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64話 言うべき言葉


「反転、率?んだよそれ」


「俺だって知らねぇよ……

 ただ、頭に浮かんだもん言っただけだ」


 反転率、その意味はよく分からない。

 ただその"反転"という部分、何かが反転しているということだろう。

 俺の髪が白くなってんのはそれとなんか関係あんのか?

 いや、それよりも……


「いいか?動いて」


「あぁ、来い」


 俺がそういうとキリサメは再度目を閉じた。

 さっきから動け動けうるせぇな、んじゃ行くぞ。

 そして俺はさっきとは比にならないスピードで接近、木刀を振り下ろす。

 そのスピードにキリサメは驚く様子を見せたがそれを難なく避ける。

 そしてキリサメは俺の頬を殴りつけようと、拳を握りしめ振る。


 だが振り下ろされた木刀が地面に当たった瞬間、地が割れ急な突風にキリサメは一度距離を取る。

 すげぇ威力……

 俺もその身体能力の向上に驚いていると慎が俺に近づく。


「それどこまで持つ?

 上限15%なんだろ、今何%だ」


「あぁ、丁度……"13%"」


 俺のうちから闇がより吐き出され筋肉も少し膨れる。

 その様子に慎は思わず顔を顰めた。


「どんどん人間離れしてくな……

 それ全力か?」


「いや、これからだ」


「んじゃ俺も……」


 俺はそれに首を縦に振り、集中する。

 体に纏われている神気を操れ、それを強化に回せ。

 慎も同様全力、体内にある気を練っているようだ。

 そして……


     「"身体強化"」 「"神体強化"」


 俺の気では到達できない高みへと自分の体が強くなって行く。

 気も扱えそうだがまだそこまでリソース裂けないな。

 でも十分だ。

 どんどん神気が体を侵食してきてる、残り2%全力で行く。


 そして俺と慎は同時に動き出す。

 その勢いに地面は隆起し土埃を残す。

 一瞬で俺たちはキリサメとの距離を詰め挟み込む。

 俺は横腹に突き、慎は首を狙い横薙ぎ。

 この攻撃に当たればいくらキリサメでもタダでは済まない、さぁどちらを避け──


「は?」


 その時、キリサメは消えた。

 目視出来たのはその動きの軌跡のみ、キリサメは一瞬で足を閉じ沈み込むことで回避。

 そして俺の伸ばした腕を掴み慎に向かって俺を投げた。


「飛ばせ慎!」


「おう!」


 慎は俺の足を掴み体を回転させその勢いでキリサメに投げ返す。

 そして俺は翼を使用し慎の投げた勢いにプラスしてスピードを上げる。


「はっ!無茶すんじゃねぇか!」


 そう言った瞬間、キリサメは俺の眼前に迫る。

 俺は急いで木刀を振るが左手でその動きを止める。

 地に足ついてねぇから押し合いじゃ負け──

 その瞬間俺は宙を舞う。


「し、たから……!」


 キリサメは思い切り俺の顎目掛けて右手を振り上げたのだ。

 その攻撃で意識が混濁する。

 そしてその隙にキリサメは俺の腹目掛けて拳を振る。

 だが慎はすでに体勢を立て直してキリサメに近づいており、宙に浮かぶ俺の影から慎は顔を出しキリサメの腹目掛けて薙いだ。


 その瞬間、キリサメは体を少し回転させジャンプした。

 そして向かってくる木刀を地面代わりに飛んでいき距離を取った。


「クッソバレた」


「音出すんじゃねぇよバカ」


「お前さっき殴り飛ばされてたクセによく言うぜ」


 俺は殴られた顎を撫でながら立ち上がる。

 あぁやべぇ、来る。

 "14%"

 さっきのように体がそれと共に強化される。


「あと1だ、もう時間ねぇぞ」


「俺もちょい無理してやってるからもう時間がねぇ」


「これが最後の攻防だ、気張れよ」


 そして先に俺は飛び出して行く。

 少し思いついたもんやってみっか!

 俺はキリサメに切り掛かるが、いつも通りキリサメには簡単に躱される。

 んじゃ試しに……!


「おっ……!」


 俺は木刀を収納し拳で殴りかかった。

 だがキリサメは完全に間合いを理解し、ギリギリで避けられる。

 隙をつかれ腹を殴られその勢いのまま俺は飛ばされるが何とか体勢を立て直して再度突撃する。

 そして俺は木刀を振り下ろす。

 だがキリサメとはかなりの距離が空いていた。


 キリサメはどういうわけか、俺の動きの先を読んで躱してるから俺が攻撃を完了する前にすでに動き出している。

 たださっき確認してみたが拳で受ける時はギリギリで避けているのに対し、木刀を避ける時少しだけ剣先と体の間にかなり余裕を持っている。

 もしかしたら……




「武器、見えねぇんじゃねぇか?」





「───ッ!」



 その瞬間、キリサメに木刀は飛来する。

 俺の動きは見えてるから投げるモーションしたら速攻でバレるからな、振る感じで投げさせてもらった!

