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銀幕戦記  作者: 少年鉄也
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銀幕戦記 ~殉教者戦争編 第二幕

『冷えた世界を焦がす三華』


「まさか、あの男が遺した残り火が、これほどおぞましいバグを生み出すとはな……」


大地獄連合の第三軍事基地、司令室。

木島所長は、デスクのモニターに映し出された恐るべき調査結果を凝視しながら、ガタガタと全身を震わせていた。

事の始まりは数日前。

5年ぶりに再会したおでん屋台のJizō(ジゾウ)から告げられた、ある「報告」だった。


『現実なんていう冷たい飯は必要ねーんですわ。大きなお世話だ、って木島さんにも言っといてください』


そう言い残し、眼帯の奥の義眼をケミカルオレンジに発光させて闇夜に消えた、異常な高熱を帯びた作業着の男。

Jizōの話を受け、木島が独自に連合の諜報網を動かして徹底調査した結果、最悪の真実が浮き彫りになったのだ。



【極秘調査報告:『聖イエトラ教団』から『勇羅武ミー』への変異】

・秘密教団の結成:

毒ガスによって凍りついたはずのオタクたちの心の中で、かつての戦火の熱量が歪んだ形で神格化。

彼らは『聖イエトラ教団』を結成。

まるで隠れキリシタンのように地下深くや廃墟に潜伏し、ケミカルオレンジのサイリウムを十字架に見立てて夜な夜な祈りを捧げる、狂信的な過激派秘密教団へと変貌を遂げていた。

・人体兵器の誕生:

信者たちは、一年戦争の爆心地から溶解した『ムラマサ』の残骸を回収し、自らの肉体へと直接埋め込んでいた。

自らを薪にして狂暴な怨念の熱を生み出す、人間を辞めた「人体兵器」への変異。

この精神と同調した異様な熱量により、地球の気温はすでに局所的に再び2度上昇していた。

・武装組織『勇羅武ミー』と、神を自称する男:

教団はのちに闘争組織『勇羅武ミー(ユーラブミー)』へと名前を変え、軍事力を拡大。

そして、Jizōの前に現れたあの義眼の最高指導者──佐坂行秀(さざかゆきひで)は、自らを輝ける太陽、唯一絶対の神格である『アマテラス』と名乗り始めているという。



「あいつが命を懸けて遺した光は、世界を焼き尽くす導火線になっちまったぞ……!」


あまりにも盲目で、あまりにも狂暴な『殉教者戦争』の胎動。

その不気味な調査結果を前に、木島がデスクを叩いて戦慄した、まさにその瞬間だった。


──ピィィィィィィィィィィィッ!!!


鼓膜を突き刺すような、最高警戒レベルの非常警報アラートが司令室内に狂ったように鳴り響いた。


「な、んだ!? 何が起きている!」


木島が叫ぶのと同時に、オペレーターが血相を変えて立ち上がり、キーボードを叩く。

だが、モニターに映し出された数値を見た瞬間、彼の顔からすべての血の気が引いた。


「しょ、所長……! とてつもない熱量がこちらに迫っています! 異常だ、速度計がバグを起こしている!


──第一・第二基地を、防衛戦ごと一瞬で溶かして消滅させた『防壁破りの高熱波』です! くるぞおおおおお、避難をォォッ!!」


ドーーーーン!!!!!


