもっと楽しいよ。
ほらっ、笑ってごらんよ。
君には笑顔が似合う」
と言う声が。
見ると知らない女性だ。
恐らく【雪寿納/るわ】の顔はイケメンなので、逆ナン目的で近づいて来た女性だろう。
女性は、
「私は【下槻 小百合】。
貴方のお名前は?
貴方、私の好みにピッタリだわ」
と言った。
女性に褒められたのに全く嬉しく無い。
何故ならば、これは、【雨条 雪寿納】の姿形、顔だからだ。
【札月 るわ】のものではない。
だから、内面が好きと言われたのなら別だが、顔が好きと言われても全く嬉しく無かった。
【雪寿納/るわ】は、
「さ、さよなら・・・」
と言って名乗らずに逃げてしまった。
【小百合】は、
「あ、ちょっと・・・」
と言ったが、そそくさと彼は逃げ出した。
【小百合】は、
「何よ、もう・・・」
と思ったが、肉食系女子の彼女は次のターゲットを見つけ、
「ねぇねぇ、彼氏ぃ~。
今、暇ぁ?」
と声をかけた。
どうやら、めげないタイプの様だ。
どのみち、【雪寿納/るわ】が何の後ろめたさも無かったとしても性格の不一致で結ばれる事は無かっただろう。
【雪寿納/るわ】は【小百合】に逆ナンされただけで恐怖にかられ、
「駄目だ・・・
場所を移るしかない・・・」
と早くも逃げ出す準備をした。
これを何度も繰り返し、結論として、
「そうだ・・・
ここから南西に120キロくらい行ったところに【俳優の国】と言う所がある。
ここは、住民が全員役者として、与えられた【役】をこなす事で報酬を得ると言う所みたいだ。
コスプレなんかもありみたいだから、素顔をさらさなくて良いと言う事では都合が良い。
ここにしよう。
この国なら、何とかやっていけるかも知れない。
素顔のままで居るのは怖い。
成形したくてもそこから足が着く場合もあるから出来ないし、それしかない・・・
僕が生きる場所はそこだけだ」
と言った。
彼は再出発の地を決めた様だ。




