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50話 吐露


 俺は風呂を終えた後、飯を食べ家の中をただ何も考えず歩いていた。

 さっきまで寝てたから全然寝れる気配がしない。

 そうしているとリビングにつき何にも考えず中に入る。

 そうしていると雫さんとリリが厨房にいることに気づいた。

 

「あっ慎二〜!」


「どうした、眠れないのかい?」


「はい、ちょっと……」


 リリは作業を切り上げ、雫さんはお茶を作ってくれる。


「そうだ、リリ。

 これありがとうな」


 俺は亜空間収納(インベントリ)の中からリリとルルからもらった石を取り出して手渡した。

 リリはそれを笑顔で受け取った。


「帰ってきてくれて本当に良かったわよ。

 すごく心配してたんだからね」


「ありがとうな、てかそれ魔鉱石だよな?

 なんで持ってんだ?」


 リリは少し暗い顔を見せたがすぐに切り替え話してくれた。


「これはね、私とルルの魔力を流し込んで作ったものなのよ。

 これを持っていれば、2人はどこにいても一緒だよって」


「お前ららしくていいな」


 俺はそう言いリリの頭を撫でる。

 そうするとリリは少し嫌がるそぶりを見せた。

 少し、傷ついた。

 そうしていると雫さんがお茶を作り終え運んで俺の目の前に置いた。

 

「てか雫さんたちは厨房で何してたんですか?」


「あぁリリに料理を教えてあげてたんだよ」


「へぇ、そりゃまた何で?」


 俺は熱々のお茶を啜る。


「キリサメが誕生日近いのよ」


「ブフゥッ!」


 俺は思いもやらぬその返答に思わずお茶を吹き出した。

 リリはそれに呆れながら飛んでいくお茶を操作し器に俺の持つ器に戻してくれた。


「あら言ってなかったかい?

 あいつ2週間後くらいで誕生日だよ」


「知りませんよそんなこと!?

 またこのパターンだよ、キリサメは想定外だったわ!」


 まぁまだ2週間あんならリリのようなことは起こらないだろう。

 報連相もっとちゃんとしてほしいな。

 俺がとりあえずもう一度茶を飲んでいると雫さんが口を開いた。

 

「ライオッドと戦ったんだろ?

 どうだったんだい?」


 俺はその質問で慎に聞かれた時と同様、謎の感情が湧き上がってくる。

 何なんだ?この気持ち……

 俺は表情に出さないようにし、答えた。


「別に普通ですよ。

 負けて当然でした……命拾えただけ運が良かったですよ」


「……そうかい」


 雫さんはそう言い作業を再開するらしくリリと厨房に戻って行った。


「お茶ごちそうさまでした」


 俺はそう言いリビングを出て廊下を歩いて行った。

 でも時間が経ったからか少しは眠くなってきたかもな……

 そんなことを考えていながら廊下を歩いていると部屋の襖が開いていた。

 ここって庭に繋がってる部屋だよな……

 あれ、確か庭に……


「マジでいんのかよ……」


 その部屋に入るとすぐに庭が見える。

 つまり庭の様子をすぐに確認できるということだ。

 そこには庭のど真ん中で寝転がっているライオッドがいた。

 まぁそりゃこいつ7、8mあるから入れるわけねぇか。


 俺はそんなことを考えながら襖を閉め庭に出てそいつに近づいた。

 近づいてくる気配に気づいたようでライオッドは首を横にし俺を見る。

 ライオッドの顔に近づき、少し間を開けたところで俺は立ち止まった。


「あぁ伊藤慎二じゃねぇか。

 暴走しなかったのか」


「暴走っていうけど俺は意識ないからそんな感じしねぇけどな。

 まぁ見ての通りいつもの俺だよ」


「お前のせいでこんな状態だよ」


 お前のせいで俺は死にかけたけどな。

 皮肉混じりのそんな言葉を俺は鼻で笑い飛ばした。

 俺たちの間にしばし沈黙が流れた。

 俺はずっと気になっていたことをライオッドに聞いてみた。


「お前、何で俺を殺さなかったんだ?」


「まぁ一言で言えば俺の目的にグッと近づくから……だな」


「それに俺を利用しようってか。

 どっかの誰かも同じようなこと言ってたな」


 俺はそう言い、ノアのことを思い出した。

 あいつが言ってたある力って何なんだろうな……


「その目的ってのは何なんだ?」


 その問いにライオッドは少し考え込んだ様子を見せながら答えた。


「あるやつを、殺すことだ。

 そいつは俺の親友を殺したんだ。

 だから、その償いをさせる」


「それと俺に何の関係が……」


「そいつはお前と同じ力を持ってんだよ」


 ──ッ!