オペレーターの絶叫をかき消す、天崩地裂の爆音が鳴り響いた。

何重もの鋼鉄と電磁装甲で守られていたハズの、第三基地が誇る特厚の防衛隔壁が、内側から分子レベルで沸騰し爆縮を起こしたかのように大爆破された。


「がはっ……!? あ、熱い……!」


司令室の防弾ガラスが一斉に粉々に吹き飛ぶ。

同時に流れ込んできたのは、吸い込むだけで肺が焼け焦げるほどの凄まじい熱気と、ケミカルオレンジの爆煙だった。


冷え切っていた基地の室温が一瞬で数百度に跳ね上がり、壁のコンクリートが不気味な音を立てて急速に乾燥し、蜘蛛の巣状にひび割れていく。


「げほっ、ごほっ……! な,んだ……! 前線はどうした! 迎撃部隊は!」


木島が床に走る爆炎を避け、激しく煙を払いながら通信機を掴む。

だが、スピーカーから聞こえてくるのは、ノイズと、味方兵士たちの凄絶な悲鳴だけだった。


『こちら前線、第一防衛ライン崩壊! 銃、銃弾が効かねえ!』

『化け物だ! 盾ごと、装甲ごと引き裂かれて──ぎゃあああああああッ!!』

『ひ、氷が……冷気が一瞬で蒸発して──ウワァァァッ!!』

ブツッ、と通信が途絶える。


警報が狂い鳴る通路の向こうから、重厚な大地獄連合の迎撃部隊を「ただの紙クズ」のように蹂躙し、灰に変えながら進む三つの不気味な影。


勇羅武ミーが誇る、最凶の戦闘部隊──【戦闘偶像ヴァルキリー戦線】の「三華(さんか)」が、ついに司令室の目と鼻の先まで到達していた。

通路の残骸を破り、重装甲歩兵の生き残りが一斉にアサルトライフルを構える。

だが、彼らは引き金を引く暇すら、ヴァルキリーたちは与えなかった。



【勇羅武ミー:戦闘偶像ヴァルキリー戦線 ── 壱の華】

AKINA(アキナ)

・【兵器】 妖刀『ムラマサ』の残骸(肉体内埋め込み) / プロトタイプ・サイリウムソード

・【属性】 狂暴な熱狂者・格闘センスの塊・ステゴロ特化型

・【概要】 三華の特攻隊長。過激派武装組織『勇羅武ミー』の大幹部であり、現実の人間を激しく嫌悪する。「推し」への殉教精神を爆発的な物理攻撃力へと変換し、重装甲の防盾すら素手(ステゴロ)で粉砕する殺人マーシャルアーツの使い手。戦闘時には肉体から凄まじい高熱の蒸気を噴き出す。



AKINAが叫びながら放った正拳突きは、迎撃部隊の分厚い防盾を装甲ごと木端微塵に粉砕し、背後にいた歩兵を肉体ごと叩き潰してコンクリートの壁に埋め込んだ!

降り注ぐ銃弾を肉体で平然と受け止め、むしろ傷口から蒸気を噴き出しながら、笑い上戸に兵士たちを次々と圧倒的な暴力で無力化していく。



【勇羅武ミー:戦闘偶像ヴァルキリー戦線 ── 弐の華】

夢月寧々(ゆめづき ねね)

・【兵器】 二振りのサイリウムナイフ / 重機関銃

・【属性】 冷徹なスピード狂・自傷癖(リスカ)・ピアス&スプリットタン

・【概要】 詐欺やホスト、自傷行為など、あらゆる退屈に飽き果てて教団へと行き着いた狂おしき暗殺者。固有の高速移動術『神速蛇行(しんそくだこう)』による残像を残した変幻自在のステップが持ち味。重力を無視した速度で敵の背後へ密着し、ケミカルピンクの光を放つナイフで音もなく首を切り裂く。



夢月寧々の身体は『神速蛇行』の残像を残して視界から完全に消滅した!

