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61話 慣れ


 このピエロのマークについてはよくわからない。

 だがこれは俺がつけたのではなく、誰かが俺の部屋に入りつけた……

 タシテスの刺客が来たのか?

 いや、だったら俺が殺されるか連れ去られてないとおかしい……慎とかキリサメに聞いてみるか。


 俺は部屋を出た後、リビングへ向かうとそこには雫さんとキリサメがいた。

 雫さんは厨房で朝飯の準備をしており、キリサメは座って茶を飲んでいた。

 キリサメは俺に気づきお前も座れと促してくる。

 あっそうだ、もうすぐキリサメの誕生日なんだよな。

 二週間切ってるから何あげればいいのか考えねぇと……

 俺はキリサメの近くに座る。


「今日は結構早起きなんだな、いつもは誰かに起こしてもらってるじゃねぇか?」


「何かいつもより眠りが浅かったんだ……」


 眠りが浅い、その言葉で昨日の出来事を思い出した。

 あっそうだ俺、夜誰かが俺に向かって何か話してたんだ……そいつがあのピエロのマークを残していった。

 俺はそいつの正体を探るため、キリサメにマークのことと昨日、誰かが来たことを話した。

 それを聞いたキリサメはどこか納得した様子を見せた。


「昨日確か誰かが街に入ってきた気配が一瞬したんだ。

 そいつ気になって夜な夜な街の中歩き回ったんだぜ昨日」


「じゃあその街に入ってきた誰かが、俺の部屋にマークを残した……

 何がしたかったんだろうな」


 そいつの目的がさっぱり分からず、俺は思わずため息をついた。

 そうこうしていると慎やリリ、ルルがリビングへやってきた。

 リビングにいる俺を見るなりみんな驚いた様子を見せた。

 とりあえず俺は昨日誰かが家に入ってきたかもしれないということを話した。


「俺、その時ずっと寝てたからよくわかんねぇわ。

 てかピエロのマーク残していくとかどういうやつだよそれ」


「悪いけど私とルルもわかんなかった」


 その結果に俺が肩を落としていると出来たご飯を雫さんが机に運んでいく。

 俺はダメ元で雫さんにも聞いてみた。


「あぁ、あの小娘の格好したやつかい?」


「雫さん、侵入してきたやつ見たんですか?!」


 俺がそういうと雫さんは首を縦に振る。

 慎たちは置かれたご飯たちを食べ進めていく。

 ご飯を全て並べ終えた雫さんは俺の近くに座り、昨日の出来事について話していく。


「何か気配するなとか思って起きちまってね。

 寝起きでよく覚えてないけど、その不審者が家出るところで鉢合わせてね。

 とっ捕まえようとしたけど一瞬で霧みたいになって消えていったよ」


 話しながら、俺は並べられているご飯たちをかきこんで行く。

 けど雫さんの話を聞くには目撃したのは俺の部屋に入った後っぽいもんな……

 わざわざ俺の部屋に入ってピエロマーク書いた目的は分からずじまいか。


 でもなんでそいつは自分がいたことをバラすようなマネを何でそいつはしたんだ……?

 そもそも本当に、何か目的があってピエロのマークを書いたのか?

 もしかしたら、ただの遊び心なんていう可能性も……

 いや、考えすぎだな。


 まぁでもそいつについては少しはわかったことはある。

 霧みたいになって消えたってことは恐らく【固有スキル】によるものだろう。

 雫さんの話的に性別は女……?

 【固有スキル】持ってるってことは転移者なの──

 てか、キリサメって……【固有スキル】持ってなかったっけか?

 俺は急いでそのことについて聞いてみた。


「俺が【固有スキル】持ってる理由?

