60話 合成
そして俺はルルの助言でその姿に変貌していた。
「8%」
これだったらギリギリ、神気を操作できる。
やってみるか……?
「よく出来てんじゃねぇか慎二。
神気、操作できそうか?」
「キリサメ……
あぁ今やろうとしてたとこだ」
俺がそう言っていると慎が横から嬉しそうな顔で近づいてくる。
「慎二、庭の時はそんな制御できてなかったのにどうやったんだ?」
「……ルルのおかげだよ」
俺はそう言い、慎にどうやって今制御しているのかを話していった。
「俺は今まで、この力を完璧に抑えようとしていた。
でも完璧じゃなくてもいいんだ、急に跳ね上がって暴走するのを抑えるだけでいい。
だから時間経過で徐々にパーセンテージが上がっていくけどな。
俺の許容範囲はざっくり15%ちょっと、それを超えると抑えきれずに暴走する。
だからゆとりを持って15よりちょい下くらいに調整した」
「だから8%ってことか……」
「あぁ、操作する技術ならさんざ身体強化の倍率でやってきたからな」
俺がそう説明していると体から溢れ出る黒い力が少し増し、少し筋肉が膨れ上がる。
9%ってとこか、上がっていくに連れ素の身体能力も向上すんのか。
このまま上がってくと暴走すんな、今は一旦いいか……
俺はそう思い、力を抜いていくとその纏っている力は散っていき髪色は黒に戻っていった。
「それ、どうやってしまってんだ?」
「あぁ結構簡単だぜ。
俺の中から溢れ出る力だからその蛇口を閉める感覚でやると消えていく」
俺がそう言うと慎は感心した様子を見せた。
そうしていると慎は思い出したように俺を見つめた。
「あってかお前……」
「どうかしたか?」
何か言おうとしていたが、首を振ると急に慎は微笑みを見せた。
「いや、調子戻ってきたって思っただけだ」
こいつは、気づいてくれてたのか……
やっぱりいい奴だなと思っているとキリサメが亜人のところに行ったことを思い出しキリサメの方を向く。
「そういえばキリサメ、亜人のところ行って俺の決闘の話したんだよな?
いつなんだ?」
「あぁそうだな。
今日から3日後、それがお前が戦う日だ」
その言葉に俺は思わず息を呑んだ。
やっぱりあんま時間ねぇんだな……もっと頑張んないと。
そう思っているとキリサメは慎に向かって口を開く。
「とりあえず今日の修行はここまでだ、慎は風呂入ってこい。
それと慎二、俺の部屋こい少し話がある」
将棋をするのではなく、話があるといういつもとは違う様子に俺に緊張が走った。
慎は少し不満そうな様子を見せたが、渋々家の中へ戻っていき俺とキリサメは部屋へ向かった。
***
「結局将棋すんのかよ」
「まぁいいじゃねぇか。
話すだけじゃ少し寂しいだろ?」
そして俺たちは将棋を指していった。
俺がその話について気になっていると、その様子を察したのかキリサメはそのことについて話していく。
「話ってのはな慎二、お前が3日後戦う相手についての話だ」
「……タシテスって奴じゃねぇのか?」
その問いにキリサメは首を振った。
「とりあえずそれについて話す前に、俺があいつらのところで見たものについてを説明してった方がいいか……」
そしてキリサメは話していく。
それは話だけではとても、信じられないような内容だった。
「そこでは、モンスターの量産が行われてた」
「──ッ!?
モンスターの、量産?
何言って……!」
俺の困惑を無視するように、キリサメは淡々と話を続けていく。
「ゴブリンや亜人、数々のモンスターたちがカプセルの中に入れられてた」
「そんなんで……信じられるわけ──!」
「じゃあ少し聞きたいが、お前この階層に来てモンスターを倒した時、レベルどれくらいだったか覚えてるか?」
「……確か100ちょっとだった」
俺はその質問に困惑しながら答えた。
そしてキリサメは淡々と静かに話していく。
「なるほどな……
お前がいたところ、あそこは自由域って言ってな俺たちエリアボスが支配してない領域。
恐らくタシテスはそこで量産したモンスターたちを放っていたんだろう。
そうじゃなきゃそのレベルでこの階層のモンスターを倒せるわけねぇ」
その言葉に、俺は少しだけ共感してしまった。
俺のレベルは100ちょっとの状態でも、この階層にいるゴブリンを……俺は倒した。
この街に来てから色んな人を見たが、多分全員俺が前戦ったハイオークレベルで強い。
恐らく通常この階層のレベルはハイオークで普通くらいなのだろう。
なのにあんな弱いモンスターがいるなんて、ありえない……
俺はその現実を受け入れるしかなかった。
「それが俺に言いたかったこと、なのか?」
「いや違う、ここからが本題だ。
言っただろうお前の戦う相手の話だ」
ここからが本題……
俺はその言葉に思わず身構えてしまった。
「俺は見ただけだから一概には言えない。
だがあいつらの盗み聞き話から考えれば多分俺が見た奴とお前は戦う」
「キリサメは、あんたは何を……?」
そしてキリサメはその見たものの正体を話す。
「オーク──」
「……は?ただのオークがどうか──」
「と……亜人の、合成獣だ」
合成獣、俺はその言葉を受け入れるのに時間がかかった。
「俺が見たやつは、肌はオークのような緑。
太く育った筋肉。
肘部分に鋭い鎌が生えていて、昆虫のような目をしていた。
恐らくカマキリの亜人とオークを合わせたんだろう」
「……それが俺の戦う、相手ってことか」
そして俺は止まっていた将棋を再開し、駒を指していく。
オークなら倒したことはある、だが合成獣とやらは分からない。
何が目的でそんなものをタシテスは作ってるんだ?
「というか、何でタシテスはそんな技術を持ってるんだ?」
「そいつについては少しばかり思い当たる節がある。
これはお前にとっては朗報かもな。
その技術を持っている人物を俺は知っている、だけどなそいつはダンジョンの外にいるはずなんだよ。
それにあいつらの話にも外と繋がっているような発言もあった。
つまりタシテスが外の人間たちと繋がってる可能性がほぼ確定したってことだ」
外と繋がっている……
前までは可能性が高いってだけだったが、今回でほぼ確定したという状況に俺は思わず拳を握りしめた。
「さてとりあえず王手、詰みだ」
「あっ、いつの間に?!」
その様子にキリサメは笑い声を上げる。
その後、睡魔が襲れ俺は自室へ戻り眠りについた。
***
『へぇ、すげぇちゃんと生きてたんだな』
謎の声に俺は目を覚まし、寝起きのせいか視界が掠れて誰がいるのかよく見えなかった。
『あっやべ起きちゃった、悪いな伊藤。
まだ寝ててくれ』
そして俺は眠りに落ちていった。
***
俺はその部屋で目を覚ました。
今日は誰かが呼びに来る前に起きれたな。
俺はそんなことを思い目を擦りながら体を起こす。
その時、目の前の壁に謎のマークがあるのを見つけた。
あ゙?何だこれ前までなかったのに……よく見えねぇ。
俺は何度か瞬きをして、そのマークを確認した。
このマーク、これって……
「"ピエロ"?」
俺はその目の前に書かれているピエロのマークに首を傾げるのだった。




