40話 決戦の日
「慎二、ちょっと話があるんだがいいか?」
俺は飯を食べ終わり、慎とキリサメと風呂に入っているとキリサメが話しかけてきた。
「どうしたんだよ?」
「実はな、もう直ぐリリの誕生日なんだよ」
「そうなのか、いつなんだ?」
「……明日」
キリサメは少し気まずそうにそう答えた。
……、明日?
「はぁ明日ぁ?!」
俺は思わず立ち上がりそう叫んでしまった。
その声に慎とキリサメは耳を塞ぐ。
「そ、いうのは早くいうもんじゃ……」
「いやな、言わねぇとなぁって思ってたんだけどな。
ほらあれだよ、うん」
「慎は知って、るよな……」
「当然だろ、誕プレも用意してるわ」
慎は勝ち誇った表情でそう言った。
「誕プレって何あげんだ?」
「お前、あげたことあるだろ誕プレの一回や二回」
「お前陰キャ舐めんなよ?!
友達って言える人1人しかいなかったわ!
誕プレとかよくわかんねぇしそこまで気ぃ回せる状況じゃなかったんだわ!」
俺がそういうと慎は俺が記憶喪失だったことを思い出したようで「あぁ」とそう告げる。
ど、どうすればいいんだ?
まぁ当日に用意すればいいか……
俺はそんな浅はかな考えを持ち、風呂を出た後直ぐに床に就いた。
***
さてと、どうするか……
俺は珍しく早起きをして、とりあえず何か買おうと街に繰り出していた。
誕プレってあれだよな誕生日の時にあげる特別なものってことだよな。
特別なものって何をあげれば……他の奴らがあげるもん聞けば良かった……
「大変そうじゃねぇか慎二」
俺が困っていると後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「慎じゃねぇか。
そうだお前誕プレって何上げんだよ!」
俺は慎にそう問い詰める。
そうすると慎は少し顔を赤くしながら答えた。
「ブレスレット……だよ」
「ブレスレット……ってなんだ」
俺がそういうと慎は驚いたような困ったような様子をした。
「腕にはめるオシャレ道具だよ。
あの年ならそろそろおしゃれしたいとか思い始めると思ってな」
「リリって今何歳なんだ?」
「今年で14歳になるはずだ」
マジかよ全然見えない。
いやルナさんも同じようなもんだったからな、別に変でもないのか?
「で、お前はなに送るか決まったのかよ」
「それが全然決まってなくて。
頼む手伝ってくれ」
俺はそう頭を下げ、慎に頼み込んだ。
慎は嬉しそうに「任せろ」といった。
「てかお前金持ってんのかよ?」
「いや全然、持ってない。
強いて言えば」
俺は亜空間収納の中からルナさんからもらったブローチを取り出した。
流石にこれあげるわけにはいかないしな。
「それ女物のか?
もしかしてお前彼女とか……」
「違うよ、これは恩人から借りてるもんだ。
返しにきてくれって言われてな」
俺はそう言いポケットのなかにブローチをしまった。
お金か、そりゃこの街にもお金って概念あるよな。
「モンスターとかって売れたりしねぇか?」
「そんなら、解体屋いけば換金してくれると思うぞ」
俺は慎に解体屋まで案内してもらうことになった。
***
「めっちゃ高く売れたな」
「いや、わかってはいたことだけどよ。
あんなデケェハイオークとかいうモンスター倒したなんてお前結構すげぇんだな」
「そんな余裕で倒せたってわけじゃねぇよ。
ちゃんと死にかけたし」
俺はふと前にあったことを思い出す。
あれ?俺一回死ななかったっけ……
あれ、なんで俺生きて……る……
その瞬間突如の頭痛が俺を襲い思わず頭を覆う。
な……にが……
この瞬間"慎二"は何も考えなくなった。
"慎二"はそんなこと気にも止めなくなった。
"慎二"はそれについて忘れた。
あれ……何考えてたんだっけ?
