57話 化かし合い
「遅れてすまないね。
何のようなんだい?」
キリサメは地下室から戻って来た後、応接室で待っているとタシテスが汗を流しながら扉を開ける。
キリサメはまずタシテスに席に座るよう促し、タシテスはそれを受け入れ椅子に座った。
「お前、何でうちの街に亜人たちを送ったんだ?
お前ならあんなんで俺を殺せねぇことくらい分かってるはずだろ?」
「あぁあれはすまなかったね。
私は意外と部下に好かれていてね、あいつらに目的言ったら勝手に先走っちまったのさ」
「……なるほどな」
良い言い訳持って来やがった。
これなら自分は関係ないと言い張れるし、あの襲って来た亜人たちはタシテスの命令で来たとは明言してねぇ……
けど……
「お前さっきまで外出してたらしいじゃねぇの。
何やってたんだよ?」
「アンタには、関係のないことだよ」
ここ、だな……
こいつやっぱりなんか隠してやがる、街を襲わせたのは大方さっきの外出が関係してそうだ。
だがここまで言っているが一向にポーカーフェイスを崩そうとしない、もう少しわかりやすい反応して欲しいもんだ。
タシテスは急いで話題を変えたいらしいのか話し出す。
「さっさと本題に入ろうじゃないか。
アンタ伊藤慎二の決闘の話をしに来たんだろ?」
「へぇ……何でテメェがんなこと知ってんだよ?」
キリサメは核心をついたようにそういうとタシテスは焦った様子を見せ始めた。
「そりゃあ、アンタがここに来ることなんて滅多にないだろう。
考えれば当然のことだろう」
「まぁ確かにな……」
鎌かけは結構上手くいったじゃねぇか。
キリサメは満足した様子で日程の話をし始めた。
「私が提示する期限は3日、それ以上はあげられないよ」
タシテスはそう言いながら3本、指を立てる。
あのナマケモノ野郎が3日とか何とか言ってやがったな。
俺の見た"あれ"を慎二にぶつける算段ってことか……
「あぁ分かったぜ。
話は終わりだ、さっさと帰らせてもらうぜ」
「あぁさっさと帰りな」
玄関まで行ってくれるようでキリサメが立つと同時にタシテスも立ち上がる。
まぁ監視しておきたいよな……
キリサメは足早に玄関に向かうと、コアラの亜人がおりキリサメに頭を下げる。
「んじゃあな〜」
キリサメは手を振り、その家を去っていった。
そうするとナマケモノが現れ、タシテスの近くに立った。
「ちゃんと行きましたね〜」
そう言った途端タシテスは思い切りため息をつきながら下を向いた。
「クッッソ、やられたね……
あいつに地下の部屋を見られちまった。
多分、さっきのあんたとの会話も聞かれてるよ」
「へぇ、そりゃどうしてすっか?」
その時、ナマケモノに向かってタシテスは3本の指を見せつける。
ナマケモノはその行動の意図がわからず首を傾げる。
「3日、あいつそれに何の疑問も抱いちゃいなかったんだよ」
「あぁ、なるほど……
疑問に思いますもんね、3日なんて。
ただでさえ相手はキリサメと来た、こちらの事情を知っていなかったら問いただして来そうっすもんね。
さっきもタシテスさん、めっちゃ嵌められてましたよね〜」
その発言の瞬間、タシテスはナマケモノに睨みをきかせる。
口を滑らせたことに気づき思わず口を覆う。
「アンタ、いつから聞いてたんだい?」
「……自分が部下に好かれてるとか言ってたところから、っすね」
「何でアンタ聞いてんだよ……
てかどこにいたんだい、気配は一ミリもしなかったよ」
タシテスのその問いにナマケモノは飄々とした様子で答える。
「"隣"で……っすかね」
タシテスを指差しカッコつけた様子でそう嘯くそいつにタシテスはため息をつく。
「食えないやつだよまったく……」
「褒め言葉として受け取っときますね〜」
タシテスはその底知れない様子に警戒を覚えていた。
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「さて、とりあえず帰るとしようかね」
キリサメはとりあえず亜人の街を離れた後、追っ手がいないのを確認してスキルを使い帰ろうとしていた瞬間──
「おっと!危ねぇじゃねぇか」
後ろから何かが飛来する。
キリサメはそれを難なく避けて姿を確認する。
そいつはナイフを片手に持ち、ゴブリンの姿をしていた。
「オメェ、まさかさっきの……」
その時、ゴブリンが一瞬で姿を消した。
へぇ……気配がさぐれねぇ雫みたいな気配を消してる感じでもねぇな。
「けど、浅ぇよ」
その時、キリサメは後ろに向かって鞘に収めたままで刀を振り抜く。
それは空を切り、手応えがなかった……筈だった。
「ビンゴだな」
そして目の前に横たわるゴブリンが急に現れる。
ゴブリンは腹を抑えながら悶えている。
「いいスキルじゃねぇか、大事にしろよ」
キリサメがゴブリンにそう言うとゴブリンはすぐに姿を消した。
また来るのか?
キリサメは再度警戒をして刀を構える。
いや、これは……
「逃げたな、あいつ」
キリサメはそれなら勘付く。
追うか?俺ならギリ追いつきそうだが……
キリサメは刀を抜き、スキルを発動しようとした。
「はぁ……しゃあねぇ見逃してやるか。
でもこれで貸し借りなしだぜ」
キリサメはスキルを発動するのを止め街に向かって歩き出した。
さて、慎二はどうなっていることやら。
キリサメは修行の様子を気になっていた……
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「オ゙ア゙ァァ?」
「悪いね、慎二……
少し本気で行くよ」
風が巻き起こり土埃が舞う中、転がっている慎を横目に雫は慎二にそう告げるのだった。




