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66話 美味


「で……話って何なんだ?」


 俺はキリサメの部屋に来て将棋を打っていた。

 キリサメはコマを動かしながら話し始める。


「今日、神気だしたろ?

 何であの時出たのかを一緒に考えてみようかと思ってな」


「あぁそういうことか」


「あの時、キッカケ的なもん何かあったか?」


 キリサメに聞かれたことで俺はさっき出てきた理由を考えて行く。

 何で出てきたんだろうな、これといって強い感情とか感じてたわけでもねぇしな。

 そういや、前に暴走した時……


「今回と関係あるかわかんねぇけどよ。

 俺、雫さんと修行してた時暴走したろ?

 その時確か、俺の中にある……暴走するもん?みてぇなのがキリサメのこと呼んでたんだよ」


 俺がそう言った瞬間、キリサメの手は止まった。

 その様子に俺は何か心当たりがあるのではないかと思い、聞いてみた。

 キリサメは一度深く息を吐きながら熟考した後、話していった。


「お前『布都御魂』で剣気をした時"経験"もらっただろ?

 実はそれはよ俺の、"親友"のやつなんだよ」


「キリサメの、親友……?」


 そして俺はあの時に見たものを思い出す。

 そうだあいつだ、めっちゃ戦場にいた敵薙ぎ倒してたやつ。

 あの……バケモンみてぇな規模で戦闘してた、あいつか。


「多分その経験がお前の中にある神気と混ざり合っちまったんだと思う。

 だからあいつは俺をトリガーに暴走するんだと思う」


 確かに、今俺にあの闇ほどの技術は持ってねぇ。

 神気に吸い込まれていったからってのは納得がいくな。


「今回はキリサメが近くにいたから暴走したってことか?」


「まぁそれもあるだろうがあの暴走する直前、スキル使ったろ?

 そん時少し気を出したせいかもな」


 確かに、俺もあの時少しばかりキリサメを見てその強さに高揚してた部分もあるかもしれない。

 キリサメのおかげで神気が出るハードルが下がったってことか……


「あってか教えろよ気を隠すやつ。

 慎に聞いたけど教えてもらえなくてよ」


「まぁいいがお前じゃあんま使いこなせねぇぞ」


 俺はその言葉に不満を覚えているとキリサメはその技術について話して行く。


「気を身に纏いながら自分の姿を消すのが隠密。

 言っちまえばそりゃあ初級編ってとこだな。

 だけどそのままだったら姿までは隠せても身に纏ってる気を感知されて終わりだ。

 中級編は気も隠す、慎がやってるやつだな」


 確かにあいつがキリサメに切り掛かった時、全然気配なかったな。


「けど中級はデメリットがある。

 全ての気配を消せるが身体強化までは出来ねぇんだよ」


「んじゃ上級編は身体強化までできるってことか」


「そうだ。

 中級編と違って姿は隠さないけどな、気を内に隠して気の流れを悟られずらくしながら身体強化をする。

 けどぶっちゃけそんなにする意味ねぇんだよ、そこまで気の感知を極めてるやつと戦うことなんてほぼねぇしな。

 だからやんなら感知を極めた方がいいぞ」


 確かに……モンスター相手とかで気を隠しながら戦ってくるやつなんていないだろうしな。

 俺は気の感知について聞こうとした瞬間、キリサメはコマを強く盤に叩きつける。

 まさか……


「王手、俺の勝ちだ。

 んじゃ俺は風呂入ってくるわ〜」


「ちょっ感知のやり方──!」


 そう言いかけたがそれをキリサメは無視し部屋を出ていった。

 明日に、お預けっすか……

 だけどそんな眠くねぇんだよな。


「あっそうだ、だったら剣道場で感知の精度とか高めようかな。

 そしたら明日の修行、早く進めるし」


 俺は速攻で剣道場に向かって歩いて行く。

 あそこなら静かだし街の人たちの気を感じるトレーニングするか。

 幸いみんな気の総量段違いに高いし。

 そんなことを考えながら剣道場を覗く。


「あっ……」


 そこには剣気の修行をしている慎の姿があった。

 目を瞑りながら素振りをしていた。

 こんな時間まで、修行を……

 前、俺の素振りみた慎も同じ気持ちになったんかな。

 そして俺は目を瞑って集中している慎に気づかれないように中に入り横に座る。


 そして目を瞑り、街の人たちの気を感じていく。

 人にはそれぞれ感じる気が違う、なんて表現すればいいのかわからないが何かが違うんだ。

 それはその人と同じ形をしているから誰なのかがすぐにわかる、サーモグラフィーみたいなものだ。


 リリと雫さんは今も料理してんな、ルルは今寝てんのか。

 キリサメは今ちゃんと風呂にいんな、そして慎は……

 あれ何か振りかぶってない?


