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81話 同時戦闘


「お久しぶりです、仮面さん。

 再開ついでになんですが……ぶっ殺させてもらいます」


 久しく会うそいつに対してそう告げた。

 僕はそいつの一挙手一投足、どこを強化したかに全神経を注いでいく。

 油断したらすぐに斬られる……集中しろ。

 その瞬間、その仮面が足を強化して体を沈める。

 来る──!

 僕は寸前で剣を抜き、出来る限り広い範囲を守るように剣を構える。


 ゴンッ──


 そんな衝撃と共に僕は後ろに軽々と吹っ飛ばされた。

 しまっ……踏ん張りが!

 なんとか体勢を立て直そうと剣を地面に突き立て勢いを殺す。

 そして仮面を視認しようと前を向くがもうすでに動き出しており眼前に剣先が迫る。


 ギリギリで致命傷を避けるが少し頰にかすり血が垂れる。

 ガラ空きの胴体に向かって僕は地面に突き立てた剣を引き抜き振るう。

 だが仮面は剣を横にし、僕の顔に向かって振るう。

 僕の方がギリギリ遅い……だったら!

 寸前……僕は剣に炎を集中、爆ぜさせその勢いで後ろに飛び距離を取る。


「……ふぅ」


 僕はそこで一息ついた。

 僕と違って仮面さんは息一つ切らしてない、やっぱりまだ差がある……

 さっきの突進も来るであろう場所を予測して対処しただけだ、まだあのスピードに対応できない。

 だけど何が起こってるかわからなかった前と比べたら確実に成長してる、恐れるな。


 それと同時にその仮面の持つ剣に力が集中していく。

 前と同じ風……これならまだ対応ができる。

 そして仮面は鞘から剣を抜き、眩い光がチラリと見えた瞬間──

 すでに目の前に仮面はいた。

 罠ッ──!?


 僕はその至近距離で放たれる風になんとか反応して剣で受ける。

 だがぶつかりあった瞬間風が炸裂、僕の体を引き裂いていく。

 痛みが全身に広がり、思考が固まる──だがそれは……


「覚悟してなかったらの話です……!」


 今、仮面は剣に力を集中させている。

 つまり体にはあまり強化をしていない、それなら僕でも目を強化すればギリギリ対応できる。

 次は──!

 僕は剣に力を集中、再度炎に変換して至近距離で爆発させ土埃を上げる。


 それに驚いている隙に煙に紛れて気配を消す。

 隠密を使っている間は強化があまりできてない、絶対に真っ向から攻撃を受けちゃいけない、だったら──!

 床に手をつきMPを送り、岩を操作して仮面を囲むようにドームを形成する。


 僕は一度距離を取り、隠密を解除する。

 そしてわざとバレるように足にどんどん強化を回していく。

 そして突進、壁をぶち破りそこで構えを取っている仮面との距離を詰める。

 仮面さんはとても強い、僕なんかより何倍も……

 そんなに強い相手ならば、相手のスピードを完全に見抜くなんて造作もないはず。

 逆に言えばそれ以上を想像しない。

 この戦いが始まってから僕は本気で強化していない、急に跳ね上がるスピードに反応できるか……?!


 予想通り仮面は少し反応が遅れ僕の攻撃を無茶な体勢で受け止める。

 僕は思い切り押し込みそいつらその勢いで囲んである岩を壊しながら後ろへ飛んでいく。

 千載一遇……!

 僕は再度足を強化、剣を振り上げ全速力で突っ込んでい──


 その瞬間、上から生暖かい液体がこぼれ落ちる。

 それは血液だった──

 僕が剣を持っていた手はいつのまにか飛ばされその断面から血が噴き出て重力に従い滴り落ち、僕の顔にかかったのだ。

 いつ!どうして!さっきまであったのに!

 あの一瞬、僕が突っ込んだ一瞬──

 仮面は構えを取り……斬った。

 風でもない、炎でもない、斬撃は何も飛んでいない。


 まるで……まるで"空間そのものを斬った"ように、剣が振り抜かれた瞬間腕は落ちた。

 謎、疑問、それが思考を……妨げた。


「しまっ──!」


 すでに目の前に来ていた仮面は僕は背後を取られ、仮面は剣を抜き僕の胴体を──!


 カキン──!


 そんな金切り音が耳を突く。

 それはとても、とても近いところでなっていた。

 仮面が振り抜いたその剣は僕の胴体を斬ってはいなかった。

 僕は後ろでぶつかり合ったそれの衝撃で風は巻き起こり体が浮き倒れ込む。

 そして後ろで起こったことを視認した。


 そこに立っていたのはフードを深く被り剣を携えていた……隻腕の男だった──

 仮面はフードの男との鍔迫り合いを不利に感じたのか、後ろへ飛び距離を取る。

 この人、また……?