兵士たちがパニックを起こして放つ銃弾の嵐を、重力を無視した高速ステップですべて回避。

気づいた時には敵の背後へと密着している。

二振りのサイリウムナイフが、ケミカルピンクの光の軌跡を描いて踊るたび、連合の兵士たちが叫ぶ暇もなく一瞬で切り裂かれ、血の海へと沈んでいった。



【勇羅武ミー:戦闘偶像ヴァルキリー戦線 ── 参の華】

レイナ

・【兵器】 『ムラマサ』の破片を組み込んだ高熱サイリウム鞭

・【属性】 傲岸不遜な女王様・漆黒のレザー・支配と服従

・【概要】 指導者『アマテラス(佐坂行秀)』の思想を絶対とし、冷え切った世界を刈り取るために戦場へ降り立つ大柄な女傑。彼女が鞭を一振りするだけで大気が爆縮し、周囲の水分が沸騰する。その圧倒的な威圧感は、対峙した敵の心を文字通り「恐怖で凍りつかせ」て戦意を完全に喪失させる。



レイナが『ムラマサ』の破片が埋め込まれたサイリウム鞭を一振りし、大気が爆縮させる!

彼女から放たれた絶対的な支配と服従の波動が通路を満たした瞬間、生き残っていた連合兵たちの心が恐怖で完全に凍りついた。

戦意を完全に喪失し、武器を落としてガタガタと震える兵士たちを、高熱の鞭が容赦なく無慈悲に薙ぎ払っていく。

殺人マーシャルアーツ、超高速の刃、配置を支配する鞭。

三華の完璧にして圧倒的な殲滅戦の前に、第三軍事基地の防衛戦力はわずか数分で文字通り「全滅」した。

基地の重厚な電子ロックや全自動防衛システムも、彼女たちの放つ凄まじい熱量によって回路がすべて焼き切れ、物理的に破壊し尽くされていく。


バゴォォォォンッ!!!


ついに、防爆大扉が紙のように吹き飛んだ。

真っ赤な炎と爆煙の向こうから、三つの影が悠然と歩み出てくる。

デスクの影でガタガタと震える木島が、必死に声を絞り出した。


「お、お前ら、何者だ……! 何が目的だ!」


先頭のAKINAがめんどくさそうに首を鳴らし、不敵に言い放った。


「あぁ? 勇羅武ミーの大幹部、【戦闘偶像ヴァルキリー戦線】の『三華』だよ。アタシはAKINA。てめえら現実のクズを素手ステゴロで潰しに来たんよ」

その横で、手首の傷を抑えた夢月寧々が、ピアスだらけの顔を傾けてスプリットタンを覗かせる。


「詐欺もホストもリスカも飽きたんだよね、邪魔する現実リアルの豚は、バラバラにしちゃうから」


最後の一人、漆黒のレザーを纏うレイナが、赤熱するサイリウム鞭を床に叩きつける。


「フンっ! くだらんな。……指導者『アマテラス』の御名において、貴様らの冷え切った世界を刈り取りにきた!」


AKINAが地獄の底から響くような声で吼える。


「さあクズども!モミリンの情報をよこせ!」


凄まじい熱波が襲う。


怯んだ木島をAKINAがのぞき込む。


「木島ってのはおめぇかよ?」


狂おしいほどの圧。


その尋常ならざる殺気と熱圧に、木島はもはや言葉を返す余裕すら奪われていた。

本能が「ここにいれば一瞬で消される」と絶叫している。

木島は引きつる手で、床の緊急脱出ハッチのレバーを全力で引き抜いた。

ガチャンとハッチが開き、真っ暗な縦穴へとがむしゃらに滑り落ちた。

直後、背後で「ちっ、逃げやがったわ!」という声とともに、司令室全体が爆発炎上する。

衣服を焦がし、額から血を流しながら、木島は冷たい雪の原へと這い出した。

背後では、大地獄連合の第三軍事基地が跡形もなく大焚火と化して大爆発を起こし、天を衝くような黒煙を上げて消滅していく。

狂犬と呼ばれた男は、プライドも何もかもを失い、恐怖で震える足で極寒の雪原を必死に走り去るしかなかった。


現実リアルという名の冷たい飯を拒絶した者たち引き起こす、終わりなき『殉教者戦争』。

その地獄の火ぶたが、今完全に切って落とされた。


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