「い゙っ!」


 そしてその木刀が俺の後頭部に当たる。

 思わぬ痛みに俺は頭を抑える。

 慎は俺に気づいていなかったようで焦った様子で俺に近づく。


「えっ何でお前いん──!

 てか大丈夫か?悪かった気づかなかった」


「いや、大丈夫だ……」


 そんなことよりさっき慎の動きが見えてた、よな?

 あの時キリサメが見えてた世界、こんな感じだったのか……!

 確かに武器見えなかった!


「えっお前、なんで笑ってんだ……?」


「え?」


 俺は自分の顔を触る。

 確かに俺の口角は少しだけ釣り上がっていた。

 思わず嬉しくて笑っちまってた……

 慎はその様子に本気で俺のことを心配し始めた。


「頭、おかしく……!?

 治してやるからほら頭見せろ!」


「だい、大丈夫だから──!」


「大丈夫なわけねぇだろ殴られて笑うとか!

 悪いとこ打ったんだろ?!早く治さねぇと悪くしちまうだろ!」


「だっ、だからぁ……」


 俺はもう説得するのを諦め、大人しく慎の気が済むまで頭の治療をした。


──────────────────


「もうすぐ……80階層だね」


「そうだね藤宮さん。

 あと20階層もすれば、伊藤くんの元へ行けるね」


 僕、樋口慶は藤宮さんとそんなことを話していた。

 今は79階層の最後のエリアボスの討伐、もうすぐ80階層……

 そんことを考えていると、佐々木さんがみんなに声をかける。


「気配が濃くなって来ている!

 もうすぐアンデッドのエリアボスと会うことになる、気を引き締めて行くぞ!」


 そして僕は佐々木さんの近くに行く。

 僕は佐々木さんにしか聞こえないよう小さな声で話す。


「佐々木さん、分かってますね」


「無論だ、今回の討伐班。

 蓮が体調不良でいない、つまり前と同じ状況だと」


 そう、今回の討伐は柳くんはついて来ていない。

 どうやら頭痛が酷いらしく部屋で休むらしい。

 僕が前に立てた仮説では、あの仮面はもしかしたら柳くんがいない時襲いにくるのではないかということ。

 確証はない、ただもしかしたらという可能性がある。

 混乱を防ぐためこの話は僕と晶、佐々木さんだけにしか伝えていない。


「考えるのはいいが、そろそろだぞ」


「はい、わかってい──」


 その瞬間、ダンジョン全体に強い衝撃音が鳴り響いた。

 これって、この音……奥から?

 その音によって僕たちはその場所だけに警戒が注がれる。

 この気配、あいつじゃない……

 前ほどの凍てつくような死の気配が全くしなかった。

 けどおかしい、この気配は何故か……同じ場所に2つある。

 そしてその曲がり角を僕たちは曲がる、その音の根源を確認する。



「──え?」



 そこには大男がいた。

 身長は200を超えているだろう、大きな剣を持ち深くフードを被っている。

 後ろを向いていて、どんな顔をしているのかよく見えなかった。

 けど、僕たちが驚いたのはそんな人間離れした身長というわけじゃなかった。

 僕たちが、僕たちが驚いたのは……!




「美味いな」




 アンデッドを"喰っていた"。

 そのアンデッドにある魂をそいつは食べていたのだ。

 そいつの近くには骸骨が転がっている。

 もしかしてあの転がっている骸骨はエリアボス?あの大男が殺したのか!?



「さて、殺るか」



 その大男は懐に忍ばせていた何かを顔につける。

 そしてその大剣を持ち僕たちに顔を見せた。

 それは……まさか──!


「仮面……?!」


 あの男とは少し違う仮面だった。

 だがそいつと同じ存在であるということはその仮面を見るだけでわかる。

 そしてそいつは言葉を喋っている、知性がある。


「お前は、何者だ?」


 頬に汗を流しながら佐々木さんはその大男に対してそう聞く。






「オレか?オレはただの"墓荒らし"だ」

 






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