46話 再会
キリサメと慎二が刀の押し合いをしていると何かを察知し慎二は一度距離をとった。
「てかお前、その傷大丈夫かよ?」
「今逆転しようとしてたところだったよ。
てかあれ"お前のやつ"だろ、さっさとなんとかしろよ」
ライオッドがそういうとキリサメは少し気まずそうな顔をして答えた。
「……実は俺、あれ見るの初めてなんだよな」
「はぁ?!
お前、なんで?」
「いや話には聞いてたけどよ……ほら俺見──」
「あ゙あ゙ぁぁぁ!」
その時、動いていなかったはずの慎二は再起動したようにそんな叫び声を上げ、一瞬でキリサメとの距離を縮め刀を振り下ろす。
「あ゙あ゙ぁ?」
だがもうそこにはキリサメはいなかった。
それに慎二は困惑した様子を見せる。
「急に来んなよ、びっくりするだろ?」
慎二の後ろからキリサメの声が聞こえた瞬間、慎二は振り向きもう一度刀を振るう。
だがまたそこにはキリサメはいなかった。
「そんなに早んなよ」
また、声が背後から。
慎二の視界の端が刃を捉えたが、それと同時に慎二の腹部を切りつけ飛んでいく。
「うっへぇ硬ッテェ!」
キリサメは笑いながらそう言い、慎二は何とか体勢を立て直しキリサメに向き直る。
その時上空から風を切る音が耳を刺す。
「こっちだよ抜け殻」
そうキリサメの声が上空から聞こえ反射的に慎二は刀を上に構える。
金切り音と共に強い衝撃が慎二を襲う。
「あ゙あ゙あ゙ぁぁ!」
慎二は闇を腕に集中させ強化倍率を上げ、右腕を壊すと同時にキリサメを押し除ける。
「おっと」
キリサメは身を翻し何とか着地の体勢をとるがその時慎二の持っている『霜月』が闇を纏い、刀身が黒く輝きそこから闇の刃が放たれる。
「へぇそんなことできんのか」
だがもうそこにキリサメはおらずすでに慎二の後ろにキリサメはいた。
慎二は驚き距離を取ろうと足に闇を集中させ駆け出そうする寸前──
「少し遅ぇよ」
キリサメはそれよりも早く刀を振り下ろし慎二を地面に叩きつける。
慎二はあまりの衝撃に白目を剥き地に伏した。
「まぁこんなもんか」
「お前の"スキル"って本当にズリィのな」
「はぁ?それお前にだけは──」
「オ゙ア゙?」
「──ッ!」
そんな乾いた声が響いた瞬間、慎二の背中に生えている何かが急に大きくなりその勢いでキリサメは後ろに飛ばされる。
「おいおい嘘だろ?」
「ハア゙ア゙ァァァァ?」
そいつは口の中から流れ出る血液を覗かせながら、そんな不気味な笑い声を上げる。
その気味の悪さにキリサメの警戒は強まる。
「悪りぃな慎二、少しボコる」
「ヴ゙ハア゙ア゙ァァァァ!」
そんな恐ろしい声と共に視認ができないほどの速度で両者は動き出した。
わかるのはその動きの軌跡のみ、空中での数回の打ち合いだけで風は泣き、壁にヒビが入る。
「埒開かねぇな、腕もらうぞ」
その言葉と共にキリサメの持っている刀が白く輝く。
それと同時にキリサメはある言葉を口にする。
「【剣気解放】《布都御魂》」
同時にキリサメは慎二とまだ距離があるというのに刀を抜く。
慎二は本能からその攻撃の危険性を察知、受けるのではなく避けるまでに変えるのに時間はかからなかった。
──『天絶』
空間を切り裂き全てを嬲る圧倒的攻撃性、その攻撃は容易に慎二の腕を切り飛ばした。
好機を予感したキリサメは身体強化の倍率を変更、足に集中し先とは比べ物にならないスピードで慎二に飛来、その首を捉えた。
「ヴヒャァァ?」
その時そいつは不敵に微笑んだ。
確かにキリサメの刃はその首を通る。
だが一定のところまで進むとその刃は動きを止める。
「──ッチ!」
喉に刃が刺さっている事実を無視しながら慎二は腕に闇を溜め、キリサメの腹部を殴り抜いた。
その勢いで刃は抜けその傷は一瞬で治癒、その飛んでいくキリサメを追うように慎二は走り出す。
だがすぐにキリサメは体勢を立て直し刀に気を溜める。
そして飛来する慎二に向かってその刀を振り抜いた。
「キリサメ!そりゃ罠だ!」
ライオッドのその言葉に反応するがもう遅い、すでにキリサメの刀は振り下ろされ慎二は静止の姿勢に入っていた。
その攻撃は空を切った──
「お前、物覚え悪りぃだろ?」
慎二の目算に誤りはなかった、だがキリサメはいつの間にか数歩前にいた。
「"じゃあな"」
──不倶戴天
轟音と共に刀は直撃し鈍い音共に慎二の意識は消え、その纏われている闇は晴れていった。
キリサメは一息ついた後慎二を背負いライオッドに近づいた。
「大丈夫かよボロ雑巾」
「黙れポニテ」
「そうだ、お前と交渉したかったんだよ」
キリサメがそういうとライオッドは少し苦い顔を見せる。
その様子にキリサメは微笑みながら話す。
「お前、金輪際慎二に危害加えんな」
「いいぞ」
「まぁそう言うよ──
は?」
その言葉にキリサメは目を見開いて驚いた。
「随分と簡単に了承するな」
「まぁそいつがいれば俺の目的にグッと近づくからな」
「なるほどな」
キリサメはそう言うとライオッドの体に触れ傷を治していく。
「というかお前、あいつにあの力があること知ってたから助けたのか?」
「さて、どうだろうな?」
キリサメはそう言うとライオッドのことを軽く叩き、治療を終えた。
「まぁ応急処置程度はしておいた。
とりあえず色々話したいことあるから俺の街行っててもらえるか?」
「お前はどこいくんだ?」
「まぁ少し野暮用がな……」
キリサメはそういい、慎二を連れて街の方向とは"真逆"に歩き出して行った。
***
キリサメは静かにダンジョン内を歩いて行った。
そこへ、そこに何があるのかを知っているように。
そしてキリサメはそこへ着き、そのドアノブへ手をかける。
その手は小刻みに震えを見せていた。
そしてその扉を開け、中に入る。
その中には布団や机があった。
暗闇に包まれた部屋で机の上で怪しげに光を放ち続ける板がいた。
《100年ぶりでしょうか、キリサメ》
「あぁ、久しぶりだな。親友」
キリサメはそのPC・ノアに対して、そう告げるのだった。




