93話 敵情
「キリサメ、あんたは寝てな。
私たちは二日後の決戦の作戦会議を──」
その瞬間、雫さんの言葉が詰まり冷や汗をかいた。
どうし……
その時、街の中に馬鹿でかい気を持つものがいることを感知した。
なんだこれ……感じたことある気だ、一体──
「大変だ!キリサメ!」
その瞬間、玄関から声が聞こえた。
玄関を見てみるとそこには血相を変えたノヴァさんが立っていた。
様子からただ事ではないことを察する。
キリサメを一人だけにするわけにはいかず、リリと慎を部屋に残し、俺たちは玄関に行き事情を聞いた。
「悪いが今はキリサメは出れない状態なんだ。
私が対応する、何があったんだい?」
「はぁはぁ……実はさっきこの街にライオッドが訪ねてきたんだ。
話があるから慎二を出せって、今街のみんなが抑えて──」
その瞬間、ドスンドスンとこちらへ歩いてくる足音が耳に入る。
これって……!
「お〜慎二!久しぶりじゃねぇか!」
「なんで……街の奴らが抑えてるはずじゃ……!」
「安心しろ何もしちゃいねぇよ。
もし怪我させちまったらまともに話聞いてくれねぇだろ」
そしてライオッドは俺たちの目の前に立つ。
さっき感知した気の持ち主はこいつか……
感知を磨いたからこそわかる……やっぱりこいつ馬鹿みたいに強い……!
前勝てたのもラッキーみたいなものだということを再度実感した。
「あぁ……やっぱり、キリサメめっちゃ弱ってんな。
あのクソ女の言ってた通りだ」
「は……?
お前、まさかタシテスと──!」
俺は刀を握り抜こうとするが雫さんが落ち着いた様子でそれを静止する。
だが俺を抑える手が震えている、雫さんも飛び出しそうなのを我慢してるのだろう……
「ふぅぅ………」
それを見て俺も一度深く深呼吸して心を一度落ち着かせ、刀をしまう。
「慎二に話があるんだろ?
こっちもキリサメやられて警戒してんだ、二人で話なんかさせないよ」
「別にそれでいいぜ。
お前らにも関係してくる話だしな」
雫さんたちにも?
その言葉が引っかかり首を傾げていると、ライオッドは衝撃の一言を口にした。
「二日後の決闘、"俺はタシテス側で出場する"」
「……は?」
その言葉に俺だけじゃなく慎、雫さんまでもが動揺する。
一体、どうして……
「お前がタシテス側につくって……
お前ら仲悪かったはずだろ!?」
「あぁお前のいう通りあのクソ女に恨みはある。
だが、あいつは俺に"ある交渉"を持ちかけてきたんだよ」
「それは……?」
ライオッドが言う、タシテスと交わしたある交渉について俺は聞いた。
「俺をこのダンジョンから出してくれるっていう交渉だ」
「ダンジョンから……出る?!
どうして?」
「言っただろ、俺には殺したい奴がいるって。
そいつは今外にいんだ、俺はずっと外に出る方法を探してたんだよ」
その瞬間、前のライオッドの発言を思い出す。
"お前はどうやってここに来たんだ"
前に戦った時に聞かれた、聞いてきたのはそう言う理由か……
ただ、その時一つ疑問が生まれる。
「お前が決闘に出るのはわかった。
だけど、どうしてわざわざそれを言いにきたんだ?」
「もし二日後の決闘の日にお前らが何も知らずに俺があのクソ女の横いたら、絶対にめんどくさくなるだろ。
それと義理を通しただけだ。
実際、お前らを利用しようとしてんだからな」
「そうか……」
だがライオッドが敵になるってのはかなりまずい……
出ることを知れたのはいいが、どう対策するか。
その時、横にいた雫さんが口を開いた。
「あんたが義理を通したいってのはわかったよ。
だったら一つ聞きたいことがあるんだがいいか?」
「お前らを利用したんだからな……
あぁいいぞ、答えられる範囲なら教えてやる」
「だったらそっちの出場するメンバーを教えてくれるか?」
それを聞いたライオッドは少し考える様子を見せたのち……
「確か俺と……なんだったか、"精霊のガキ"を出すとか言ってたな。
あと一人は決めかねてるらしいぞ」
「精霊の、ガキ……?名前ってわかるか!?」
「興味ねぇからそこまでは聞いちゃいねぇよ。
だが今はこの街にはいないとか言ってたな」
「それっていつ聞いた?」
「一週間くらい前だ」
一週間前……その時はまだルルは裏切ってない。
ルルが亜人の街にいなかった時期と重なってしまう。
「ルルである可能性が……かなり高いね」
「ルル……?
あぁ精霊ってお前らがクソ女のとこから連れ出したやつか!
キリサメも不運なやつ……
いや、油断したキリサメが悪いか」
「おい、その言い方はないだろ!
キリサメはあいつらを想って……!」
俺がそう言うとライオッドは高らかに笑う。
「そいつは違ぇよ慎二。
精霊を助けたのはあいつの選択だ。
あいつは警戒するべきだった、昔なんて裏切りなんか日常茶飯事。
ぬるま湯に浸りすぎて警戒を怠ったキリサメの過失。
変に庇うな、それじゃキリサメが惨めになるだけだ。
それ以上、キリサメを貶めてやんな」
キリサメを貶める……
俺とは違う視点で物事をライオッドは見ている、俺はキリサメを貶めてるのか……?
その時、雫さんが頭にポンと手を置く。
「そんないじめてやんなよライオッド。
こいつもこいつなりにあいつを心配してんだよ」
「いじめちゃいねぇよ、ただ思ったことを言っただけだ。
とりあえず俺は帰るぜ」
そしてライオッドは背を向け、ゆっくりと歩き出していく。
その瞬間、気づく隙がないことに……
この状況でも、どんな時でもこいつは警戒を解いていないのか……
「あっそうだ、もう一つ伝えときたいんだが……
言っとくぞ俺は決闘で誰に当たろうが手加減はしない、わざと負けるようなこともしねぇ」
本気でやる、そう言うライオッドの目は本気だった。
ライオッドはさっきキリサメを貶めないように俺に言った。
手心を加えないのはライオッドは相手を惨めに、貶めないようにするためなのかとそう思った。
次俺がライオッドと当たって、本当に俺はこいつに勝てるだろうか……
もし負けたら、キリサメたちが……
「分かってるよ、あんたはそういうのが嫌いなんだろ?
ただスキルは使わないのにね」
「うるせぇよ、俺はあの姿が嫌いなんだ。
それとな慎二、俺はあの約束忘れてねぇか安心しろ」
「あの、約束……?」
その時俺は思い出す。
ライオッドなら殺されかけた時に質問に答えたらキリサメを殺さないという約束を……
「お前はあの質問にちゃんと答えてくれた。
安心しろ、絶対にキリサメは殺さない、もちろんお前もな」
「ライオッド……」
いいやつなのか悪いやつなのかわからないやつだ。
いや……ただ正直なだけなのだろう。
俺は去り行くその男の背中を見つめ続けたのだった。
ライオッドってスキル込みにしたらアンデッドの街みんな相手取っても余裕で倒せると思います。
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