 だが風を切る音だけでその攻撃に反応し右手でそれを掴み取る。

 この隙に殴ってもどうせ対応される、だから片手は残したんだ。


「でもこっちも、武器が見えねえっつう有利は捨てねぇよ!」


 俺は掴まれているそれに触れ"収納"した。

 再度俺は右手に排出、振り下ろした。

 だが流石キリサメ、片手でそれを受け止める。

 そりゃ慎警戒しなきゃだから片手は空けなきゃだよな?

 だったらよ……


「"15%"!」


「重っ──!」


「誰も、自分で上げられないとは言ってねぇ!」


 そして上がった力を使い、全力でキリサメを押し込む。

 そしてキリサメは、両手でそれを受け止めた。


「来いよ神童!」


 そしてその好機、すでにキリサメの後ろに回っていた慎は気配を消して突撃。

 そのガラ空きの背中に向かって木刀を突いた。

 そしてそれが当たるその瞬間、キリサメはニヤリと微笑む。


「"身体強化"」


 キリサメはさっきまで両手で受けてたのを止め、片手で俺の木刀を受け止める。

 そして空いたもう片方で慎の突きを軽々と止める。


「惜しかったなお前ら、でもいい線言ってた──」


「言っただろキリサメ、武器見えてねぇだろって」


「何い゙っ!」


 そして俺はキリサメにその一撃を当てた。

 木刀はちゃんと受け止めていた、今も持っているというのに当たるその攻撃にキリサメは驚き目を開けた。


「ぷっ!んだよこれ?!」


 そう、その木刀は"剣先が曲がっていた"のだ。

 あの受け止めた瞬間、俺は木刀に気を流し剣の先を焼き曲げたのだ。

 そのヘンテコな様子にキリサメは笑いを堪えられず、慎は少し呆れていた。


「お前、当てろとは言ったが……

 まさかそんな、面白いこと思いつくな」


「何だったんだ俺たちの頑張り」


「まぁいいじゃねぇか当てたんだ──」


 "16%"

 っば……

 その瞬間、それが抑えきれず暴走を始めようとしていた。

 その様子に慎は飛びつこうと走り出すがキリサメは慎を止めた。


「何で止めて……!」


「信じろ、あいつはやる」


 溢れ出る、全部……!

 抑え切る絶対に。

 またみんなを、慎を傷つけねぇ……

 もう終わりだ、だから黙って寝てやがれ!


 そしてその闇は静かに、俺の体内に消えていった。

 俺は黒髪に戻り体も元に戻っていった。

 15%超えると全力で抑えにかからないとキツイな。

 やっぱ15%までが神気の操作と意識を抑えんのを両立できるラインだな。

 そんなことを考えているとキリサメと慎が近づいてきた。


「ちゃんと、抑えられたな」


「あぁ……ギリギリだったけどな」


 俺がそういうと慎がとても心配そうな顔で俺を見つめていることに気づいた。

 ……あっそうだ。


「慎……」


「……どうした?」


 何で俺はあの時、躊躇ったのか……

 多分言う言葉が違ったんだな。

 謝罪ではなく……


「ありがとな。

 前暴走した時止めてくれて」


 俺がそう言うと慎は少し固まった。

 だが安心したように笑顔になり……


「別に大丈夫だぜ、なんせお前は俺の弟弟子なんだからよ!」


 慎はそう言った。

 そしてそんな言葉を交わし終わった後、キリサメはニヤけながら口を開いた。


「いや〜お前らよかったな、実は出来なかったら罰ゲーム考えてたぜ」


 俺と慎はその言葉に驚くと共に安堵のため息をついた。


「マジでよくやった慎二。

 罰ゲームなくてよかったぜ」


「それはいいんだが、その罰ゲームは何だったんだ?」


「そりゃあな……」


 その言葉に俺たちは思わず息を呑む。

 そしてキリサメは……



「今日のおかずを俺に献上することだ」



 その言葉に俺と慎は顔を見合わせる。

 そしてその空間は笑いに包まれた。


「慎とキリサメ……思考回路同じすぎだろ」


「確かにな!やべぇ腹ちぎれる」


「そ、そんな笑うことだったか?」


 困惑するキリサメを置いて俺たちは数分間笑い続けるのだった。

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