79話 攻防
さて修行も終わったことだしノヴァさんのところに行くとしますか。
俺はそんなことを考えながら廊下を歩いているとルルが目の前から歩いてきた。
「慎二、これからどこに行くの?」
ルルは俺にそう聞いてくる。
俺はルル以外に聞こえないように小声で話す。
「ノヴァさんのところだ。
もうすぐキリサメの誕生日だからな」
「あぁ……そうだったね………」
ルルは思い出したようにそう言う。
思えばリリ以外、キリサメへあげるプレゼントが何か知っている人がいないことに気づいた。
「ルルはキリサメに何あげるんだ?」
「私……?」
俺がそう聞くとルルは言葉を詰まらせた。
その様子に俺は首を傾げていると何とか言葉を捻り出した様子でこう答えた。
「まだ……決めてないかも」
「そうか、もうすぐだからちゃんと決めとけよ」
俺がその場を去ろうとするとルルは珍しく俺のことを呼び止める。
「慎二……!」
「……どうした?」
そう告げるルルに俺はちゃんと話を聞こうと向かい合う。
ルルはとても苦しそうな顔で言葉を詰まらせ、固く拳を握りしめた後。
「やっぱり誕生日祝われると嬉しい……よね?」
「あぁ……?誰だってそうだと思うが、どうかしたか?」
俺がそう聞くとルルは首を横に振りその場を去って行った。
そして俺も慎が作ってくれた時間を無駄にしないよう、鍛冶屋へ向かって行った。
***
「あ……!」
俺は集中力が切れ思わず手元が狂い、その木を割った。
あぁ……ミスっちまった、また1からやり直しだ。
俺が落ち込んでいると横で武器を打っていたノヴァさんがこちらへ近づき様子を見る。
「失敗か?」
ノヴァさんはそう言いながら割れてしまったそれを拾い上げ眺める。
「結構いい出来じゃねぇか、この調子で頑張ってけ」
「そうか?よかったぜ」
俺はそう言いプレゼント作りを続けて行った。
***
「今日は結構時間に余裕持って戻れたな、風呂に入る時間もなさそうだし部屋でゆっくりしようかね」
俺は伸びをしながらそう言い、部屋へ向かって歩いていく。
プレゼント作りも順調に進んでる、この調子だったら全部できそ──
その瞬間、俺の耳は確かにそれをとらえた。
後ろから俺に向かって何かが風を切り接近している。
俺は振り向きそれを視認し、ギリギリ上体を逸らすことでそれを回避した。
「避けんなよ慎二!
それじゃ修行にならねぇじゃねぇか!」
そこには木刀を携えている慎が立っていた。
「いやつい反射で……
というかお前気を隠しながら近づいてきたろ、気づかなかったぞ」
「そりゃ感知しやすかったら修行にならねぇだろ」
慎はそう言いその木刀を腰にさす。
あっそうだ、こいつにもプレゼント聞いとくか。
俺はそう思いできる限りの小さい声でそれを聞いてみる。
「俺のあげるもん?
そいつは当日のお楽しみってもんだろ、逆に聞くが俺が聞いたらお前は教えてくれんのか?」
「……教えねぇな」
俺たちはそんなことを話しながら廊下を歩いていく。
そこで俺は慎がこの修行をしたとキリサメが言っていたことを思い出し、コツみたいなのを聞いてみた。
「コツ……?
んなもん慣れるしかねぇだろ、俺も最初避けちまうこと少しあったからな」
「まぁそれしかねぇよな……」
常に狙われる感覚……いつ何時襲われてもいいように常に警戒すんのは流石に疲れる。
何かいい方法ねぇかな。
***
そっからもどんどん日にちは経過して行った。
1日2日……プレゼントは完成はしたものの気づけば明日で慎が攻撃する期間が終わってしまう。
50回ほど不意打ちされたというのに俺が部位硬化で攻撃を防げたのは5回程度……
別に避けれたのならもうちょい増える、だがほとんどは体勢を崩してるせいで次の手で倒される。
最後の1日、どうにかして部位硬化で防げるようにならねぇと。
その瞬間俺の頭に強い衝撃が走る。
「はい油断した、もうちょい気合い入れろよ慎二」
そこには慎が立っていた。
また喰らっちまった……
俺は落ち込み朝飯を食うためリビングへ慎と向かう。
「わざとかってくらい隙だらけだぞ。
まぁまだ時間はあんだ、頑張れよ」
「……あぁ」
そんなに俺は警戒してないと無防備なのか……
わざとかってくらい……隙が……
──ッ!そうだそれならどうにか防げるかもしれねぇ。
俺は一つその方法を思いついた。
やんのは朝飯の時、絶対にこいつは狙ってくる……
そこをついてやる。
そうこうしているとリビングにつき席に座り並べてあるご飯を食べていく。
「どうだ慎二、修行の調子は?」
「あんま上手くいってねぇかな」
「そうか……
けどその顔、上手くいってねぇやつの顔じゃねぇがな」
キリサメは俺の顔を見て微笑みを浮かべた。
そして俺はとにかく思考を回していく。
上手くいってないやつの顔……か。
キリサメはやっぱり気づいてくるか流石だな、まぁまだ防げると決まった訳じゃない。
防げなかったら防げなかったでいいしダメだし、避けられた方がいいよな、別にいいか。
最近石を抑えるのを無意識下でできるようになったんだよな、結構いい進歩だ。
この魚美味しいな野菜も美味しい。
こういうのどうやって取っているんだろう──
カキン──!
そんな硬いものがぶつかり合う音が鳴り響いた。
そこで俺は……その木刀を防ぐことに成功していた。
「よっしゃ上手くいった!」
「何でだ?!めっちゃ隙だらけだったのに!」
慎はそう言いながら俺にそう聞いてくる。
俺が何故防げたかについて話そうと口を開こうとしたが先にキリサメがその答えを話す。
「わざと隙を作ったんだよ、慎二は」
「わざと……
お前、それ朝俺が言ったやつ!」
慎は驚きながら俺にそう言う。
俺は首を縦に振り詳しく話していく。
「俺が大抵硬化が間に合わなくて喰らったりする時、お前隙だらけだからって言ってたろ?
そんで思い出したんだが、そん時大体めっちゃ頭回してる時に隙ができてんじゃねぇかって思ったんだ。
反応さえできれば回すのは簡単だからな、上手くいったぜ」
「けどまだ一回だけ!
今日で100回攻撃してやるよ!」
慎はニヤけながら俺にそう告げる。
俺も呼応し笑みを作り……
「やってみろよ、100回守ってやる」
そして俺たちは一日中攻防を続けて行った。




