67話 原罪
「"墓荒らし"……
もしかして、新聞で見た人?」
「知ってるのか慶」
僕がそう呟くと佐々木さんが聞いてくる。
そして僕の知っている情報を佐々木さんに話して行く。
「墓地を荒らして回る不審者です。
衛兵の皆さんも探しているそうなのですが行方が全く掴めないと新聞で見ました。
目撃情報によれば、身長は200を超えていて筋骨隆々。
そして"謎の仮面"をつけている……と」
藤宮さんの影響で新聞を読み始めたのが功を奏したな。
本当にこの人は、一体……
僕の話を聞き佐々木さんは剣を構え始める。
「諸々考えたいことがあると思うが今は後回しだ。
あいつはお前らが狙いだろう、魔法班はいつものように転移魔法を──」
「んなことさせる訳ねぇだろ」
そいつは僕たちの目の前から姿を消し既に後ろに回っていた。
そして晶に向かって大剣を振り上げる。
「──ッ!力!」
「おう!」
佐々木さんのその一声で近くにいた大島くんが動き、晶を押し除け、その大剣の攻撃を代わりに受ける。
ものすごい勢いで振り下ろされた大剣は大島くんの腕に直撃、骨が軋む音が鳴り呻き声を上げた。
僕と佐々木さんは一瞬でその男に近づき僕はその腕を切り落とし、佐々木さんはその男の腹部に一撃を入れその男は吹っ飛んでいき壁に激突した。
「藤宮さん!大島くんの傷を治してあげて」
「わかった!」
藤宮さんは大島くんの腕に治癒魔法をかけ、折れている骨を治して行く。
その瞬間、そいつがいる方向から禍々しい気配を感じ取った。
何だ?!この力は……
僕と佐々木さんはそいつがいる方向に意識を集中させる。
その間に晶は転移魔法の準備を進める。
「はぁめんどくせぇ……
弱いやつ相手だとどうにもな」
そんなことを言いながら壁から埃を払いながらそいつは這い出てくる。
「腕が、治ってる……」
「治癒が使えるのか……
中々手強い相手だ」
治癒をできるということは自分の傷が100%完全に治るイメージをしないといけない。
それは幾度となく傷を負い、治してこなきゃその感覚は掴めない……
治癒ができるということは数多の死戦を潜り抜けた強者の証のようなものになっていのだ。
けどさっきの禍々しい気配は、一体……?
「"剣人"のスキル持ち相手に使うなって言われてるからなぁ……
マジでやりたくねぇなぁ」
僕相手に使うな……一体何を?
そんなことを言うその男の様子から、もしかしたらこいつは話が通じるのではないかと僕は思い佐々木さんにそれを提案した。
最初は苦い顔をしたが、前に襲って来た男のことを知るためにと言ったら許可してくれた。
「一体、あなたたちの目的は何なんですか?!」
「オレたちの目的……か」
その男は僕が話しかけると少し考え込む様子を見せた後……
「ここに来たやつを殺せ、と命令されただけだ。
一人例外だったかな、まぁいいか……」
一人例外……恐らく佐々木さんのことだろう。
佐々木さんは仮面の男に襲われる時、何故か自分だけ殺されないらしい。
そしてそれは命令されてやったこと、つまりこの仮面たちは誰かの命令で僕たちを襲っている。
「あなたが襲ってくる前にも、同じような人が僕たちを襲いに来ました。
あなたは何か組織的なものに所属しているのですか?」
「あぁ前に襲ったってやつは誰か知らんが、オレと同じマスクをつけてたなら多分仲間だろう」
「あなたたちの、組織の名前は……?」
そしてその男はその名を口にした。
「"原罪"、まぁそんなとこじゃないか?」
原罪……?
何か、罪を犯したということか?
僕がそう考えているともうすぐ転移魔法の用意が終わるらしく地面に魔法陣が敷かれはじめた。
「時間がないようだな。
丁度消化も終わったとこだ、食後の運動いこう」
その大男はそう告げた瞬間、僕たちに向かって飛来する。
僕は一歩前に出てその攻撃を受け止める。
強い衝撃が僕の体を襲い、骨が悲鳴を上げているが僕は無理やりそいつを押すことで後ろに飛ばす。
「お前のスキルのせいか……
素の身体能力がとんでもないな、しかも骨にヒビが入っても自動回復がついてるのか」
そしてヒビの入った骨たちが自動的に治って行く。
これならいける、時間くらいなら稼げ──
「慶!」
その瞬間、僕の天地が逆転した。
上から佐々木さんたちの声が、いつ僕は飛ばされて……
佐々木さんたちを視認しようと上を見た時だった、何故か赤い液体が大量に下に向かって落ちていた。
「熱──!」
腕がなくなっていた。
いつ移動した、いつ切られた、どうして感じなかったんだいつもなら何となくわかるはずなのに……!
「考え事とは、余裕なもんだな剣人」
僕が宙を舞って身動きが取れない隙にその男は一瞬で跳躍、距離をゼロにし大剣を振るう。
「そいつをやるのは、ちょっと待てや墓荒らし!」
そしてそいつの動きは止まる。
大島くんがそいつの足首を掴んでいたおかげでその攻撃は紙一重で当たらなかった。
大島くんはそいつを投げ飛ばし距離を稼いだ後、僕を抱え下に降りる。
スキルのおかげかすぐに出血は止まった。
その大男は再度こちらへ向かってくるが佐々木さんが応戦し、その攻撃を受ける。
「悪いがこいつらはやらせない!」
「めんどくせぇな、言いつけ破るが仕方ねぇ……
は──」
その瞬間、その男から謎の黒い力が吹き出す。
それは僕に向かって飛来、反応ができなかったせいでそれは僕の腕に吸い込まれて行く。
「腕が、どうして!?」
「どうしてお前に吸い込まれて──!」
「油断禁物だ……!」
その黒い力が消えて行くと、僕の腕は綺麗に生えていた。
その様子にその大男が驚いている隙に佐々木さんはそいつに一撃喰らわせ壁まで飛んでいった。
そして転移魔法の準備が整い、僕たちは光に包まれ佐々木さんはギリギリのところでその中に入りることができた。
「待てお前ら──」
「────」
その瞬間、その大男の動きが止まった。
一体……何が?
そして僕たちの視界は白く染まり、王都へ帰って行くのだった。
「大丈夫ですか?!みなさま!」
兵の人のその声を最後に僕は気を失っていった。
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その瞬間、自由にその男は動けるようになった。
「一体……今何が」
その男は横を向き、その奥に意識を向ける。
そしてその男はその奥に誰かが立っていることに気づく。
その男は一瞬にしてそいつの強さを見抜き、口角を釣り上げた。
「てめぇ……強いな!」
剣を抜こうとした大男だったが、そいつは闇に消えていった。
大男は落胆し、地面に倒れ込んだ。
「んだよ楽しめそうだったのによ」
その男がそんなことを言っていると懐からプルプルと音を発して何かが震える。
そいつは懐からその板のようなものを取り出して出る。
「んだよオレ、ちゃんとあいつらのこと襲ったぜ?」
「だとしても一人も殺せていないのは大問題だ。
お前に命令したのが間違いだった」
「へいへい、すんませんした〜」
その男はその板に触れ、通話を切る。
そしてその男は手に持っている端末に顔を近づけ観察する。
「にしてもこれすげぇもんだ。
遠くに離れてようと会話できるなんて、魔法だろ」
その男はそれをしまい地に刺さる大剣を引き抜き、ゆっくりと歩き出していった。




