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74話 余韻


 俺とキリサメは戦闘を終えた後、帰路についていた。

 歩いているとキリサメは思い出したように声を上げた。


「俺よ、少し用事あっから離れてぇんだけど一人で帰れるか?」


「あぁ別に大丈夫。

 何しに行くんだって聞いても教えてくれねぇんだろ?」


「……悪いな」


 キリサメはそう言うと俺の頭に手を置く。

 その瞬間、淡い光が俺を包み傷を癒していく。


「応急処置程度だ、これでちゃんと帰れっだろ」


 腹の痛みも少し引いたし、少しの切り傷も治ってる。

 俺は感謝を言うとキリサメは街とは真逆に歩き出した。

 そして俺は街へと歩いていった。


***


「はぁ……疲れた〜」


 俺は無事街へと帰り家へと戻っていた。

 街に入ってからみんなは俺に労いの言葉を送り、野菜とか果物をくれた。

 早く風呂に入りたい、全身血まみれだ。

 ようやく家が見え、玄関の前に人影が見えた。

 一人は赤い髪に赤い和服にポニテ、もう一人は小柄で緑の髪……


「「慎二……!」」


 慎はリリより先に俺に気づき、慎は急いで駆け寄って来る。

 家に帰れたという安心のせいか力が抜け、慎に倒れ込む。

 慎たちは俺が血まみれなことに気づき、どこか大怪我をしたのではないかと体を確認する。


「大丈夫……そうだな」


「帰って来るって、信じてたわよ……」


「何お前ら泣きそうな面してんだよ。

 慎、もう歩くの面倒くさいから風呂まで運べ!」


「……へいへいわかりましたよ」


 慎は俺をおぶり家に入る。

 ちゃんと……帰れたんだな。

 そう実感した途端、少し涙が込み上げるが堪える。

 そしてリリに石を預けられていたことを思い出し、亜空間収納(インベントリ)から排出、リリに手渡した。

 そうするとリリはとても嬉しそうな顔でそれを受け取り、大事そうに抱える。

 その様子から俺はどれだけ大事なものを預けられていたのかを実感する。

 中に入ると家事をしている雫さんと目が合う。


「よく帰ってきたね、風呂はもう沸かしてるよ。

 ゆっくり浸かったきな」


「有難うございます、ゆっくり浸かります」


 俺は慎に背負われ浴場に向かった。

 浴場に着くとそこには綺麗に畳まれた俺の服があった。

 俺は降ろしてもらい、ついでに慎に腹を重点的に治癒(ヒール)で治してもらった。


「お前も入るか?」


「あぁそうだな、入ろっ──

 あ~やっぱいいわ、一人で入れよ。

 "一人で"な」


 そう言うと慎は足早に浴場を去って行った。

 どうしたんだあいつ?

 俺はさっさと汚い服を脱ぎ捨て、風呂に入って行った。


「クゥ〜固まってた血が洗い流されて行く〜!」


 シャンプーやボディーソープを使い、血の汚れを落としていた。

 洗い終わると沸かされている湯船に浸かり、一息ついた。


 そして浴場に一人、俺は色々と考えていた。

 まだ戦いが終わったってわけでもねぇが、一段落ついたな〜

 よく生きてたもんだぜ……

 最初にこの最下層に来て右も左もわからなくて、敵は強いしボコられるし大変だったな〜。

 でもノアのおかげで徐々に力をつけてハイオークまでも倒した。


 けど、俺はその後ライオッドやタシテス、ティグにボコられたな……

 そんでメンタルバキバキで、みんなに酷い言葉も吐いた。

 それでもキリサメは寄り添ってくれた、一緒に泣いてくれた。

 そしてみんなのおかげで強くなって、ライオッドと戦って……

 神気のおかげで何とかなったとはいえ、俺は負けちまった。

 けど、それでも今回はやっと結果らしい結果を残せた、今回は"自分で"頑張れた……

 俺の、長いようで短かった修行は無駄じゃなかった……



『誇れ』



 ポタポタ


 一粒一粒、湯船に落ち波紋を広げて行く……


「グックゥ……」


 俺は歯を食いしばる。

 やっと、やっと……変われた気がする。

 昔の自分の、殻を……破った気がする。

 俺はそこで一人泣きながら拳を握りしめるのだった。


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