56話 ナマケモノ
「こいつは少し……やべぇかもな」
キリサメは"それ"から隠れながらそう呟くのだった。
時はキリサメが部屋に通されたところまで遡る。
***
キリサメは部屋に通され、大人しく部屋で待っ──
「てるわけねぇだろ馬鹿野郎が」
キリサメはそう言うと周りに亜人がいないかを気を感じ取る事で確認した。
「っぱり見張りつけてるよな」
廊下に2人、そして部屋についてる窓を見てキリサメを監視している気配が三人……
随分と厳重なこった、つまりそれほど隠したいものがあるってこと……
さて……やるか。
「──ッ!キリサメはどこに?!」
その瞬間キリサメは部屋の中から消え、その状況に監視していた三人は驚愕する。
そしてキリサメを探そうと首を回した瞬間、視界の端がキラリと光る。
それと同時に監視していた三人は地に伏した。
「いっちょ上がり……
けどこんな弱い奴らに見張りをさせるわけ──」
その時だった。
気絶させた三人の体が膨れ上がり、赤く光る。
自爆か……!
そして爆発しかけたその瞬間──
「ふぅ……危なかったじゃねぇか」
その三人の体はどこかへ消えていた。
なるほど、こいつらの体内になんか施しやがったのか……
だがやっぱり引っかかるよなぁ……
もしや本当にタシテスは今いない?
だとしたら俺へもっと人を回さないのも納得がいく。
「まぁだとしたら都合がいいよな」
キリサメは刀を鞘に収める。
「"範囲縮小"」
なるほどこの家ん中の地の下、なんかあんな……
キリサメはそう思うと少し苛立った。
「あいつらの真似事かよ」
それと同時にキリサメはその地下室へ瞬間移動する。
そこは真っ白の正方形の廊下、奥には真っ白の扉のようなものがある。
キリサメはその扉へ歩いていき、確認する。
「これ、ドアノブねぇじゃねぇか」
キリサメは扉の周りを確認すると、扉の横の壁に四角い出っ張りを見つけた。
「ここになんかして扉開けんのか?
めんどくせぇ、飛べばいいか……」
キリサメは刀を抜き差しし、その瞬間扉の奥へと移動した。
そこは真っ暗な空間でガラスの中は緑色の液体に満たされていた。
「こいつは……まさか複製か!」
キリサメは見覚えのあるそれに顔を顰める。
周りを見渡すと同じようなものが多数あり、中にはゴブリンや亜人までもが入っていた。
そう、それはモンスターを複製するための装置だった。
「これがあるってことは……
"あいつ"とタシテスは繋がってるってことか。
仮面の男ってやつも少し引っかかるな」
辺りを見ているともう一つさっきと同じような扉を見つけた。
だがそれはさっきと違い真っ暗の扉だった。
キリサメはもう一度刀を抜き差し、移動しその中に入る。
そして俺は目の前にあるそれに目を見開く。
「こいつは……まさか──!」
その時だった、さっきの白い扉が開く音が聞こえ誰かの話し声が耳に入る。
逃げるか?いやあいつらの話も少し聞きたい、なら……
キリサメはすぐに物陰に隠れ様子を伺った。
そうしていると黒い扉が開き、そこからは二人の亜人が入ってきた。
一人は金髪に狐の耳に尻尾、赤い和服に身を包んでいるタシテス、片方は"ナマケモノ"の姿をしていた。
へぇ、こいつは面白れぇじゃねぇの。
「こいつの調子はどうなんだい?
できる限り早く仕上げて欲しいんだけどね」
「まぁぶっちゃけ今日配属されてきたんであんまわかんないっすけど……
皆んなの話的にあと3日ほどで仕上げられるらしいっす」
その時、タシテスはそのナマケモノを睨みつける。
「3日もかかるのかい?
キリサメと伊藤慎二にあまり時間を与えたくないんだけどね。
ただでさえ伊藤慎二は神気に目覚めつつあるんだ。
というかアンタ、あいつから送られてきた亜人だろ?
何が目的なんだい?」
タシテス、あいつも神気について知ってんのか……
それにあいつらから送られてきたってのも気になる……
そしてそのナマケモノは飄々とした様子で答えた。
「いやぁ俺も命令されて来ただけなんでよくわかんないんっすよね〜。
ただ伊藤慎二について詳しく調べろって言われただけなんで。
俺もホント最近あの人たちの仲間?になったので何も知らないんっすよね〜」
「──ッチ……そうかい」
「そんな顔してるとせっかくの美人が台無しっすよ」
何だとあいつ、慎二の監視……?
あいつらって、まさか……!
その瞬間タシテスはこちらが隠れているところを見つめて来た。
しまった、少し気ぃ抜けた!
タシテスはこちらへゆっくりと近づいてくる。
その様子にキリサメは冷や汗を流す。
「こいつは少し……やべぇかもな」
キリサメは刀を構え、タシテスがいつ来てもいいように備える。
来た瞬間、反応できない速度で首を刎ねる。
それを逃すとこいつを倒すのは少し厳しい……
そしてタシテスはゆっくりとキリサメの隠れている物陰に近づき……
「タシテス様!
こちらにいらしたのですか、現在アンデッドのエリアボスのキリサメ様が話があるとこちらに来ております!」
「何だって?!わかった急いでいくよ」
そしてギリギリのところでタシテスはそちらへ意識が向いた。
そしてタシテスは急いで部屋を出て行く。
危ねぇ危ねぇ、バレるとこだった。
けどあいつ、俺のこと一瞬だけ見なかったか?
いや、そんなのとより早く部屋戻んねぇと……
そしてキリサメは移動し、元の部屋へ戻っていった。
「ったく……気をつけて欲しいもんだ。
助けんのはこれで最後にして欲しいもんだよ。
こっちの心臓がもたない……」
その部屋でナマケモノは安堵したようにそう呟くのだった。




