65話 おばあちゃん
「気の感知とか諸々仕込みたかったが、神気が扱えることが分かっただけで十分だ。
実戦で使うために神気の修行はここで打ち止めして、明日からは気について色々技術を仕込むからこれで切り上げんぞ」
「気の容量とかは増やさなくていいのかよ?
ライオッドとの戦いで気が切れちまったこともあるし……」
「それについては明日教える、とりあえずお前らは休んどけ」
その言葉に俺は安心し修行を終えて、慎とキリサメ共に家へ戻って行く。
キリサメは自室へ戻っていった。
そして俺はさっきの立ち合いを振り返っていた。
神気……扱えたっちゃ扱えだがまだまだだ。
15%以上も操れるようにならねぇとな。
俺がそんなことを考えていると慎が口を開いた。
「そうだ、俺お前に剣気を教えてもらう約束してたよな。
こっから暇だし教えてくれねぇか?」
「あぁ構わねぇよ。
だったらさっきの立ち合いでやってた気を隠すやつも俺に教えてくんねぇか?」
慎は頷き、俺たちは庭に戻るのも面倒くさいので剣道場へ向かっていった。
***
「お前全っ然出来ねぇんだな、剣気」
「っるせぇ、すぐにできるお前が異常なだけだろ!」
慎は刀を持ちながら俺にそう怒鳴る。
剣気の修行を始めてから早30分、全く進展がなかった。
俺も早く気を隠すコツとか聞きたいんけどな、てか何で俺出来たんだっけ……?
「あっそうだわ、俺最初に剣気する時スキル使いながらやってたんだよ」
「スキルって身体強化のスキルだろ?
勿論剣気をしてぇとは思うけどよ、スキル使っちまったら『天絶』とか『不倶戴天』出来ねぇだろ?」
「やるだけやってみろよ、コツとか高めるかもしれねぇし」
慎は渋々承諾し、身体強化のスキルを発動する。
そして慎の気はゆっくりとその刀に集中して行く……
「……あれ?」
慎がそう言った瞬間、刀に集まっていた気が霧散していった。
俺はその様子に驚き目を見開く。
「スキル使ってもお前出来ねぇってどうなってんだよ。
気を特定の場所に集めるだけ、いつもやってることだろうが」
「やっぱ俺って才能ねぇのかな……?」
そんなことを言いながら慎は膝から崩れ落ち落ち込んでいる。
どういうことだ?いくら才能ねぇとはいえスキル使っても出来ねぇなんてありえないだろ。
それにこいつは気を隠す技術を数回見ただけで会得するほどのセンス持ってる、だってのにどうして?
もしかして本人に何か、問題があるのか……?
俺はそんなことを考えていると一つ思い出した。
「あっそうだ慎。
お前にライ……ゴブリンのエリアボスから伝言があったんだよ」
「あいつが俺に?何だよそれ」
すっかり忘れてたぜ、あの後キリサメとは話してたから頭から抜けてたな。
疑問符を浮かべている慎に俺はライオッドが言っていたことを思い出しながら伝えた。
「『恐れるな、慄くな、お前のしたいことをしろ』とか何とか言ってたぜ」
「俺の、したいこと……?」
一応伝えたがしたいことって一体なにを?
