69話 最終日
「さて、修行最終日だ。
気張ってくぞ」
「今日は気を探知するやつだろ?」
俺がそういうとキリサメは首を縦に振る。
キリサメとの前の立ち合いで、まるで先でも見てるかのような動きをしていた……
それとどう関係があるのか、早く知りたい。
「今日覚える技は2つ。
戦闘時に敵の気を探知して攻撃のタイミングとかを読む技術。
そんでもう一つは気の消費を抑える技術だな」
「気の消費を抑えるって……
そんな技術あんのか?」
「あぁ、でも抑えるって言い方は正確にはちょっと違うけどな」
俺が困惑しているとキリサメはまず気の探知の技術について話していった。
「慎二と慎もできると思うが、遠くにいる敵を感知したりする技術を戦闘に応用する」
「前戦った時、師匠まるで未来でも見えてるような避け方してたよな?
それとなんか関係あんのか?」
「あぁ、まぁそれは上級編だからまだできなくてもいい。
今回やってもらうのは敵の気の流れを感じて次にどんな攻撃が出るかを予想することだ。
100%の精度じゃなくてもいい、もしかしたらその攻撃が来るかもとか、今動き出すなとか警戒できるだけでもいいだろ」
確かに次にどんな攻撃が来るかを少しでも分かれば対応がしやすい。
もしそこが来なくても別にいつも通り反応すればいいだけだしな。
俺がそんなことを考えているとキリサメはその技術について教えて行く。
「まぁやり方は単純。
今から部位強化をするから、どんなことをするのかを気の流れから予想してみろ」
キリサメはそう言い、身体強化を発動させた。
そして俺たちはキリサメの気の動きに集中する。
手に行くのか足に行くのか刀に行くのか、それさえ分かればいい。
「さぁ今どこに気を動かしたと思う?」
俺は慎より先に口を開き、それを答えた。
「右足だろ。
多分、走り出そうと集中させたんじゃねぇか?」
「正解だ。
どんどん難易度上げてくから集中しろよ」
再度キリサメは気を動かしはじめた。
また、右足か?いやこれは………
そう考えていると次は慎が先に口を開いた。
「刀の攻撃。
右足に少し集中させてるから走り出して切るって感じか?」
「あぁ、普通はこんな感じに最低二つくらい集中させるからな。
まぁこれだけ分かりゃいいだろ」
「えっ……これだけでいいのか?」
俺は思わずそんなことを言う。
これだけじゃ前みたいなキリサメの動きができる気がしない。
「あぁ、変に仕込みすぎて変な癖作るわけにもいかねぇし。
言ったろ、来そうな場所分かりゃいいって」
「でもよ、これだけなら簡単すぎるだろ。
これだけじゃ前の戦いの時の師匠みたいに先を読むことなんか……」
「まぁ最初はそれでいいんだよ。
こういう技術がある、こういうことができるって頭に入れておくだけでいいんだ。
傷を負うたび、間違えるたびその先読みの精度は上がって行く。
今俺にどんな景色が見えてるかなんて、強くなれば分かるさ」
俺とキリサメじゃ見えている景色が違うのか……
俺はただスタートラインに立っただけってことか。
キリサメは次に気を抑える方法について話し始める。
「次慎二にやってもらうのは気を吸収しながらの戦闘だ」
「師匠それって……!
慎がそれを聞いて少し驚きの表情を浮かべていた。
何かを慎は言いかけたがキリサメの眼差しを見た瞬間、押し黙った。
「お前の知ってる通り空気中には少しだけ気が漂ってる。
それを吸収しながら戦うんだ、そうすれば気を消費しても大丈夫だからよ。
こいつも極めれば身体強化倍率、『不倶戴天』の威力の向上が見込める。
まぁやってみろ」
俺は修行に移ろうとするがキリサメと慎は木刀を構え始める。
「えっ慎はやんねぇのか?」
「悪りぃな俺はそれずっと前に教えてもらってたんでな。
俺は戦いながら先読み、吸収を平行する修行だ」
そうだ、こいつ一年前からずっとキリサメに教えてもらってんだ……
出遅れてしまったそれを取り返すように俺は吸収の修行に取り掛かる。
俺は坐禅を組み目を瞑り集中する。
大気中に気がある、それを回収していくイメージ……
やってやるよ!
***
そして吸収の修行を始めて2時間が経過した。
結果、ダメだった。
いやまぁダメってほどじゃねぇけどよぉ……
大気中の気も感じられてるし、吸収も少しできるが本当に少ししか取り込めないんだよな。
外部から気を取り込んで自分の気の器に入れるっていうイメージが全く思い描けねぇ……
「まぁしょうがねぇよ慎二」
俺が庭に繋がってる部屋で試行錯誤してると慎がこちらへやって来た。
俺は起き上がり慎と向かい合う。
「というかお前はこれ得意なのかよ」
「結構得意だぜ。
最初は出来ねぇのはしょうがねぇよ、かなり難しい技術だしよ」
「コツとか……」
いややっぱいいか、こういう系のやつは多分感覚でやってるからよくわかんねぇんだよな。
まぁいいや、俺には神気がある。
いざという時に出せばどんな敵だって倒せるだろ。
俺と慎が話しているとキリサメがこちらへ寄って来た。
「まぁこれは応用。
言っただろ、頭に入れておけってよ」
「まぁ確かにな……」
「慎が言った通り気の吸収はかなりの高等技術だ。
まぁそう気を落とすな、そんな落ち込んじまうと調子まで下がっちまうぞ」
「根性論か?」
「いや、実際そんなんだぜ」
キリサメはそう言い、さっきの発言について話していく。
「気っていうのはな、言っちまえば心の源的なものなんだよ。
だから心が沈んじまうと調子まで下がっちまうからよ。
とりあえず今は出来るのからやるぞ。
先読みのトレーニングだ、最初は慎と戦え」
キリサメは手に持っていた木刀を俺に投げ渡す。
そして俺は慎と共に修行に没頭するのだった。
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「師匠……ちょっといいか?」
慎は修行を終えた後、キリサメを呼び止め二人で話していた。
「今日の気の吸収の修行について何だけどよ。
あれ、今の慎二のレベルに合ってねぇだろ?」
「気づいてたか……」
慎は顔を落としながら自分の気持ちを話していく。
「どうしてそんなに急ぐ必要があんだよ。
確かに負けるわけにはいかねぇ。
けど師匠らしくねぇよ……」
慎が拳を握りしめながらそう言うとキリサメは慎の横を通りすぎ様に肩に手を置く。
「悪いな。
けど少し……」
何かを言いかけたがキリサメは言葉を飲み、静かにその場を去っていった。
明日は祝日なので18時に投稿します。




