31話 ナイフ
「とりあえず、型はできてきたな」
キリサメが俺の肩にポンと手を当てた。
修行を始め、今日で5日が経過した。
残り9日……本当にこれでいいのか?
「どうした慎二ボーッとして」
「何でもねぇよ。
さっさと続き始めんぞ」
「悪りぃけど修行はここでお預けだ」
「「はぁ?!」」
キリサメはそういうと「ついて来い」とだけいい、庭を出て街に出るのだった。
***
キリサメのついて来いという命令に従い俺と慎、キリサメは街を練り歩いていた。
「キリサメ!
久しぶりじゃねぇか元気してたか?」
「おりゃあ生涯現役だよ。
お前腰痛めてたんだから無理すんなよ」
「あらキリサメ、慎ちゃん連れてどこ行くつもりなの?
少しお茶してきなさいよ」
「悪りぃけど後でな」
街を歩いていると数々の住民に声をかけられていた。
キリサメはかなり住民からの信頼を得ているようで気軽に話しかけられていた。
「師匠スゲェだろ」
歩いているとボソッと慎が俺に耳打ちしてきた。
「住民からの信頼も得ていて、優しくておまけに強い。
憧れだよ」
慎は羨望の眼差しでその赤い瞳を震わせていた。
「あぁ、すげぇよ。
てかこれどこ向かってんだ?」
長い間キリサメと共に過ごしているから知っているのではないかと考えた俺は慎に聞いてみた。
「俺も良く分かってねぇけど。
多分……」
「おい着いだぞ」
慎の言葉を遮るほどの大きな声でキリサメは俺らに目的地に到着したことを告げた。
そこは一つの店のようなところだった。
看板にかかれている文字は掠れていて読みづらかったが"かぢや"とかかれていた。
キリサメは「着いてこい」といい扉を開け俺たちはその店に入っていった。
その中には数々の武具が飾られていた。
杖、剣、刀、槍、防具、暗器他にも色々な武器が揃えられていた。
店内にはかすかに鉄の匂いを放っていた。
そしてカウンターにはいかにも店主のような面持ちで座っている髭を蓄え茶髪で小柄、そして右目にはルーペのようなものをつけているおじさんがいた。
「久しぶりだなキリサメ、慎。
お前は、、、噂の人間か。
うちに何のようだ」
その店主は俺を品定めするような目で全身を舐め回すように観察された。
「とりあえず、こいつの刀を打ってもらいたい」
「新しく作んのか?
それとも元々使ってた武器とかあんなら……」
「慎二、お前確か短剣使ってたよな、それだぜ」
俺はキリサメの言う通りナイフを排出しキリサメに手渡した。
「こいつが元々使ってた武器らしい」
「はっ!
元々短剣使ってたのに無理やり刀使わされてんのかよ」
「仕方ねぇだろ!
俺刀以外教えられねぇし」
「知ってるよ」
キリサメと店主がそう軽口を叩き、キリサメはその店主にそのナイフを渡した。
「どれどれ……」
店主はそう言い、ルーペから目を覗かせながらそのナイフをじっくりと観察する。
だがその瞬間、一瞬にしてその場の空気は変わった。
「お前ら、黙ってろよ。
もし誰か喋ったり物音立てて集中途切れさせたら、殺す」
その店主は頬に汗を垂らしながらそういう。
俺らはその鬼気迫る迫力に押され、黙るしかなかった。
5分ほどだろうか、それほど経過したのちその店主に異変が現れる。
ポタポタという音共に目、耳、鼻、口から血を吹き出した。
「お前、その……人間!
この武器どこで手に入れた!」
店主は驚きながら怒鳴る。
それと同時に俺たちはその店主に駆け寄った。
「それよりも早く怪我なんとかしねぇと!」
「そんなもん今はどうでもいい!
後で治す!」
いや、今やった方がいいだろと思うが店主のその迫力に押されて押し黙るしかなかった。
「別にそのナイフはもらった?って感じだ。
多分王都の人たちに」
そう言うと店主は訳がわからないと言わんばかりに頭を抱える。
「どうしたんだ、打ち直せねぇのか?
そのナイフなんかやばいのか?」
キリサメがそう言うと店主はその顔から垂れる血を拭いながら答える。
「結論から言うと打ち直せねぇ、ていうか打ち直したくねぇ。
変に触れたらバチが当たりそうだ。
なんて言うんだろうな、神々しさとは裏腹に何か変な悍ましさを感じる。
吐血したのはそれに無理くり触れようとしたからだな。
ご主人様に触れられなくてキレてきた。
久しぶりにタマヒュンしたぜ」
店主はそう言うとしきりに左耳を触りながらそのナイフについて観察して分かったことを説明してくれた。
「このナイフに込められてんのは気とかそんな生優しいもんじゃねぇ。
もちろん微弱ながら気は感じる。
まぁ今までこいつを使ってきたのはざっと3、4人。
そこら辺はなんか良くわかんねぇ、そこの人間から感じる気で1人、残り2人はわかんねぇ。
とりあえずこのナイフは何かがおかしい」
店主が説明し終えると、キリサメと慎と店主が俺を睨むように見つめる。
「いや、ガチで何が何なのかわからねぇ」
「お前なんか、ことごとくすごいな」
「お前、こいつにここまで言わせるってあのナイフ相当ヤベェぞ。
他に心当たりねぇのかよ」
心当たり……か。
だったら、、、と俺はそう思いそのナイフで剣気を発動しようとした時のことを話した。
「キリサメに言ったと思うんだけどよ、俺はそのナイフで剣気を使った。
でもなんか、初めて発動した時変なもん見たんだよ」
「昔の使い手の記憶や経験だな。
何を見た人げ……慎二、何か手がかりになるかもしれない」
その店主は興奮した様子で俺にその話を早く話せと言わんばかりの目で俺をみる。
「俺もよくわかんねぇけど、、、
友じ……知り合いが殺される記憶を見た。
他人の空似とかそう言う次元の話じゃない。
だから俺はそれを未来な記憶だと思ってる」
「お前、ついに頭が……
流石に師匠の修行きつかったもんな。
後で医者に診てもらおうな」
「ちっげぇわ!
