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34話 剣気


「ほら、慎二たてよ。

 お前が剣ができねぇってんなら俺が支えてやる。

 なんせ俺は神童って言われてた男なんだからな!」


 慎は俺、伊藤慎二にそう優しく告げる。


「すぐに超えてやるよ!」


 俺は出てくる涙を拭いながら、ニヤケ面でそう軽口を叩いた。

 俺は亜空間収納(インベントリ)の中にある木刀を2本取り出し、慎に一本渡す。


「んじゃ修行手伝えよ、神童さん」


「後悔するんじゃねぇぞ。

 ……それとな慎二」


 慎は口調を変え、真面目に俺に話す。


「実はな俺剣気ができねぇんだよ。

 理由はよくわかんねぇけど、発動しようとするとどうにも上手くできねぇんだ」


「どうしたんだよ、急に気持ち悪りぃ」


 俺がそう言うと少し顔を赤くしながら「お前だけ色々話すのは不公平だと思っただけだ」と言っていた。


「それはお優しいことで」


 俺たちは、時間を忘れて修行に没頭するのだった。


___________________


 1人の男はその剣道場で高め合っている2人を優しく見つめていた。


「フッ、覚悟が足りなかったのは俺の方だったか……」


 その男、キリサメはそう告げ家に戻って行った。


___________________


 俺たちは時間を忘れ戦っていると慎が「待て」と俺を静止させる。


「どうかしたかよ?」


「気づいてなかったけど、テメェのこの汗マジでどうする」


「あっ!」


 俺たちは顔を見合わせ苦笑いを浮かべ合う。


「このままじゃ、殺されるぞ」


「誰にだよ、キリサメとかか?」


「お前は知らねぇよな、雫さんだよ。

 あの人ガチで怒ると怖ぇんだからな。

 もしこれ見られでもしたら俺たちは……」


「何でこんな水浸しなのよ!」


「「ピギャぁ!!」」


 急に聞こえたその女の声に雫さんがきたのではないかと思い、俺たちはそんな素っ頓狂な声を上げた。

 俺たちがその声の方向に振り向くとそこにはリリがいた。

 俺たちはそれを見て安堵のため息をつく。


「何よピギャぁって。

 てかこんな散らかして雫さんに殺されるわよ」


 リリのその言葉で俺たちは事は何も片付いていないことに気づく。

 この汗どうする?

 都合よく水とか操作できたりするやつがいたら……あっ!

 俺がそう考えていると慎も同じことを考えたようで顔を見合わせ、コクリと頷いた。


「「リリさん!お願いします片付けんの手伝ってください!」」


 俺たちはリリに近づき、土下座をした。

 それはもう綺麗に、素早く土下座をした。


「何であんたたちの尻拭いしなきゃならないのよ」


「タダではやってくれないのもわかる、だけど頼むよぉ。

 てかリリお前俺のこと殺しかけたんだから手伝ってくれよ、罪滅ぼしとしてさ」


「そうだそうだ、それくらいやってやれよ!」


「あんたたち卑怯すぎるでしょ、それでもニンゲ……

 片方人間じゃ無かったぁ〜」


 リリは肩を落としながら「わかったわよ」とそういい俺たちは朝飯ができるまでに急いで剣道場をピカピカにするのだった。


***


 俺たちは剣道場の掃除を終えて、何事もなく雫さんが作ってくれた朝食を食べていた。

 あぁ、暖かい飯たちが俺の体を癒していくぅ。

 これからは亜空間収納(インベントリ)の中に食料少しだけは入れておこう。


「リリどうしたの、そんな疲れた様子で」


「ルル、、、

 まぁクズどもの手伝いを少しね」


「クズって言い方流石にないだろ!」


「あのこと持ち出してくるのは断れないに決まってるじゃない!」


「実際あれはお前が悪いんだから仕方ねぇだろ!」


 慎がそういうとリリは不貞腐れた様子で大人しくなった。

 そうするとキリサメが箸を止め口を開いた。


「お前ら汗クセェから今日は風呂入ってから修行始めんぞ」


 キリサメが鼻をつまみながらそういう。


「いいだろ入らなくても結局汗かくんだから同じだろ」


「うるっせぇな、入れって言ったら入れ!

 あと今日は庭じゃなくて剣道場にこい、わかったか」


 キリサメがそう言い放った途端、俺と慎は顔を強張らせた。

 慎は目で「お前なんかバレるようなことしたか?!」と訴えかけてくる。

 俺も「知らねぇ、お前じゃねぇのか?!」とそう返すと慎は無罪を必死に主張する。


「「痛く、しないでください」」


「んだよ気持ち悪りぃなさっさと飯食えよ」


 俺たちは不安を胸に抱えながら飯を食べ、風呂に入りに行った。


***


「何をするんでしょうか」


 俺たちは風呂を終えた後、剣道場に来ていた。

 そこにはキリサメとリリが静かに佇んでいた。


「もし怒るなら先にこいつら怒ってね!

