78話 平和
「さてと行くか」
俺はあの後数時間ほど立ち合いをして、修行を終えた。
そして空いた時間でノヴァさんのところに行こうという算段だ。
残り10日、さっさと終わらせないとすぐに過ぎちまう。
俺は誰にもバレないように静かに家を出て行く。
にしてもこの石相当やばい……
俺はそう思いながら首にかけてある石を横目に鍛冶屋へ走り出す。
気を少しでも抜くと一瞬で飲まれる、常に気を張らなきゃいけない。
下痢我慢してるようなもんだ、これ寝てる時もできんのか?
そんなことを考えながら走っていると目の前に見覚えのある人物がいることに気づいた。
あれは……慎!?
それに俺は驚き思わず物陰に隠れ、慎の観察をしていた。
慎は謎のおばさんと話していた。
あいつ修行終わりだってのに外出てんの珍しいな、やっぱりあいつもプレゼントを買いに来たのか。
あのおばさん……よくわかんないがあいつもキリサメになんか作ろうとしてんのか。
俺も負けていられねぇな!
そして俺は鍛冶屋に向かっていった。
***
「ミスったぁ!!飯に遅れるぅ!?」
俺はまた……ミスった。
また疑われないよう服の汚れとかも取っていたら時間がかなり経って、またご飯に遅れそうになっていた。
時間流れんの本当に早過ぎんだよクソ、また遅れたら流石に疑われるし……
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
「はぁ?!」
俺が急いで向かっていると横からそんな叫び声を上げ、土埃を大量に舞い上げながらこちらへ鬼の形相で走ってくる人がいた。
「お前、慎じゃん!?」
「何でお前──!いやそんなこといい遅刻すんぞ!!!」
「んなこと分かってるわ!」
俺も負けじと足を回転、加速する。
だが石のせいで神気を抑えながらの気の操作が難しく、いつものように強化ができない。
慎に易々と抜かれそうになる。
「さっせるかぁぁ!!俺も連れてけぇぇ!!」
「てめぇおいふざけんな!!」
俺は慎の服を鷲掴み引きずられながら慎に連れて行ってもらった。
やばいやばい!土埃舞うせいで汚れる汚れる!
「てめぇもうちょい綺麗に走れバカ汚れるだろ!?」
「綺麗に走るって何だよボケ!こちとらバレるわけにゃあいかねぇんだよ!」
「うぉい!?」
再度慎は加速、土埃を大量に舞い上げながら走り出す。
俺は慎の服を掴み何とかついて行きそしてあまりのスピードで俺の体は浮き、鯉のぼりのような状態。
慎は加速し土埃が舞った。
そこで問題、俺はどうなるでしょうか。
正解は……
「目がァァァァァァ!!!!!」
「慎二大丈夫──」
「おま、前!前みろ!」
「え?」
そこには女性が歩いていた。
ぶつかりそうなところギリギリ慎は飛び上がり、その人を避ける。
だが着地のことを慎は考えておらず、そして……
***
俺たちはあの後家に戻りリビングに歩いて行った。
そこには俺たち以外のみんなが揃っていた。
「お前ら……何でそんな土まみれなんだ?」
「「……聞くな」」
「ングッ……わかった」
キリサメは俺たちを見て笑いを必死に堪えながらそう言う。
俺たちはとりあえず空いている席に座るが、横にいたリリたちは俺たちと距離をとった。
「俺、手洗ってくるわ」
「俺も」
俺たちは席をたち厨房で向かう。
散々だ……
俺はキリサメたちには聞こえないほど小さな声で慎に話しかける。
「俺も秘密にしてやるから、お前も言うなよ」
「……あぁ、悪いなホントに」
珍しい、めっちゃヘコんでる。
俺たちはさっさと手を洗いご飯を済ました後風呂に入るのだった。
***
そっから日にちは一瞬で過ぎて行った。
石をつけたまま生活してはや5日、そろそろ慣れてきて気の操作もつける前と遜色ないほどいつも通りできるようになった。
一番キツかったのは寝る時、どう頑張っても寝たら抑えられないから1日目と2日目は徹夜したっけ……
けどおかげで慣れることができた。
俺と慎、キリサメはいつも通り中庭に集まっていた。
「そろそろ抑えんのにも慣れてきただろ?
だから気の応用、もう一個教えてやる。
慎もやってきたことだ」
「神気はいいのか?」
「あぁ変に暴走して時間潰れるよかマシだろ」
確かにな、だったら気の調整した方がいいのか。
俺は納得したのちキリサメの話を聞く。
「んじゃ今回は部位硬化の練習だ。
お前にはあらゆる攻撃にも反応して部位硬化だけで受けてもらう」
「ダメージ軽減の修行か……」
俺がそう言うとキリサメは頷く。
確かに戦いの中とか部位硬化間に合わなくて喰らうこととか多々あったな。
それ全部硬化で受ければ、しかもその攻撃部分だけに集中すればかなりダメージも減らせそう──
「痛ッ!」
そんなことを考えているとキリサメは俺の頭に木刀を軽く振り下ろす。
急なことで反応できずモロにくらう。
「何すんだよ急に!」
「言っただろどんな攻撃も受けてもらうって、そりゃ不意打ちも含まれてる。
俺はこれからお前を四六時中、常に狙い続ける。
風呂入ってる時も便所の時も寝てる時も飯食ってる時もいつでも俺はお前に切り掛かる。
それを全部部位硬化だけで防ぐんだ、出来ねぇか?」
四六時中、常に……
あれ、プレゼントのことバレるじゃん。
その瞬間、全身から冷や汗が垂れる。
どうする……バレるバレる!
俺は必死に慎に目で助けを訴える。
『慎助けてくれ!プレゼントのことバレるわけにはいかねぇ!』
『まぁ任せろ』
慎はそう自信満々に目で訴えかけ、キリサメに向かって口を開いた。
「師匠……
だったら朝と夜の間はやめねぇか?」
「そりゃ何でだ?別にいいだろ」
「いやよくねぇ。
忘れたか師匠、慎二だって高校生……思春期の時期だ。
慎二だってしたいはずだろ、おな──」
その瞬間俺は身体強化し慎の腹に膝をぶち込む。
慎はそれをモロにくらい汗が吹き出す。
俺は慎に顔を近づけて小声で話す。
「お前、殺されたいのか?」
「これ以外に方法、思いつかなくて……」
「思春期はお前だろ!」
俺は慎を投げ捨てキリサメと向かい合う。
キリサメは訳がわからないようで困惑した様子を浮かべている。
だがどうする、このままじゃバレちまう。
そう考えていると慎は地面を這いずりながら俺に小声で話しかける。
「お前……あと何日でプレゼント完成するんだ?」
「3日くらいだ、また変なこと言ったら本気で殺すからな」
「大丈夫だ、今回は本当にいい方法がある」
慎は腹を治癒で治し立ち上がりキリサメと向かい合う。
「流石に慎二もあの石をつけての生活に慣れてきたとしても師匠に狙われながらの生活はキツイだろ?
だから最初の3日間くらいは俺に任せてくれないか?」
──ッ!確かにそれなら筋が通る!
俺はキリサメの方を向き言葉を待つ。
そして……
「まぁ確かに一理あるか、じゃあこれから3日間は慎に任せる」
「わかったぜ師匠」
ナイスだ慎、よくやった!
慎はどうだよという顔で親指を立てる。
俺もよくやったという顔で親指を立てる。
「ただこの修行中は慎も修行しなきゃなんねぇから、俺がやるからな」
「あぁわかった」
そして俺たちは修行を続けて行った。




