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アカデミー最強のモブヒーラー ~死にゲー世界のモブに転生した俺は、外れジョブ【ヒーラー】と原作知識で無双する~  作者: 八又ナガト
第三章

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099 疑念

「もしよろしければ――そのマナコネクトというスキル、私にも一度試していただけないでしょうか?」


 そう尋ねてくるリリアナに、俺は首を傾げた。

 ユイナの時と違い、リリアナは俺よりレベルが高く、魔力の総量も多いはず。俺から渡したところで、大した足しになるとは思えないが……


「俺からリリアナに、か?」


「はい。アレンさんもご存じの通り、私の魔法は大量の魔力を消費するものが多いですから……今後、ポーションだけでは補いきれず、お力をお借りする場面が来るかもしれません。そのための備えは、早いうちにしておくべきかと思いまして」


「……ふむ」


 確かに、全MPの90%を消費するフロストノヴァを筆頭に、リリアナの魔法は燃費の悪いものが多い。

 これからも一緒にダンジョン攻略や共闘をする機会はあるだろうし、彼女の言う通り、試しておくのも悪くないかもしれない。

 ……ドラウプニルを活用するため、という意味でも。


 すると、考え込む俺を見て何かに思い至ったのか、リリアナが付け足す。


「ああ、ご心配なさらず。頂いた分の魔力は、きちんと補償させていただきますので」


 言いつつ、彼女は異空庫の指輪から数本のポーションを取り出した。

 ――しかも、俺が普段使っているものより数段上の性能を誇る高級ポーションだ。


 ダンアカでこれが安定して購入できるようになるのは、もう少し先の話。

 先ほどの解毒ポーションの例で考えるなら、まだ効率的なレシピが出回っていないのだろう。

 となると、現段階で手に入れるには相当な金額が必要なわけで……確かにこれを使っていいのなら、俺としてはメリットしかないが――


「本当にいいのか? それ、かなり高いんじゃ……」


「問題ありません。何を隠しましょう、私、実はちょっとだけお金持ちなんです」


「……よく知ってます」


 あまりに力強い断言に、思わず敬語で返してしまった。

 まあこの程度の出費、皇女であるリリアナにとっては大した話でもないのだろう。変に遠慮する方がよくなさそうだ。


 というわけで、さっそく試してみることに。

 頂いたポーションを飲み、MPが回復するのを少し待ってから――


「じゃ、やるか」


「はい」


 差し出された手を握る。

 白雪のような、きめ細かく透き通った綺麗な手だ。

 ……余計な感想は頭の隅に追いやりつつ、俺はゆっくりと魔力を流し始める。


「ん……なるほど、これは……」


 リリアナが、何かに納得したような声を漏らした。

 ユイナの時ほどではないが、わずかに頬が赤く染まっているようにも見える。


「「…………」」


 そんな俺たちを、横から静かに眺めるユイナとローズ。

 ……なぜだろうか。不自然なことなど何一つしていないはずなのに、妙な緊張感があった。


 それはさておき、今回も30秒ほど経過したタイミングでスキルを止める。


「――と、いった感じなんだが」


「…………ええ。ありがとうございます、アレンさん。よく理解できました」


 これでひとまず、実験は終了。

 そう思い手を離そうとするも――なぜかリリアナは、繋いだまま離してくれなかった。


「リリアナ?」


「先ほど、マナコネクトは魔力の受け渡しを行うスキルだと仰っていましたよね? ということは……逆に、こちらからアレンさんへ流すこともできるのでしょうか?」


「ああ、できるけど……」


「でしたら、せっかくですのでこの機会にそちらも試しませんか? ほら、逆にアレンさんの魔力が尽きてしまう場合もあるかもしれませんし」


「確かにそれもそう……か?」


「はい、間違いないかと」


 力強く断言するリリアナに押される形で、そちらも試すことになった。


「それでは、参りますね」


「ああ」


 経路パスは繋いだまま、今度はリリアナの側から魔力を注いでもらう。


「――ッ」


 他人の魔力が、自分のものへと変わっていく感覚。

 以前、ユイナに強化魔法をかけてもらった時とは明らかに違う。くすぐったいような、それでいて心地よいような……いかんともしがたい感覚だった。


(……確かにこれは、事前に慣れておいた方がいいかもな)


