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63話 反転


「『不倶戴天』」


 そして俺は刀を振り下ろし、岩に刃が入った瞬間爆発させる。

 そして岩は爆散し、土煙が舞う。


「タイミング遅らせるのはできるようになったな。

 んじゃこっからは神気の修行入るぞ」


「そうは言ってもどうやりゃいいんだよ?」


 俺たちは神気を出す方法を模索し始めた。

 トリガーは感情の昂り、たけど俺はそれに慣れちまった。

 他に方法探すよかこれを詰めていったほうがいいんじゃねぇか?


「今まではどんな感情で神気出してきたんだ?」


「怒りとかで出してきたな。

 クソムカつくこと思い出して」


「感情の昂りってんなら、もしかしたら怒り以外の感情でも神気出せんじゃねぇのか?」


 確かに出せるかもしれないと思い、感情の昂りを感じた時のことを思い出していった。

 あのクソオークと初めて戦った時、拘束から無理やり抜け出してそんで傷も治ってたよな。

 他にもあの虎の亜人にボコられてた時、勝手に足が再生してたしな。

 あの時確か俺は"生きたい"って思ってたな……


 これ以外にもあるかもと思い、俺はこの世界に来た時を少し振り返ってみた。

 俺はこの世界に来て、アーシャさんにこの世界の話をされた後ルナさんと俺のスキルの開発を進めてた。


 そんで俺は頭痛のことでアリシア帝国に行くってなって……

 道中に柳に襲われたよな。

 あいつが頭痛を呪いだのかなんとか言い出して……

 そんで、俺も頭痛を起こしてた。

 あれ……何で俺、頭痛治ったんだ?

 確か、ノアの部屋に入ってから急に良くなった。

 何で俺忘れてたんだ?いや色んなことあったせいで頭から抜けてたのか……


 そんなことより、柳に襲われてそこで俺はかなり怒ってなかったか?

 もしかしてそこでも俺は神気を……

 そして俺は一つの出来事を思い出した。

 何で俺、あの時一人称変わったんだ?

 俺だけじゃない、柳も変わってた……

 それももしかして神気が関係して──


「慎二、なんか思い出したか?」


「あっ……あぁ。

 俺、怒り以外にも生きたいとかそんなこと思って出したことがあった」


「なるほど、慎の仮説が当たったな。

 怒り以外の感情でも出せることが確定したな。

 お前他にも神気出せそうな思い出あるか?」


 キリサメのその言葉で俺は過去、悲しかったことや苦しかった出来事を思い出していく。

 柳にいじめられてたこととか、藤宮に怒鳴って悲しませたこととかそんくらいしかないかもな……

 記憶喪失だから俺、人生経験まじでないんだな。


「2つくらいしかねぇな」


「そうか……あるにはあるんだな。

 だったら神気の修行はあんましない方がいいな、それで慣れちまったら元も子もねぇ」


「まぁ確かにそうだな……

 やるのはぶっつけ本番しかねぇってことか」


「そういうことになんな。

 だったらこっからはずっと気の修行に入るぞ。

 こっからは応用編だ、慎もできるやつだから気張れよ」


 その言葉に俺たちは頷き、修行を開始する。

 キリサメは俺たちにこれから何をするのかを話していく。


「雫から少し聞いてる話かもだが、こっからすんのは戦闘中に相手の気を読む訓練だ」


「あぁ聞いたぜ。

 それで動き出しのタイミングが何となくわかるとか」


「それはただの初級編だ。

 こっからやるのは中級、それをより鮮明に捉える訓練だ」


「へぇ、だったら上級編はどうなんだ?」


 キリサメは「だったら見せた方が早い」と言い、木刀を用意して俺たちに渡す。

 これで、何しろってんだ?