「どうしたんだよ、急に」
「いや……なんでもない」
***
俺は換金したお金を握りしめ、街を歩いていく。
だけど来た時間が早すぎて、店が空いていないところが多かった。
「んじゃ何あげるか決めたか?」
「うーん……
ブレスレット、、とか?」
「それ俺があげるもんじゃねぇか!
パクんじゃねぇよ!」
「しょうがないだろ、何上げたらいいのかまじでわかんねぇんだから」
「そういうのは……相手がもらって喜びそうなもん以外ないだろ」
相手が貰って喜びそうな……リリが笑顔になるもん……
……そうだ!知ってるじゃねぇかあいつが喜ぶもの!
俺たちはそれを買いに行くのだった。
***
「「「「誕生日おめでとう!!!!」」」」
俺とキリサメ、慎、雫さんとルルはリビングにきたリリにそういった。
その瞬間リリは淡緑の瞳をキラキラと輝かせながら無邪気な笑顔を浮かべる。
「今年で14歳だな、リリ」
「みんな、ありがとう!」
リリは俺たちにそう告げ、食卓に並べてある豪華な食事を食べる前に誕生日プレゼントを渡していく。
ルルは新しい服を、キリサメは護身用の豪華な装飾なされた小刀を、雫さんは新しい食器を、慎は花柄のブレスレットを。
そして俺の番が回ってくる。
「俺誕プレとか初めてあげるから、何上げたらいいかよくわかんなかった。
だから、俺がリリと関わってきて1番リリが好きそうなものを買ってきた。
受け取ってくれ」
俺はそう言い、それを渡した。
「これって、焼き鳥……?」
その瞬間……キリサメと慎、ルルは笑いを堪えるように顔を背けた。
「おい慎流石にあれは止めろよ」
「いや慎二にしちゃよく頑張ったと思うぜ?
リリのことちゃんと考えてあげてたし」
「まぁ……リリがどう思うかだけどね」
キリサメ達は俺たちに聞こえないほどの小声で話していく。
リリは俯いており顔がよく見えない。
俺たちに緊張が走る。
「プッ……」
その瞬間リリは笑いを堪えきれずに高らかに笑い始めた。
喜んで、くれたのか?
「慎二あんた、あげたことないとはいえ食べ物あげるって……
でも、ありがとね」
リリはとても幸せそうな顔で俺にそう言った
「来年はなんか考えておくから安心しろ」
俺はそう告げ、リリのために用意されたご飯を食べていった。
***
「疲れたぁ」
俺はリリの誕生日会を終え、夜まで修行をして飯を食いちょうど今風呂に入り終わった後だった。
今日は早起きだったから眠い、速攻で寝よう。
俺が廊下を歩いているとキリサメが前から歩いてきた。
「おう慎二じゃねぇか。
ちょうど良かった、一局付きあってくんねぇか?」
「いや俺眠い……」
俺が断ろうとしたら無理やりキリサメは俺の腕を引っ張りキリサメの部屋へ連行された。
断れないなら最初から聞くなって話だろ。
キリサメの部屋に入るとそこには将棋盤があった。
あぁ前見たな、慎が確か打ってた。
「慎に付き合ってもらおうかと思ったんだが、逃げられちまって」
キリサメは頭をポリポリとかきながら将棋盤の近くに座る。
俺もキリサメにならい対極に座った。
そして、キリサメは駒を進めていく。
「お前将棋はやったことあんのか?」
「いやねぇけど。
でも駒の動きなら少しな」
俺は記憶を掘り起こしながら駒を進めていく。
「ありがとうな慎二、リリにプレゼントあげてくれて」
「いやいいよ、いつも世話になってんだし」
キリサメは申し訳なさそうな顔をしながら謝ってきたが、俺はどうも思っていなかった。
リリは結構気軽に接してくれた、それで救われたこともある。
「キリサメもありがとな、俺のために命張ってくれて……」
「別にそんなこといいだろ。
というかお前記憶喪失だったんだってな、慎から聞いたよ」
「それは言うタイミングがなくてよ……言おうと思ってたんだけどな」
キリサメは「別にいいよ」とそう言い、駒を動かしていく。