 私は手伝わされただけ!」


「「裏切り者がぁ!!」」


「大丈夫だ、何もしねぇよ。

 テメェらがここでなんかしてたのも見てたよ」


「「マジかよ、、、」」


 俺たちはその言葉に絶望した。

 もしかしたら剣道場を汚しやがってとかキレてくるんじゃ、、、


「まぁとりあえず、今日やるのは刀の修行じゃねぇ。

 慎二、気の器の調子は?」


「おう、24時間経ったからなバッチリだぜ」


「そうか、だったらお前にはこれから剣気をしてもらう」


「師匠、秘策ってまさか!」


 キリサメがそういうと慎は驚いた様子でキリサメに叫ぶ。


「どうしたんだよ、そんな驚いて」


 俺がそう言っているとキリサメは腰にいつも携えている装飾された刀を鞘に収めたまま持つ。


「武器に魂が宿るのはお前も知ってるだろ?

 この刀『布都御魂』(フツノミタマ)はこの世界にはそう多くは存在しない大業物のその一振りだ」


「そのすげぇ刀で剣気して何になるんだよ」


「この刀には多くの歴史が刻まれている。

 あらゆる使い手の記憶が、お前にはそれを見てもらう。

 剣気を使うと刀の魂に会えるだろ?

 そいつに記憶を見せてもらうんだ。

 まぁお前の場合、見せてもらうのは経験だけだろうがな」


「そんな方法あんなら、最初っからやってれば……」


 俺がそういうとキリサメは顔を俯かせながら話していく。


「この技はあんま使いたく無かったんだ、お前を傷つけるかもしれねぇし。

 ゆくゆくはやらせようと思ってたが今じゃねぇと思ってた。

 だけど今はお前なら大丈夫って思うだからこれをしようと決断したんだ」


 キリサメは淡々とそう告げた。


「これをしちまうともしかしたらお前は傷つくだけじゃすまねぇかもしれない、それでも……」


「大丈夫だ、任せろよ」


「そうだぜ師匠、こいつは俺の"弟弟子"なんだからよ」


「あのー、私なんか仲間はずれ感ひどいんだけど〜……」


 俺たちがそういうとキリサメは嬉しそうな顔で「そうだな」といいその刀を俺にキリサメは手渡した。


「そいつに気を流せ、それでその世界に行ける。

 ーー頑張れよ」


 俺はその言葉を最後に刀に気を流し込み、俺の意識は刀に吸い込まれるように消えていった。


___________________


 俺はその世界に来ていた。

 その世界は骨のような構造物で出来ていた。

 そして悍ましく積み上がった頭蓋骨の上に佇んでいたのは、純白の服で身を包んだ綺麗な黒髪の女性だった。


「お前が、、、『布都御魂』」


「あなたがキリサメの言っていた……」


 その瞬間俺はその女に触れられていた。

 頬をなぞられていた。

 俺は瞬時に距離を取る。

 どういうことだ、気づかなかった。

 こいつバカみたいに強い!


「やはりお前……」


 その女は猛々しい笑いをあげる。

 俺はその笑いに困惑の表情を浮かべる。


「なるほどな、キリサメがお前を気にかける理由がよくわかったぜ。

 いいだろう、約束通り経験を見せてやる。

 だが、条件がある」


 その女は俺を挑発するように指をビシッと向ける。


「その経験は自分で掴み取れ、それが条件だ」


「……いいぜ、やってやるよ」


 最近実戦をあんまやってなくて訛ってたところだ丁度いい。

 そういうとその女はニヤリと笑い、姿を消す。

 その後瞬時に世界は再構築され、謎の黒いフィールドが出来上がった。


 ここは、、、

 俺がそう思っていると目の前に水のような泥のような闇の塊が現れた。

 俺が観察していると、その闇は人となり真っ暗な人の形をした何かになった。

 そいつは全身真っ黒、そして二振りの刀を両手に抱えていた。


「宮本武蔵かなんかかよ」


 俺がそういうとその闇は俺に片方の刀を投げ渡す。

 俺はそれを受け取る。

 騎士道的なもんか……まぁ武器がなかったから都合がいい。


「さぁ、どこからでもかかって……」


 その瞬間、俺は宙を舞っていた。

 ーーは?

 どういうことだ、攻撃されたのか。

 いやそれよりも……体が、軽すぎる。

 まるで何もないように。

 俺はそこで理解した、俺は首を飛ばされたのだ。

 それを理解した時、首に痛みが迸る。


 宙へ浮かび激痛で意識が遠のいていく中、俺がさきほど立っていた位置に目を向ける。

 そこには首なしの俺だったものと、ただ静かに佇む闇だけだった……


 【 名 前 】 伊藤慎二

 【 レベル 】 433

 【 H P 】 35000/44200

 【 M P 】 5030/5030

 【 S P 】 225/350

 【 魔 力 】 0/0

 【 筋 力 】 886 

 【 脚 力 】 885 

 【 抵 抗 】 227 

 【 感 覚 】 227 

 【 スキル 】 身体強化《大》身体強化《中》治癒(ヒール)《中》治癒(ヒール)《小》隠密 火操作 水操作 風操作 土操作

 【固有スキル】 亜空間収納(インベントリ)

 【ステータスポイント】 15

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