「よし、お前ら二人で本気で俺に切り掛かってこい。

 俺は目を瞑ってるからよ、俺に攻撃当ててみろ」


 俺たちはその言葉に驚き、それは無茶だと思った。

 だが前、亜人の大軍を一瞬で片付けたキリサメならできるかもしれないと同時に思った。

 俺と慎は顔を見合わせ、本気でキリサメに挑むことに決めた。


「んじゃ行くぞキリサメ!」


「師匠、本気で行くぜ」


「あぁさっさと来い」


 俺と慎は同時にキリサメに向かって突撃する。

 そして俺が最初に切り掛かる。

 だがキリサメは目を閉じているというのに、その攻撃を難なく避けキリサメの横を抜ける中、背中を押し俺を遠ざける。

 そして慎は完全に後ろを取り、キリサメの頭を狙い横薙ぎをしようと木刀を抜く。

 キリサメはそれを難なく避けた、だがその避け方はとても奇妙だった。


 木刀を抜いた瞬間からキリサメはすでにその攻撃を避けていた。

 そこに来るのが、未来を見ているかのように……

 俺もただ眺めているだけじゃない、キリサメと離れた距離を俺はそのうちに縮め、そして顔面狙って突きをした。


「おっ前ら顔ばっか狙ってくんじゃねぇよ」


 あれ消えっ──!

 そして腹部に強い痛みと衝撃が走る。

 その痛みにより肺に残っていた空気が一気に漏れ出る。

 これまさか、掌底か!

 その勢いに抗えず俺は後ろに飛んでいく。

 今のは雫さんがやってた気を隠して移動するやつか。

 消えたことはわかった、雫さんほどキリサメは隠せてないな。


「ガラ空きだぜ師匠!」


 慎はそう言い、キリサメに突撃する。

 あれ……あいつ!


「話してくんじゃねぇよ、目瞑ってるからよ意味ねぇだろが」


 そしてキリサメはその攻撃を避け、俺に攻撃したように掌底を喰らわせる。


「──ッ!こりゃあ水?!」


 慎あいつ声出して行くタイミングをバラして耳に注意を向かせた隙に水のダミー作りやがった。

 キリサメは目を瞑り、気で反応してるからそれを逆手に……

 でもそれだけで感知は潜り抜けない、あいつまさか気を隠す技術を今──!


「確かに神童だったなお前」


 そして慎は完全に虚を突き、その木刀を振り抜いた。


「やんじゃねぇかよ慎」


 だがその攻撃は空を切った。

 慎が攻撃した場所にキリサメはもういなかった。

 そして慎は振り向こうとしたが、間に合わず掌底を腹に喰らい飛ばされ尻餅をつく。

 そして、どこか嬉しそうな表情で慎はキリサメを見つめた。


「ダメだろ慎、攻撃する時でも気配消すのやめちゃよ」


「いつ、移動したんだ師匠?

 まったく見えなかった!」


「あぁ、そいつは俺の【固有スキル】のおかげだ。

 よく使わせたな慎、やんじゃねぇか」


 そう言われた慎は嬉しそうな表情を浮かべる。

 そしてキリサメは再度俺たちに挑発めいた表情を浮かべ……


「でももう終わりか?お前ら」


「まだまだ。

 絶対に師匠から一本取ってやる」


「同感だ、絶対に一本くら──」



 その瞬間、蛇口は撥ねられた。



 そして神気が内から溢れ出そうになるのを感じた。

 俺はその時、前暴走した時にキリサメがきっかけで暴走したことを思い出した。

 つまり、今回もキリサメがきっかけで……!

 あの一瞬、わずかな感情の昂りを感じた。

 キリサメのせいで蛇口みたいなのが緩くなってたのか!

 戻せ、蛇口を閉めなきゃ……また!



 いや……違うだろ。

 幸い前ほど強く神気は暴れてない、だったらやらなきゃいつやるんだ?!

 支配しろ、今この瞬間──!

 お前もキリサメに一泡吹かせたいんだろ?

 だったら今回は、俺に力を貸しやがれ!


 その時、全身から黒い何かが吹き出して俺の体を覆って行く。

 筋肉は膨れ上がり、前よりも羽は大きくなり、全身に黒い何かを纏わせる。

 それを見た慎は驚き、キリサメは口角を釣り上げる。


「お前、それ!」


「いいじゃねぇか、来てみろ!」


 そして頭に一つの単語がよぎって行く。

 何だこの単語?これ言えってことか?

 しゃあねぇだったら少しは俺の言うこと聞きやがれよ!







       「"反転率12%"」









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