70話 固執
「よし……行くか」
俺は朝飯を済ませ身支度を整えていた。
まぁ身支度って何すればいいのかよくわからないけどさ。
そんなことを考えながら俺は部屋を出て、そして玄関へと向かい靴を履き家を出た。
「慎二、やばくなったら駆けつけてやっから頑張れよ。
そんで必殺技……試してみろよ」
「あれ名前少しダサくね?」
「いやかっこいいだろ!」
昨夜、キリサメに教えてもらった技……
まぁ出来っかわかんねぇけどよ。
そんなことを考えているとリリとルルが近くによってきた。
「今回帰って来てすぐ返しなさいよ、絶対に……」
浮かない顔をする二人を元気づけるため頭を撫でてその石を受け取り亜空間収納に入れる。
「あんたの好きなもん作って待ってるから冷める前に帰ってかなさいよ」
「はい!」
そして最後に慎が近くに寄ってくる。
「剣気……まだ出来てねぇから、帰って来たら教えろよ」
「任せろよ、手取り足取り教えてやるからよ!」
俺は慎とハイタッチし歩き出そうとすると、キリサメが俺を呼び止めた。
「どうしたんだよキリサメ?」
「あんま……固執しすぎんなよ」
固執……?
そう思いながら俺はその場を去っていった。
街まで行くと俺を見るなり笑顔を浮かべ「頑張って来なさいよ」と優しく俺を鼓舞する。
そして俺は街を出て走り出していった。
俺はそのダンジョン内を走り回っていた。
感知使ってるから何となく居場所はわかるな、さっさと行くか。
そして俺がもう一段ギアを上げようとした瞬間──
「死ねよ、伊藤慎二!」
そんな言葉が後ろから聞こえた。
俺はその攻撃を受けて、俺は前に飛んでいく。
一体……何が──?!
俺はそう思い、そいつを視認する。
そこにいたのは黄色の肌に虎のような尻尾、耳を生やしている人型の亜人……ティグだった。
俺は前にこいつにやられたことを思い出し、足がすくみ汗が流れる。
何でこいつが──!
そう考えていると、その答えをティグは話していった。
「僕でも……お前くらいやれんだよ!」
顔を真っ赤にして怒りながらそんなことをティグは言った。
なるほど、合成獣ってやつと俺が戦うのが気に食わないのか……
俺はあの出来事を思い出し、少し足がすくむ。
「僕がお前を殺して、僕の実力を見せつけてやる!」
そう言いティグは走り出していく。
流石虎の亜人、目で追うことは難しいスピード……
けど今の俺には……神気があるんだ、こいつくらい!
そして俺は目を瞑り集中する。
思い出せ、俺があいつらにいじめられていたあの時の──
「グッ……!」
その前にティグは俺の腹に蹴りを入れる。
クソッ……こいつ速すぎて出す前に攻撃が飛んでくる。
そんなこと考えてる暇ねぇ、早く神気を──!
「遅いんだよ……!」
いつのまにか上に来ていたティグの蹴りが俺の頭上に突き刺さり、勢いのまま地面に叩きつけられる。
そして追撃の蹴りで俺は壁まで飛ばされていく。
壁に背中を叩きつけ思わず咳が出た。
速ッ──!
考える間もなくすぐに距離を詰められ、殴られ続ける。
顔を何回も、殴られ続ける。
駄目だ、弱気になるな……
早く、神気を……神気を出さないと!
「無駄だよ!」
そしてその攻撃が俺の腹に突き刺さり、俺は地面へ倒れ込む。
意識を失いかけるが必死に繋ぎ止め、耐える。
ティグは嬉々とした表情で俺のことを見下ろす。
「何だよ、やっぱり弱ェじゃん。
お前、修行頑張ったんだって?無駄な努力じゃん!」
そんなことを言いながらティグは高らかと笑い声を上げる。
駄目だ、こんなとこで負けちゃ……
「はぁ笑った笑った……
てか君、弱くなってない?前の方がよっぽど手強かったよ。
とりあえず、タシテスはお前を捕らえたいらしいから眠っててもらうよ」
弱く……なった?
そしてティグはその振り上げた拳を俺に向かった振り下ろした。
『固執しすぎんなよ』
その瞬間、俺はその攻撃を受け止める。
驚いた表情をティグは浮かべ、俺の手を振り解こうと足掻く。
「離せよ雑魚が!」
もう片方の手で俺を殴るがそれすらも俺は受け止める。
そして俺は頭を思い切り振り下ろし、互いの額がぶつかり合う。
その衝撃で両者の額から血が流れ出る。
俺は顔についている大量の血を袖で拭き、そいつと向き合う。
あぁそっか、俺……
それに気づき思わず笑みが溢れでる。
「何だよ雑魚のくせに笑いやがって、たまたまの一撃がそんなに嬉しいかよ?!」
そしてティグは足に気を集中させ強化、先ほどとは比べ物にならないスピードで四方八方走り回る。
そのスピードは音を置き去りにするほどの速度で、風が吹き荒れる。
「死ねよ!」
そしてティグは俺を殴りつけようと拳を抜く。
だが俺は攻撃を逸らし、そいつの後ろ首を掴み腹部に膝を入れる。
その衝撃でティグは10mほど飛び、咳が出る。
「一体……何、が?」
ティグは困惑した顔で俺を見つめる。
俺はティグを見つめ、そして思ったことを話していく。
「……ありがとな、俺に気づかせてくれて」
「……ハ?」
ティグは意味がわからないという顔で俺のことを見つめる。
自分でも変なことを言っているってわかっている、けどそう思ったんだ。
「俺さ固執してたんだよ、新しい力に。
これがあるから大丈夫ってさ……
けど駄目だよな、俺はこっちを使うべきだったよ」
「だからお前……何言ってんだよ!」
下に見られたのかとティグはそう思い、俺にそう怒鳴り声を上げる。
なんか……色々わかった気がする。
「本当に、ありがとな。
だから俺はお前を乗り越えて、先に行くよ」
「だから黙っ──!」
キンッ──
そんな音と共にティグの頭部は宙を舞った。
断面から少し遅れて血が吹き出す。
刀についた血を振り払い、俺はそいつの待つ場所へ歩き出していった。
***
「あら……遅かったじゃないか?」
金髪に狐のような尻尾に耳、赤い和服に身を包みそいつは待っていた。
その横にはボロボロのフードを被ったモンスターがいた……
「あぁ、少し勉強させてもらったよ」
俺はそいつらにそう告げるのだった。