てか医者とかいたんだなここ!」
「未来な記憶……現実味は全くないがそのナイフがそれ以上の異常。
俺はその話、信じるに値すると思うがな」
「俺もだな」
店主と師匠が答えると慎が慌てたように話を合わせる。
こいつ手のひらくるくるじゃねぇか。
「んじゃどうする?
できればそのナイフでやった方がいいと思ったんだがな」
「というか何でこのナイフでやんなきゃだめなんだよ。
いいだろ新しいので」
「まぁ、今まで使ってきたやつの方が従えやすいだろ。
それに関係値深める必要ねぇし」
関係値ってなんかノアが言ってた気がするな。
武器の中の気を流用するってのとなんか関係あるとか、、、
俺とキリサメが喋っていると店主が旧に割って入ってくる。
「それはとりあえず俺に任せろ。
いいもん見せてもらった礼に一級品のもん打ってやるよ。
これからよろしくな慎二。
俺はノヴァっていうもんだ」
俺はノヴァから差し出されたその手を強く握り返し、「俺は伊藤慎二だ、よろしく」と言う。
「とりあえず、刀の方は上手くいったな。
修行再開するぞ」
「いいけど、何でわざわざきたんだよ。
別に今じゃなくてよかったろ」
「まぁ、これでモチベーション少しは高まっただろ」
「慎二聞きたいことあるんだが、お前さん兄弟かなんかいるか?」
「多分いねぇけど、それがなんかしたか?」
俺がそう言うとノヴァは顎に手を置き、何かを考えた後キリサメだけがノヴァに呼び止められた。
キリサメは「気にせず先帰ってろ」と言っていたので俺たちは言う通り先に家に帰った。
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「どうした、、、
お前が呼び止めるなんて余程のことがあんだろ」
俺はノヴァに連れられ誰にも聞かれないように鍛冶屋の奥で話していた。
「まぁな。
話すのはあのナイフについてだ」
ノヴァは左耳をしきりに触りながら話していく。
「どうした?」
「何言ってんのかわかんねぇだろうけど黙って聞いててくれ」
ノヴァはそう言うと、左耳を触っている手を震わせながらなにか恐れるように話していった。
「あのナイフの中の『何か』に触れた瞬間、血吹き出したろ?慎二の手前後で治すって言ったがよ。
今俺の左耳は完全に潰されててまったく聞こえねぇ。
治そうと思っても何かに蓋されたみたいに再生が止められる」
「んな馬鹿な!」
「そう思いてぇけどな」
「てかお前、左耳聞こえてねぇのにやけに冷静じゃねぇか」
「あんま俺を舐めんな。
お前も俺もあの戦争を体験してきただろ。
こんなん死ぬ経験ある俺たちからしたら屁でもねぇ」
「その割には手震えてるがな」
「うるせぇ。
さて、ここからが本題だからよく聞け。
俺があのナイフに触れた時感じた気配は"4つ"だった」
「気が3つでその何かが1つだろ?」
「あぁ」
キリサメが考えていると今の情報とさっきの会話に矛盾が生まれていることに気づく。
「お前、、、あのナイフ使ってたやつ3、4人って言ってなかったか……?
なんで4つの気配感じてんのにそんな濁して言った」
「その理由は、、、"同じ気"を感じたからだ。
まぁ正確には似て非なる感じだったけどな」
ノヴァは左耳を触りながら、自分を整えるように息を深く吐く。
「その気は"伊藤慎二"のものだった」
「そんなことありえねぇだろ」
「あぁ、だからこれはジジイの妄言だと思って聞け。
ナイフに内蔵されている伊藤慎二の気が二つ、
ノヴァは神妙な面持ちでその一つの事実を淡々と告げる。
「伊藤慎二は恐らく"2人"いる」
【 名 前 】 伊藤慎二
【 レベル 】 430
【 H P 】 43900/43900
【 M P 】 4000/5000
【 S P 】 300/350
【 魔 力 】 0/0
【 筋 力 】 886
【 脚 力 】 885
【 抵 抗 】 227
【 感 覚 】 227
【 スキル 】 身体強化《大》身体強化《中》治癒《中》治癒《小》隠密 火操作 水操作 風操作 土操作
【固有スキル】 亜空間収納
【ステータスポイント】 0




