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58話 再臨


「さて、神気が目覚めるきっかけがわかったことだしさっさとやってみな」


 いきなりかよ?!と思ったがそんなことしている暇はない。

 俺は一息つき、目を瞑り集中する。

 感情の起伏……思い出せ俺が1番感情を表に出した、感じた瞬間を──!


 そして俺の脳内に一つの記憶が浮かび上がる。

 それは藤宮が殺され、泣いている姿だった……

 その時だった、確かに感じた俺の中から何かが迫り上がってくる感覚。


 あっこれ、やべぇ……

 それは川が氾濫した時のように、俺の意識をすごい勢いで飲み込んでいく。

 俺は飲まれないように必死で耐え続けた。


「これが……神気の力」


「こいつは中々、どす黒いもん持ってるじゃないか……」


 自分の姿を確認すると、黒い何かが少し体から溢れ出し毛先が少しだけ白く変わっていた。


「何で俺……髪の色変わってんだ……?」


「ほら慎二あれだろ?

 スーパー何とか人と同じだぜ多分」


「そのスーパーなんとかは知らないが、そうなる原因は確実にその溢れ出る力が原因だね。

 さてどうだい、神気とやら扱えそうかい?」


 雫さんの問いに俺は首を横に振る。

 この黒い力かよくわからないが、気を抜くと一瞬で抑えてるもんが溢れ出ちまう。

 キリサメが言ってた翼みたいなのは恐らくこの先にある。

 俺はまだ扉を少しだけ開けただけ。

 この黒い力が進行するパーセンテージ的なものを抑えるだけで今は精一杯、その神気とやらを操るなんてできるわけがなかった。


「そうかい。

 だけどね見る限りその状態になっただけでかなり身体能力が向上してるように見えるね。

 まぁものは試し、一回来てみなさい」


「何……言って……

 今、あんま動け──」


「んじゃ私から行くよ」


 その時、雫さんは俺に突撃。

 物凄いスピードで飛来した余波でさっき雫さんが立っていた地面は抉れ、土埃が舞う。

 その瞬間、雫さんはガラ空きの俺の鳩尾に掌底を食らわせる。


「ウッ……」


 そのスピードのせいでかなりの威力を持っていたその掌底は俺を動かすには十分すぎるものだった。

 俺はその攻撃で5mほど飛び、立っていた。

 だが不思議とその攻撃はあまり効果がなかった。


「硬ったいね〜、攻撃したつもりがこっちがもらっちまったよ」


 硬い……確か前キリサメは黒い部分は硬くなるとか言ってたっけ?

 気を抜いたせいか、抑えていたものが少し溢れ体のうちから闇が吐き出され俺の体に纏われる。

 クッソ……少し気を抜いたらすぐこれだ。


「へぇしかもこれ以上があるときた。

 慎二、あんた中々難しい代物掴まされたじゃないの」


「さっすがに……これ以上はやばいっです……

 もうこれ以上はやばあ゙ぁぁ」


 その時だった。

 急に内にある力が、波打ち始めた。

 なんだ……!急に暴れ始めてやがった?!


『……メ』


 あ゙?何だ今の声……


『……サメ、キリサメ』

 

 何だ──

 その時、抑えていた何かが決壊しその濁流に俺の意識は流されていった。


「どうしたんだよ、慎二急に固まっ──」


「──ッ!

 どきな慎!」


 雫はそう言い慎二に近づこうとする慎の襟を引っ張った瞬間……


「ア゙ア゙ア゙ァァァ」


 その時、慎二の内から先ほどとは比べものにならないほどの黒い力が溢れ始める。

 そして両方の肩に翼を生やし、髪は完璧に白く染まっていた。


「オ゙ア゙ァァ?」


「悪いね、慎二……

 少し本気で行くよ」


 風が巻き起こり土埃が舞う中、周りに転がる慎を横目に雫は慎二にそう告げる。


「雫さん、俺も戦います……

 あいつは俺の弟弟子だ、兄弟子も止めてやんねぇとだろ?」


「はっ!その意気だよ慎。

 さぁさっさと起こすとしようじゃないか」


 その時、ルルが二人に木刀を渡し二人は構える。


「ア゙ハァァ」


 その声と共に両者共に走り出す。

 暴走状態の慎二は足を壊しながら疾走、物凄い勢いで雫を狙う。

 押し合い、ぶつかり合う衝撃で風が靡き、木々が揺れ動く。

 そこに割って入るは神童、雫の横から現れ慎二の肋を打つ。

 その隙を雫は見逃さず木刀に気を込める。


「久しいがやろうじゃないか『風の太刀』」


 そして光波が慎二を襲い、腕を切り裂き飛ばす。

 うっわやったよ雫さん……

 その様子に少し慎は引いていた。

 だがその傷を一瞬で慎二は神気により再生、体勢を立て直し再度突撃する。


 雫が慎二の攻撃を受け、そして慎がその隙を突いていく。

 音をも超えるその超速戦闘に慎は持ち前のセンスだけで何とか喰らい付いていた。


「てかさっきの『風の太刀』ってなんすか?!」


「あぁ?!んなもんただの『風刃』だよ。

 キリサメとは違う流派でやってたから名前が違うだけだ……よ!」


 そんな話をしながら強烈な一撃を慎二の腹部に叩き込み、慎二は顔を少し顰めながら壁に向かって飛んでいき物凄い音ともに家を囲む壁に激突する。

 だが、慎二は一瞬でその傷を再生立ち上がる。


「これじゃ埒が明かないね、大丈夫かい慎?」


「はぁはぁ……大、丈夫です」


 私は大丈夫だが慎の限界がそろそろ近いね。

 そりゃこのスピードに着いてこようと神経すり減らしてんだ。

 『布都御魂』あったらもうちょいマシなんだけどね、どうしたもんか……


「オメェら大変そうじゃねぇの?」


 その時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえる。

 雫はため息をつきながら後ろに振り向くとそこにはキリサメがいた。


「師匠……お帰り」


「あんた……帰ってきてんならさっさ眠らせてやりな!」


「分かりましたよ」


 そして通り過ぎ様、疲労で膝をついている慎の頭を撫でる。


「よく着いてきてたな慎、ゆっくりしてろ」


「師匠……頼んだ」


 そしてキリサメは慎二に向かって歩き出す。

 キリサメを目にした途端、慎二はキリサメだけしか見ていなかった。

 ご馳走様を待っていた犬のように、嬉々とした表情でキリサメと向かい合う。


「また同じ展開とかそろそろ飽きてきたぜ。

 こいよ抜け殻野郎、ねんねの時間だ」


 そしてキリサメは刀を抜く。

 その瞬間、一瞬で空気は変わる。

 重く、冷たくその様子は歴戦の猛者そのものだった。


「ア゙ア゙ア゙ア゙ァァァ」


 その慟哭と共に慎二はキリサメに向かって飛来、一瞬でキリサメとの距離をゼロにする。


「誰が、一人でやるって言ったよ」


 その瞬間、ルルが地面から水でできた鎖が出現させ慎二の動きを一瞬止める。

 そしてキリサメはその刀を思い切り叩き込む。

 そいつは意識を失っていった。


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