 俺はそれに思わず言葉が詰まる。

 俺と同じ力、神気ってことだよな……

 一体どういう……


「でもよ、俺この力を気づいたら持ってたんだよ。

 そいつと俺が繋がってる保証なんて……」

 

「そこら辺は大丈夫だ。

 確信があるからな」


 ライオッドはそう自信たっぷりにそう言った。

 まぁそれのおかげで俺は助かってんだからこれ以上何か言わないほうがいいな……


「それとなお前に忠告だ」


「急にどうしたんだよ」


 ライオッドは起き上がりあぐらをかき俺と向き合う。


「キリサメは、お前に隠し事をしてる。

 お前が暴走した後、キリサメが駆けつけて事態を収集させた。

 けどその後キリサメはお前を連れてどこかへ行ったんだ。

 その話聞いてねぇだろ?だからあんま信用しないほうが──」


「忠告ありがとうなライオッド。

 けどな俺はキリサメを信じるよ。

 俺が見てきたキリサメに、あの涙に嘘はねぇ。

 だから俺はキリサメを信用するよ」


「お前は……

 やっぱりな予想通りだ」


 俺はその言葉に疑問を一瞬持ったがライオッドは立ち上がり、家を出て行こうとした。


「いいのかよ?傷はもう」


 ライオッドはその問いにただコクリと頷き出て行こうとするが途中で足を止めた。


「そうだ、あの赤毛のポニーテールの大雲慎ってやついただろ?

 あいつに伝えといてくれるか?」


「何をだよ?」


「恐れるな、慄くな、お前のしたいことをしろって」


 俺はその言葉の意味がよくわからなかったがとりあえず了承した。

 そして今度はちゃんとライオッドは立ち止まらず、家を出て行った。

 あれで街歩くって絶対変な目で見られるよな。

 俺は最初にこの街に来て人間とバレた時に向けられた視線を思い出した。


 そんなことを考えているとあくびをした。

 とりあえず寝るか……

 俺は家の中に戻り自室へ戻ろうと歩き出すが、キリサメが歩いてきた。

 あっこれやばい。


「おぉ慎二、お前暇だろ?

 将棋刺すぞ」


「丁重にお断りさせていただきますさようなら」


 俺は急いでキリサメの横を横切ろうとしたが襟を掴まれ、キリサメの部屋に連行され座布団の上に座らされる。


「俺寝たいんだけど」


「別にいいだろ一局だけだしよ」


 俺は早く終わらせたく、適当に駒を黙々と指していく。

 そうしているとキリサメは突然と口を開いた。


「ライオッドと戦って、どう思った?」


「なんだよその質問は」


「いいから答えろよ」


 駒を刺しながら俺は返答を考える。


「強かったよ、そりゃ少しの修行期間しかなかったんだ。

 あれでもめっちゃ善戦した方だろ。

 負けても命拾えたんだ、よかった──」


「違うだろ?お前の本音は?」


「何言って……」


 そうするとキリサメは強く駒を刺す。

 そして部屋全体にカンッと甲高い木のぶつかり合う音が反響する。


「取り繕うな、全部吐いちまえ。

 聞かなかったことに、してやるからよ」


 その瞬間、謎の感情が体を支配する。

 死ななくてよかった、そんな思いを軽く凌駕するそんな感情。

 そんなこと、俺にはいう資格がない。

 だけど……

 気づいたら涙が溢れ出す。

 汚い顔を見せないよう顔を思わず覆う。

 俺から湧き上がるその感情、それは──



「"勝ちたかったなぁ"」



 悔しさだった。

 俺はしばしの間、とにかく涙を流し続けたのだった。


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