俺がそんなことを考えていると慎はため息をつきながら寝っ転がった。
「したいことならもうしてるわ」
「それって何なんだ?」
「俺には……守らなきゃいけねぇ約束があんだよ」
俺は慎の横に座る。
そして慎はその約束について話して行く。
「俺、おばあちゃんっ子だったんだよ。
ばあちゃんはめっちゃいい人でよ、ダメなことはダメとか褒めるとこはとことん褒めてくれる……
剣道やってたからよ、大会とか優勝した時めっちゃ褒めてくれて……肉じゃが、美味かったなぁ」
慎はとても良い表情でそのことについて話して行く。
その様子からとっても慕っていたことが伺えた。
だが慎は起き上がり、暗い表情に変わって行く。
「けどよ、俺が小学校中学年に上がったころか。
ばあちゃんが亡くなったんだよ、持病が悪化してな……
その時、約束したんだよ。
『人を守る、剣を極めなさい』って言って、亡くなったんだ。
だから俺は人を守る、だから俺は剣を極める」
慎は硬く拳を握りしめながらそう言った。
「お前が、そんな良いやつな理由が分かったよ」
「んだよ茶化すな」
「褒めてんだよ、心の底から。
ほらやんぞ、さっさと終わらせて俺の修行もさせやがれ」
俺はそんなことを言いながら立ち上がり、慎に手を差し伸べた。
それに慎は俺の手を取り微笑みを見せながら……
「お互い様な気もするけどな」
そう言い立ち上がり、修行を続けていった。
***
「結局、気の隠し方は教えてもらえなかったな〜」
俺は飯を食べ風呂に入った後、自室へ戻っていた。
おかず半分やったせいで小腹がすいた、何かつまみでもあるかも……
そんなことを思いながらリビングへ行くと、そこにはコソコソと料理をしているリリと雫さんの姿があった。
近づくと真っ先に雫さんが気づく。
「慎二じゃないかどうしたんだい?」
「小腹がすいたんで何かあるかなと」
「……だったら慎二、少し私たちに付き合いなさいよ」
リリはそう言うと俺にリビングで座って待っているようにいう。
そして雫さんと共に俺は厨房で頑張って料理しているリリを眺める。
「キリサメへのプレゼントでしたっけ?」
「あぁそうだよ。
そういうあんたは何上げるか決めたのかい?」
「まぁ何となくですけど、結構大変そうなんで頑張るしかないっすね」
そんなことを話しているとリリがお盆に乗せて料理を持ってくる。
そしてそれを机の上に置く。
これ、きゅうりの塩揉み……?
「そんな重いものだったら食べるの大変だと思って、これだったら軽いかなって……」
リリは顔を赤くしながらそういう。
ちゃんと考えて作って……
その心遣いに俺は思わず顔を綻ばせる。
そして俺は手を合わせ、それをいただく。
んっこれ──?
「おぉここにいたか慎二」
その瞬間、キリサメがリビングに乱入する。
俺は一瞬で持っている箸と料理を収納し、何事もなかったように振る舞う。
「慎と将棋してたんだが逃げられてよ、話もあるから俺の部屋来れるか?」
「あっ……あぁ良いぜ」
俺がそう言うとキリサメはリビングを去っていった。
その時みんな一斉に安堵のため息をついた。
「えっと……」
不安そうな様子でリリは俺を見つめる。
俺は料理を排出し一気にかきこみ完食する。
「美味かったよリリ。
キリサメも喜んでくれるはずだ、頑張れよ」
俺がそう言うとリリは満面の笑みで頷き、厨房へ戻っていった。
俺は食器を置き立ち上がり、キリサメの部屋へ向かった。
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「喜んでくれたようで良かったじゃないかリリ」
「うん!もっともっと頑張ってキリサメに喜んでもらうわ!」
そして私はリリにそう言い、置いてある塩揉みを試しに食べてみた。
「ッゲホ、ゴホッ……」
私は思わず咳き込んでしまう。
その様子にリリは心配そうな表情で私に近づく。
「これっ……塩、濃すぎだよリリ」
私がそう言うとリリも急いで食べるが一緒に咳き込んだ。
「えっ私ちゃんと味見したのに」
「たまたま塩少ないとこ食べちゃったのかもね」
「だったら、慎二……!」
リリもその事実に気づく。
これをあんな笑顔に何事もなかったように食べるとは……
「師弟ってのはなるもんだね全く……」
慎二がキリサメの後ろを歩いていると急にふらつき始める。
「どうした、体調でも悪いか?」
「いや、人間性みたいなもん試されてただけだよ……」