「こいつで王手だ。
そういえばよ……お前なんでこの最下層に来たんだ?」
「それも言ってなかったけ?」
俺はとりあえず柳にダンジョンに閉じ込められ、謎の男に襲われ気づいたら転移魔法らしきもので最下層に来たことを話した。
「なるほど……そいつは多分"タシテス"が関係してるかもしれねぇな」
「タシテス?」
「亜人の女の名前だよ。
お前が転移でここにきたってならこの最下層で魔法を扱えるのはタシテス、リリ、ルルくらいだしな。
もしかしたらお前をここに連れてきた仮面のやつにも辿り着けるかもしれねぇぞ?」
キリサメは俺に人差し指を刺しながらニヤリと答えた。
あれ?確か……
俺はナイフで見た藤宮が殺された時のことを思い出した。
藤宮を殺すあの男もナニカと似たような仮面をかぶっていた……
つまりタシテスを倒しさえすれば……藤宮を助けるのにグッと近づくかもしれない!
俺は嬉しさのあまり口角を釣り上げ、ガッツポーズをした。
「それ、教えてくれたおかげで一気に俺のやりたいことに近づいたよ。
ありがとう、キリサメ!」
「そいつはよかった!
それと……詰みだ」
キリサメは駒を置き、試合を終わらせた。
考えるのに夢中で全く気づかなかった……
「今日はもう寝ろ、夜も遅いし。
これからも少しは対局に手伝えよ」
「それまでにキリサメは手心を加えるってことを覚えたほうがいいと思うぜ」
俺は席をたち自室へ向かい、眠りにつくのだった。
***
「仕上がったじゃねぇかよ、慎二」
キリサメは俺にそう微笑んだ。
今日は、ついにオーガとの決戦当日。
俺たちはギリギリまで、オーガを倒すため修行に励んでいた。
剣気が上手くできるようになってから師匠からはたくさんの技を教えてもらった。
それを俺は、明日出し切る。
「けど"あの技"はまだ完成してないみたいだな」
「あぁ……けど師匠には他にも教えてくれた技あるから大丈夫だ!」
俺たちが話しているとベランダから顔を出してリリとルルが何かを持って近づいてきた。
「これ……貸してあげる」
リリとルルは俺に二つの綺麗な青色の石を差し出した。
これ……魔鉱石か?
かなりの高純度のもののようで強く光り輝いている。
「それ……私たちの宝物だから!
だから絶対に……」
リリは最後までいうことができずに思わず泣き出してしまった。
俺はふとルナさんのことを思い出した。
確かルナさんにも同じようなこと言われたな。
俺はその石を握りしめリリとルルの頭を優しく撫でた。
「あんがとな……絶対に返しにくるから……」
「慎二……私たちあんまり話さなかったけど……
また一緒にご飯食べようね」
ルルはいつも通りの無機質な顔で俺にそう告げる。
だがいつもと違って何故か勇気がもらえた。
「慎はどうしたんだ?」
「あいつどこにも見当たらないのよ。
こんな大事な日にどこいったのかしらね?」
リリがそう言うとキリサメは顔を曇らせ、短く「そうか」と言った。
そろそろ時間も迫り、俺は自室へ戻った。
俺は亜空間収納の中からルナさんのブローチを取り出した。
もし死んだら亜空間収納の中どうなるかわかんねぇからな、ルナさんのだけでも……
俺は部屋の隅にある机の中にそれを入れ、玄関へ向かい家を出た。
「頑張ってこいよ……慎二」
キリサメたちは優しくそう告げ、俺が見えなくなるまで……見守ってくれた。
ありがとう……みんな……
俺は急いで正門へ向かう。
俺はオーガのことを思い出す。
あの凍てつくような威圧感……絶対に勝てないと一目でわかるほどの力量差。
いやでも恐怖が……湧き出てしまう……
恐怖で思わず手が震えてしまう。
向かっている途中……俺はそれに気がついた。
いつも賑わっている街に誰1人人がいないのだ。
俺が驚き足を止めているとポンと背中を叩かれた。
「ッノヴァ?!」
「何しみったれた面してんだ!