 僕が困惑しているとフードの男は切り落とされた僕の腕を拾い上げ、断面と繋げる。

 その瞬間、淡い光が発せられ腕が治っていた。


「立てるか?」


「──ッ、はい!

 治してくれてありがとうございます」


 フードさん、喋れるんだ。

 僕はすぐに立ち上がり、構えを取る。

 この人にも聞きたいことは山ほどあるが今はそんな場合じゃない、まずはこいつに集中しないと。

 幸いこっちは2対1、これなら少しは……


「樋口、合わせられるか?」


「はい、やってみます」


「倒すぞ」


 そして僕たちと仮面は同時に動き出す。

 その瞬間──


「──ッ!避けろ!」


 その瞬間、何かが奥から飛来する。

 フードさんのおかげでギリギリ避けることができた。

 だが安堵する暇もなく、奥から何本もの黒い針のようなものが飛来する。

 仮面を巻き込んで、仲間の攻撃ではないのか?

 僕たちはなんとかそれをいなし、その方向を睨みつける。

 仮面もそちらへ警戒を割く。


 そこから這い出てきたのは……影そのものだった。

 ケンタウロスのように馬に人間の胴体がつながっており、真っ黒の鎧に身を包み、長い真っ黒の槍を携えていた。

 亜人……!?それにこの威圧感……エリアボスか!

 僕はそちらへ警戒を割き過ぎて仮面への警戒を怠りその隙にすでに背後に仮面の剣は迫っていた。

 当たる寸前、フードが剣を弾きそれは僕には当たることはなかった。

 2対1対1、どちらへの警戒を怠っても攻撃が飛んでくる。

 どうすれば……


「その亜人、任せていいか……?」


「…………」


 僕はその言葉に思わず言葉が詰まった。

 欲を言えば……僕が仮面と戦いたい、それじゃみんなの無念を晴らせない。

 だけどわかっている、僕よりもフードさんが戦った方がいいことが……

 だけど……

 僕が唇を噛み締めながら葛藤している間にフードはため息をつき、口を開いた。


「お前があの仮面を憎んでいるのは知っている。

 それを承知の上で頼む、お願いだ。

 その亜人……任せてもいいか?お前しかいないんだ。

 "助けてくれ"」


 フードは僕にそう頼む。

 あぁ……ずるい、この人は知っているんだ僕のことを。

 そんなことを言われたら断れないのを知っているんだ……

 クッ……ソ


「絶対……頼みましたよフードさん。

 あとであなたからも話聞きますからね」


「……生きてたら、だけどな」


 そして僕はその亜人に、フードは仮面に向かって走り出した。


──────────────────


「ここは……!慶たちが消えた!?」


 さっきまでいたはずのそいつらが消えたことに、俺佐々木は驚き周りを見渡していた。

 今回蓮がいないことを考えるに、原罪が俺たちを分断させようと罠を仕掛けた……というとこか。

 俺には誰かと合流しようと歩き出したその瞬間──


 ひゅん──


 迫り来るそれに勘で反応し携えていた大剣を抜きそれをいなす。

 俺はそれが飛んできた方向を向いて確認した。

 そこから顔を出したのは緑の肌、5mほどの巨体、発達した牙……


「ハイオーク……見るからにエリアボスと言ったところか」


 そこにはゴブリンのエリアボスが立っていた。

 俺は一歩、また一歩と臆することなく歩みを進める。


「悪いが引率が残ってる、押し通らせてもらうぞ」



──────────────────


 そして私はそこで目を覚ます。


「ここは……みんな消えちゃった?!」


 私、藤宮渚はダンジョンの通路で目を覚ました。

 トラップでも仕掛けられちゃってたのかな……晶とか無事だといいけど。


──────────────────


「おうやっと目を覚ましたか」


「……力じゃん。

 なんであんたが……というかみんなどこ?!」


 私、東雲晶はそこで目を覚まし、力と同じ場所に転移していた。

 私が困惑していると力は私が元気とわかるなり立ち上がり歩き出した。


「ちょいちょい、説明してよ」


「まぁ、恐らく魔法陣にトラップでも仕掛けていたのだろう。

 これを見るにランダムな場所に転移するのか?」


「トラップ……つまり仮面の奴らだよね?

 だったら私たち含めみんな危ない、さっさと探さな──」


 その瞬間、目の前から黒い炎が飛んでくる。

 力は私を守るように立ち、持っていた大楯で私をその炎から守る。


「どうやら……ランダムなところではないらしいな」


 そして目の前に現れたのは骸骨だった。

 ただ豪華な装飾に身を包み、周りには炎が飛んでいた。

 私と力は気を引き締め……


「守り任せたよ力、私はあのドクロぶっ叩く」


 そして戦闘が開始するのだった。


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