 実戦の最中にこれをやられたら、意識を割かれかねない。さすがに本気で集中している時なら大丈夫だとは思うが……


 今回も30秒ほどで終えると、リリアナがにこやかに問いかけてくる。


「いかがでしたか、アレンさん?」


「そうだな、リリアナが試しておいた方がいいって言った意味がよく分かったよ」


「ふふ、それなら良かったです――名残惜しいですが、今日のところはこれくらいにいたしましょうか」


 言って、リリアナはゆっくりと手を離した。

 名残惜しい、という言葉が何を指すのかは定かでないが……

 そんな彼女の隣には、一連のやり取りを眺めていたユイナとローズがいて――


「私も、貰ってばかりじゃダメだよね……いつかは、私からアレンくんにあげられるくらいにならなきゃ……」


「こほん――アレン様。実験相手の都合がつかない際などは私も応じますので、どうぞご安心ください」


 ――と、各々に呟いていた。

 自身の成長を誓うユイナはともかく、ローズの言葉には何やら含みがある気もしたが……時々よく分からないことを言う人なので、特段気にする必要はないだろう。


 いずれにせよ、いつまでもマナコネクトばかり使い続けるわけにもいかない。

 せっかくポーションでMPも回復したところだし、時間的にもいつもならまだギリギリ特訓をしている頃合いだ。

 俺たちはもう少しだけ鍛錬場に残り、各自の訓練を行うことにするのだった。



 ◇◆◇



 休憩中。

 彼女――リリアナ・フォン・アイスフェルトは、目の前で鍛錬を続けるアレンの姿を眺めていた。


 30分ほど魔法と剣技を試していた彼だが、今は魔導図書館から借りてきたらしい魔導書を読み込んでいる。なんでも、新しい魔法の獲得を目指しているのだとか。


 その姿に尊敬の念を抱いていると、隣に侍るローズが口を開いた。


「相変わらず、アレン様の努力量はすさまじいですね」


「ええ。このままですと、そう遠くないうちに追い抜かれてしまうかもしれません――いいえ、もしかしたら既に、でしょうか……」


「それは、さすがに……」


 リリアナの言葉に、ローズが僅かに訝しむような表情を浮かべる。


「ジュリアンとの戦いにおけるご活躍は伺いましたし、アレン様の実力は疑うべくもありませんが……それでもなお、間違いなく殿下の方が優っているかと」


 普通に考えるなら、ローズの言葉は正しい。

 ジュリアン戦におけるアレンの貢献は、間違いなく群を抜いていた。しかし火力という面で戦局を支えたのは、リリアナ、グレイ、そしてルクシアだ。

 元々のレベル差、ジョブの違い――それらを鑑みれば、一対一で戦って敗北することはまずないだろう。


 理屈では、そう理解している。

 ただ――


(――アレンさんには不思議と、理屈以上の何かを感じてしまうのです)


 もしくはそれは、リリアナの本能によるものだろうか。

 彼を慕い、尊敬する自分ではない――同じ戦士として敵愾心を抱く、もう一人の自分が確かに存在していた。


(そう、望めるならば――)



 ◇◆◇



「ふう……ひとまず、こんなところか」


 魔法を中心とした特訓を終え、一呼吸つく。

 MPもほとんど使い切ったし、時間的にも今日はこれくらいが限界だろう。


 そう考えながら振り向くと、ふと、リリアナがこちらを見ていることに気付いた。


「どうかしたのか?」


「いえ……改めて、アレンさんの成長ぶりは素晴らしいなと思っておりました」


「いきなり褒められると気恥ずかしいんだが……」


「心から思ったことをお伝えしているだけですよ。成長の速度も努力の量も、私を含めた誰よりも群を抜いています――だからこそ、こう思ってしまいました」


 一拍置いて、リリアナは続けた。


「どんな形でも構いません。一度、貴方と本気で立ち合ってみたい――と」


「――――」


 何気ない会話の流れから生まれた、不意の一言。

 だが、そこに本気の意志が込められていることは分かった。

 自分の表情が強張るのを自覚しながら、俺は答える。


「……一方的な結果になる未来しか見えないんだが」


「おや、そこまで簡単にやられるつもりはありませんよ?」


「逆だ、逆。分かった上で言ってるだろ」


「――さて、どうでしょうか」


 互いに微笑みつつも、どこか張り詰めた空気の中で言葉を交わす。


 ……いずれにせよ、疲れ切っている今は無理な話だ。

 立ち合うにしても場所やルール、条件を整える必要があるし、そうすぐに機会が訪れることはないだろう。


 俺はそう、考えていたのだが――



 ◇◆◇



 ――その翌日。


「では、クラス内模擬戦を開始する。第一試合――リリアナ・フォン・アイスフェルト対アレン・クロード!」


 以前、Aクラスとの交流戦が行われた闘技場。

 そこに集められたEクラスの面々を前に、担任のリオンが高らかに宣言した。


「「………………」」


 その中心で向かい合う俺とリリアナ。

 想像よりも遥かに早く、立ち合いの機会は訪れた。


 ――しかし、どうしてだろうか。

 想定外の事態にもかかわらず、不思議ともうあまり驚きはなかった。

朗報:アレン、慣れる。

あるいは悲報かもしれない。


次回は9月5日(土)12時頃、更新予定です!

ぜひお楽しみに!



それから、皆様に1つ大切なご報告がございます!


先日の7月6日(月)、コミカライズ版の第1巻が発売となりました!!

表紙はかっこいいアレン!

阿倍野ちゃこ先生と天王寺きつね先生のおかげで最高のクオリティに仕上がっているので、絶対に満足していただけると思います!!


ですのでもしよろしければ、各書店や電子書籍サイトにてコミックス第1巻をご購入いただけるととても嬉しいです!

その上でもし、各書店様にて☆5レビューやコメント付きレビューなども頂けましたら泣いて喜びます!

皆様の応援次第で本作の今後が変わってきますので、どうぞよろしくお願いいたします!!!



もし事前にどのような内容か確認したいという方は、ぜひヤンマガWebやニコニコ漫画でお読みいただけると幸いです!

今はアカデミー入学を終え、チュートリアルイベントの最中になります。グレイやルクシア、ユーリなどが本格的に登場してどんどん面白くなってきていますので、ぜひそちらも併せてお楽しみいただけると幸いです!


↓の画像をタップしてもらえると飛べます!

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コミックス第1巻発売中!

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ニコニコ静画にてコミカライズ連載中!

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― 新着の感想 ―
一気読みしちゃいました‼️面白かったです‼️ いや〜アレン君良いキャラですね☺️各キャラがしっかり活躍してる裏でそれ以上の暗躍をしてみせる…控えめに言って、やりますねぇ‼️って感じです。 次回の更新も…
そりゃあちらには強力なコネが有りますしね♪しかしながら、アレンの今がどれ程なのか確認できるイベントは大歓迎します!
そのポーションで直接回復すれば……
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