慎の頼みだからな、これは"俺たち"からの土産だ!」
その瞬間どこからともなく人が現れた。
「「「「行ってらっしゃい!!!!」」」
その瞬間みんなから一斉に拍手が送られた。
俺がその光景に唖然していると、皆が笑顔で俺に語りかけてくる。
「死ぬなよ、慎二!」
「頑張ってこいよ、キリサメの命かかってんだ!」
「また焼き鳥食いにこいよ!」
「あのオーガ野郎に吠えずらかかせてやれ!」
「帰ってきたら酒奢ってやる!」
「んじゃ俺は焼肉!」
「お前たちはただ飲みたいだけだろ!」
「慎二に似合う洋服仕立ててあげるわ!」
みんなからの祝福の言葉が贈られる。
俺の行く道を邪魔しないよう門まで一直線綺麗に道ができていた。
「慎がな……言ってきたんだよ俺たちに。
あいつ絶対怖がってるだろうから元気付けてやってくれってさ」
だからあいつ朝からいなかったのか……
慎あいつ、、余計なこと、しやがって……
俺は溢れそうになる涙を必死に堪えて上を見上げる。
「さっ、ぶっ倒してこい!」
ノヴァに再度思い切り背中を叩かれ、俺はそれと同時に走り出した。
俺はもう1人じゃない……それをちゃんと再認識できた……
もう手の震えは止まっていた。
俺が人通りを抜け、門を出るとそこには赤髪で長髪、刀を腰に携えた男がいた。
「どうだったよ」
そこに立っている男、大雲慎は少し心配そうな表情でそう言った。
「よくわかんねぇ……こんな大人数の人たちに囲まれんの初めてだったし。
けど……胸がすげぇ熱くなったよ」
そう言うと慎はすごく嬉しそうな表情でにこやかに笑った。
慎は通り過ぎざまに俺に手をポンと当てる。
「待ってるからな、慎二」
慎はそう言い、静かに通りすぎていった。
俺はその言葉に拳を固く握り絞めながら、
「おう!」
そして俺は走り出した……
そいつが待っている場所へと。
決戦の地はオーガと最初に出会った場所……
確か風刃くらって腕飛んだっけ?
けど……今回はそうはいかねぇ、この時のために俺は牙を磨いてきた。
必ず俺は生きて帰る、あいつらも待ってる。
そんで藤宮も助けなきゃならない……
俺はそこに到着した。
そしてそいつを待つ。
ドスン、ドスンとゆっくりと音が近づいてくるのがわかる。
そしてそいつは顔を出した……
緑色の肌、発達した牙、膨れ上がった筋肉、赤黒い目、そして巨大なツノ。
「よぉ、久しぶりじゃねぇかよ人間。
遺言、決めてきてきたんだろうな」
そのオーガは鋭い眼光で俺を睨みつけながらそう告げるのだった。
【 名 前 】 伊藤慎二
【 レベル 】 485
【 H P 】 49400/49400
【 M P 】 7500/7500
【 S P 】 400/400
【 魔 力 】 0/0
【 筋 力 】 989 +103
【 脚 力 】 989 +104
【 抵 抗 】 261 +34
【 感 覚 】 261 +34
【 スキル 】 身体強化《大》身体強化《中》治癒《中》治癒《小》隠密 火操作 水操作 風操作 土操作
【固有スキル】 亜空間収納
【ステータスポイント】 0




