77話 石
俺と慎、キリサメは朝食を終えた後庭に来て修行をしていた。
「慎二、お前が今日やるのは神気を出す修行だ。
ほれ」
キリサメはそう言いながら俺に何かを投げ、俺はそれをキャッチする。
それはただの石だった、だがその石には穴が開けられており紐が通されてあった。
それに俺と慎は困惑した様子を見せる。
「そいつを試しに首にかけてみろ」
「わかった」
俺は言われた通りそれを首にかけてみる。
こんなことして一体なにを……
「これ何の意味が──」
その瞬間、内から黒い力が吹き出す。
──ッ……!
俺は自我が飲まれる寸前で何とか抑え込み意識を保つ。
その様子に慎は困惑した様子を見せ、キリサメはニヤリと微笑んでいた。
俺は出てくる力を抑え神気を内に戻そうとしたが、出てくる力が強すぎて消せなかった。
「おい慎二!大丈夫か?!」
慎は俺にそう叫びかける。
どうして、何が原因で……!?
俺は石を首にかけた瞬間力が吹き出したことを思い出した。
こいつか!?
急いでそれを首から取り適当なところに投げ捨てた。
そうすると神気の勢いが緩み、その隙に神気を完全に内に戻した。
俺はいきなりの出来事で汗を垂らし、息が荒くなる。
「この石なんだよ呪いの石かなんかか?!」
俺は投げ捨てたそれを指差しながらキリサメに怒鳴る。
慎は困惑した様子でその石を拾い上げ、試しに首にかけていた。
「……俺じゃ何も起こんねぇな。
この石のせいで慎二の神気が出たんだろ、一体何なんだ?」
「そいつは魔閃石っつう石だよ」
魔閃石……
俺は王城で読んだダンジョンについての本を思い出した。
確か魔鉱石のなり損ないで、光を少し発する鉱物。
それのおかげでダンジョンは光がなくても大丈夫っていう……
「それに神気を暴走させる力があんのか?」
「いや違う。
実はその石には俺の気が入ってんだよ」
キリサメの気……まさか?!
俺は勘づいたが慎はその言葉の意味が分かっておらず戸惑っていた。
「慎二は前の立ち合いで神気が暴走したろ?
その原因が俺が気を使ったせいだって言われてな。
だったら俺の気を込めた石を持ってたらいつでも簡単に出せるんじゃねぇかと思ってよ。
予想通り上手くいったぜ」
なるほど、確かにそれなら……ん?
俺はあることに気づきキリサメに質問を投げかける。
「出たはいいんだがよ、もしこれでミスって暴走してたらどうなってたんだ?」
「ボコしてた」
「血も涙もねぇ」
俺はそう言いながら慎が持っている石を受け取り自分の首にまたかける。
するともう一度神気が吹き出しそうになるが俺はそれを何とか抑え普通のままの状態を保つ。
「まぁ出せる方法見つかったのはいいけどよ、これじゃ神気は出せても制御するのに精一杯で操作すんのは難しいぞ」
「だろうな。
安心しろそいつは神気を出すためにやらせてんじゃねぇ、修行としてやらせてんだ」
俺はその言葉の意味がわからず首を傾げる。
修行として……?
そうしているとキリサメは口を開いて、それについて説明して行く。
「そのまま神気を抑えた状態を四六時中ずっと続けろ。
飯食ってる時も風呂入ってる時も寝てる時もだ。
そうすりゃだんだん慣れてきて抑えるのが楽になってきて無意識状態でも抑えられるようになるだろ?
そこで、もしその首の石を外して神気を出したら……?」
「神気の許容上限が上がる!?」
俺がそう言うとキリサメは首を縦に振る。
確かに今まで15%までしか出来なくて少し困ってたからな、丁度よかった──
「おいまた出てるぞ」
「……あ」
俺はもう一度その溢れ出そうになる神気を抑える。
っぱり意識しなくなると簡単に出ちまう、もうちょい慣れねぇと……
俺がそう思っているとキリサメは次に慎の方向を向く。
「慎、お前はこの二週間は基礎的なトレーニングを続ける。
気の感知、吸収、全ての技術を磨いて行く。
だからまぁずっと俺との立ち合いだな」
「わかった……
けどよ、剣気の修行は……」
不安そうな表情を浮かべる慎にキリサメは笑いながら頭を撫でる。
「俺が剣気を覚えさせんの諦めたとでも思ってんのか?
んなわけねぇだろ。
お前は必ずできるようになる、必ずだ俺が保証してやる。
だからそんな落ち込むんじゃねぇよ」
「……わかった」
慎はそう言い俺は木刀を慎とキリサメに渡す。
そしてキリサメたちは早速立ち合いを開始した。
……俺これ何すりゃいいんだろうか、許容上限上がるっていってもなぁ。
俺は一つ思いつきキリサメと慎が戦っているのを観戦する。
いつも通りキリサメは目を瞑ってるな……
観戦しながら俺はキリサメの隙を探して行く。
ここだ!
俺は木刀を排出、キリサメにできた隙を突き切り掛かる。
「ヘグッ──!」
だがその瞬間俺は宙を舞う。
俺は何とか空中で身を翻し着地する。
切り掛かったけど避けられて投げられたのか……
俺がそう考えているとキリサメは微笑む。
「正解だ!
ただ過ごしてるだけじゃ修行とは言わねぇよな」
そして俺と慎はキリサメに一本を取るため、立ち合いを続けるのだった。




