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52話 圧倒


「てことで俺はタシテスのとこ行ってくるわ」


「いや意味わからん!」


 亜人たちの急な襲撃が収まり死体を掃除したのち、家に戻り俺たちはご飯を食べ終わった後俺たちは庭に来ていた。

 だが修行を始めようというところでキリサメはそんなことを言った。

 俺はわけがわからずそのことについて問いただす。


「安心しろ、別に戦いに行こうってわけじゃねぇ。

 けどさっきの襲撃、少し引っかかるとこがあってな……」


「引っかかることってなんなんだ?」


 慎は俺も思った、引っかかることについて聞く。

 キリサメはそのことについて説明していく。


「俺はタシテスと長い付き合いだからわかるんだよ。

 あいつはあんな雑兵を無駄に送ってくるほどバカじゃねぇ。

 何か目的があったんだよ」


「それを聞きにいくってことか」


 俺がそう言うとキリサメはコクリと頷く。

 確かにあのトカゲがキリサメをタシテスはすごい警戒してるって言ってたもんな。

 キリサメ曰く長い付き合いだってのに、キリサメの実力を正確に把握してないわけねぇ……


「それと朝も言ったが慎二との戦いの日も決めなきゃいけねぇ。

 だからさっさと話付けにいくんだよ」


 別に相手から連絡きてからでもいいと思うんだけど……

 事を急ぐキリサメに少し違和感を覚えた。


「キリサメがいくってんなら俺の神気の修行どうすんだよ?!」


「そこは安心しろ。

 気の操作のエキスパート2人を呼んである」


 俺はその2人に心当たりがなく、首を傾げていると庭につながる部屋からこちらに歩いてくる2人の人影があった。

 片方はとても身長が低く黄緑色が少し入った髪と瞳、少し柔らかい目元、無機質な表情。

 もう片方はキリサメ同様、歳をとり顔には少し皺ができおり髪は白く染まり、凛とした鋭い目元、髪は後ろに団子のように結えてあった。


「雫さんと……ルル?!」


 そこには今まであまり関わりのなかった2人がいた。

 だが雫さんはいつもとは違く、袖や袂をたくし上げて動きやすくするために襷をつけていた。


「この2人がお前の神気の修行に付き合ってくれるから粗相のないようにしろよ」


「あの……

 こんな事を聞くのは失礼だと思うんですけど、雫さんって戦えるんですか?」


 慎はそんな事を言った俺を諦めたような表情で見てきた。

 俺の発言を聞いた瞬間キリサメと雫さんはキョトンとした顔を見せた後、雫さんは少し微笑みを見せキリサメは慎と同じ表情を浮かべた。


「そうだったね、慎二は私が戦ってるとこ見た事なかったか」


「失礼な事書いてることはわかってるんですが……」


「別にいいよ、私もそんなこと久しぶりに言われて嬉しいよ。

 けど確かにね、少しは見せといた方がいいね」


 そしてルルは何も言わずに木刀をリリのように生成し雫さんに渡す。


「あの何して……」


「いやいや、私も最近訛ってたからね。

 少しばかり私の準備運動に付き合っておくれ」


 そんな事を言う雫さんの目には確かに火がついていた。

 どうやら俺は押してはいけないものを押してしまったようだ。


「俺……そろそろ行ってくる!」


 キリサメは逃げるように家を出て行き、慎とルルは少しずつ巻き込まれないよう距離を取っていく。

 俺はとりあえず前にリリにもらった木刀を取り出し構えた。


「へぇ基礎はできてるじゃないか……

 "基礎"はね──」


 俺は気づいたら宙を舞っていた。

 そして俺は重力に従い地面に伏した。

 一体何が……!