 別に普通だよ、ただ死にかけただけだ」


「死にかけたって、それでどうして手に入れて……」


「お前だって持ってんだろうが、別に俺が持っててもおかしく──

 いや、多分今すれ違い起きてんな。

 一旦お前が思ってること全部言え」


 状況を察したのかキリサメは一度場を落ち着かせた。

 少し深呼吸し落ち着いた後、俺は【固有スキル】は転移者しか貰えないはずなのになぜキリサメは持っているのかについて聞いてみた。

 キリサメは味噌汁を飲み干した後、器を置きため息をついた。


「なるほどな、何となくわかったぜ。

 まぁまず結論から言うが俺は転移者じゃねぇ。

 そして俺の死にかけたら手に入れたって話だな……」


「とりあえず慎二、あんたはご飯食べながら聞きなさい。

 冷めちゃうでしょ」


 俺は雫さんの言う通りにして、魚をおかずに白米を食べ進めていく。


「この世界にも元々【固有スキル】ってものは存在してた。

 そいつは俺らの共通認識じゃ死地に立ち、今際の際に立つと手に入れることができる……って言われてた。

 俺が持ってんのはそういうことだ」


「んじゃあ何で転移者は持ってんだ?」


「【固有スキル】は元々、誰にでも備わってるもんだ。

 多分お前が持ってんのはこの世界に来た時に無理やり解放させられたんだろうな。

 【固有スキル】は持ち主の個性が色濃く受け継がれる……

 これで満足か?」


 首を縦に振り、ご飯を食べていく。

 だったら慎もスキル持ってるのだろうか、と思い慎の方を向く。

 そいつはなぜ俺が慎を見たのかを理解したようで、口に含んであるご飯を飲み込んだ。


「言っとくが俺は持ってねぇぞ」


 確かに、慎の場合俺とはかなり違う感じで来たからな。

 俺と違う部分があってもおかしくねぇな……


「とりあえず飯食い終わったら修行始めんぞ」


「「は〜い」」



***

 

 俺と慎、キリサメは修行をするため庭に来ていた。

 ルルは分からないが雫さんとリリは料理の練習をするらしく姿はなかった。


「とりあえず慎二、一回神気出してみろ」


「了解!」


 そして俺は意識を集中させる。

 そしてもう一度思い出す、藤宮が殺されるところを見た時怒りを……


「あれ……?」


「っぱり出来なくなってたか」


 いつも通りにしたはずなのに、前のように神気が出てくることはなかった。

 一体、どうして……?


「まぁ予想はできてたことだ。

 お前の鍵は感情の起伏、それもとても強いもんだ。

 何回もやっちまうと回数を経るごとに難易度は上がっていく」


 確かに、俺は2回とも藤宮のことを思い出していた。

 その怒りに少し慣れちまったってことなのか?

 そうするとキリサメは頭をポリポリとかく。


「だったら『天絶』との発動時間の短縮、『不倶戴天』の火力の強化を中心に、神気を出す他の方法を探したり感情を頑張って昂らせるしかねぇな」


「……わかった」


「まぁ元気出せよ慎二、『天絶』と『不倶戴天』でもあのオーガ倒せそうだったんだろ?

 今神気やるよかよっぽど効率いいと思うぜ」


 確かに……まだ暴走のリスクが完全になくなったわけじゃないしな。

 俺は気を取り直して、修行を始めた。


「てか発動時間の短縮っていうが具体的に何やんだよ?」


「ん〜、逆に聞くが何でお前はそんなに時間がかかるんだ?」


「自分の体強化するんじゃねぇからイメージしずらいから」


「それを解決するってのがお前の課題だ。

 今回も自分で考えて何とかしろ、とりあえず俺は終わるまで家の中でゆっくりさせてもらうわ〜」


 そんな呑気なことを言いながら去っていくキリサメを俺は呼び止める。


「いや解決するって、せめてヒントくらい……!」


「じゃあ一つだけだ、"知れ"。

 お前がやるのはそれだけだ、そうすりゃもうちょいマシになると思うぜ」


 知れ、何を知ればいいのか分からなかった俺はただ呆然と庭に立ち尽くしていた。


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