 それを理解しようと思考する前に返答として、足に強烈な痛みが迸る。

 まさかあの一瞬で……


「どうだい慎二、これでも私では足りないかい?」


 気づいたら雫さんはすでに俺の目の前に立って見下ろしていた。

 俺はその言葉に笑いながら……


「十分ですよ……」


 とそう返し足の痛みに耐えながら何とか立ち上がる。

 その様子に雫さんは少し笑い……


「流石男の子だね、よく立った」


「今……何したんですか?」


 そう言うと雫さんはため息をつく。


「あいつ本当に基礎しか教えてないんだね」


 雫さんは呆れながら頭をポリポリとかく。

 その姿とキリサメの姿が重なり、やはり夫婦である事を感じさせた。


「人はね、無意識の状態でも少しばかりは気を知覚してるんだよ、戦ってる間でもね。

 だから相手が気を動かし攻撃しようと飛び出すタイミングが見るのと感じられるんだよ。

 あんたも同じような事をしてるだろ?」


 知覚って……あの闇と戦った時に覚えた感知と同じものか。

 この技術戦闘にも応用できたのか。

 そして雫さんは自分がさっき何をしたのかを説明していく。


「私はね、それを隠すのが人一倍得意なんだよ。

 隠密とは違ってこれは自分の気の流れで動くのを悟られづらくする技術。

 さっきの攻撃は隠して走って打っただけだよ」

 

 だから気づいたら……

 俺がその説明を受けていると慎とルルはこちらに歩いてきた。

 

「マジ舐めた口これから聞かないようにしろよ……」


 慎は少し怯えた表情を浮かべていた。

 こいつも多分同じようなことしてシゴかれたんだろうな。

 雫さんはルルが生成した木の幹に木刀を差し込むと吸い込まれて消えていった。

 俺も亜空間収納(インベントリ)の中にしまう。


「さて、神気の会得だったか?

 何か覚えてることはあるかい?」


「いそれが全く覚えてなくて……」


 そして雫さんは少し考え込んだ様子を見せた後、思い出したように口を開いた。


「だったら……それを1番近くで見てた当事者に聞いてみようか」


 当事者?

 俺は身に覚えのないそれに首を傾げるだけだった。



──────────────────


「さてとやって参りました」


 キリサメは目的地のそこにようやくつきそんな事を言っていた。

 そこはタシテスの本拠地、周りは頑強なレンガで囲まれており外から中は見えなかった。

 やっぱ……王国と似てるよなぁここ。


「お前ッ!キリサメ!?」


 キリサメがそんな事を考えていると警備員らしき亜人がこちらへ歩いてきた。


「あぁ久しぶりじゃねぇかパンダ野郎、戦争以来か?」


「うるせぇ!オラの同族殺してまわった人間がここに何のようだ!

 それとオラはマレーバクだ!」


「今は人間じゃねぇよ。

 てかまれーばくって何だよ、パンダでいいだろパンダで」


「よくない!」


 無神経に近くで大声を出すので思わずキリサメは耳を塞いだ。


「お前アンデッドになったのか?!

 お前はそんな簡単に死ぬようなタマじゃねぇだろ!」


「実際に死んでんだよ!

 てかもう少し声押さえろ!」


「これが抑えられずにいられるかぁ!

 ここに何のようだ!」


「タシテスに会いに来たんだよ!

 さっさと連れきやがれ!」


 キリサメはパンダに負けないくらいの大声でそれを言うと、そいつは頬に汗を垂らす。

 さっきとは打って変わったその様相にキリサメは疑問符を浮かべる。


「あの人は今はいない……

 だからさっさと出ていけ!」


「そうは行かねぇんだよこっちもよ。

 だったら中で待たせてもらうぜ」


「だったら、オラがついていく!

 変なことしたら直ぐに殺すからな!」


「お前が殺せるようならこんなことにはなっちゃいねぇよ……

 別に言われなくとも変なことはしねぇよ」


 キリサメはパンダを連れ中に入っていく。

 洋風の建築に囲まれたその地はやはりローズ王国を想起させた。

 キリサメが観察していると遠くに建築途中の建物があった。


「おいパンダ、あの建物なんだ?」


「だからマレーバクだ!

 あの建物か?!あれは最近タシテス様主導で建てられてる建物だ!

 詳しいことは知らない!」


 建築途中、ねぇ……

 キリサメは歩いていると目の前に豪勢な建物が見えた。

 パンダが事情を説明しキリサメは中に通される。

 随分といい家住んでんじゃねぇかよ。

 そしてキリサメはその家からコアラの亜人が現れる。


「始めまして、キリサメ様。

 応接室へ案内するします」


 少し慌てた姿を見せたが応接室に案内された。

 随分と窓が多いこって……

 そしてキリサメはそこに置かれている椅子に座りタシテスを待つ。

 タシテスの野郎一体どこに行ってやがんだ?

 それにあの建築途中の建物も気になる……あいつ一体何を企んでんだ?

 キリサメは1人その部屋でタシテスを待つのだった。


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