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2話 始まりのあの場所へ


 いつも同じ夢を見る。


 俺と蓮と渚はキャッチボールをして遊んでいた。

 渚が蓮に向かってボールを投げたが、コントロールミスで道路側へ飛んでいってしまった。


「僕、取りに行ってくるからちょっと待ってて!」


 蓮はボールの方へ走って行った。

 ――あいつ、大丈夫か?

 俺と渚は少し心配になり、蓮の方へ視線を向けていた。


 その時、俺はそれが見えた。

 俺は蓮を助けるため、渾身の力で走った。

 正午の鐘が鳴り響く。

 そのせいで、蓮は俺の声にも、迫り来る車の音にも気づいていなかった。


 蓮はボールを取ろうと、勢いよく道路に飛び出した。

 それに気づいた運転手は慌ててブレーキを踏み、クラクションを鳴らしたが――もう遅かった。


 俺は飛び出し、蓮を押しのけ、そのまま身を投げ出した。


 キッ―――


 目の前が真っ赤に染まる。

 今まで感じたことのないほどの激痛。

 息ができない。頭がぼんやりする。


 最後に、蓮は無事かと視線を向けると、

 蓮は俺を見ながら、ブツブツと何かを呟いていた。


「僕のせいじゃない」


 そして、伊藤慎二は死んだーーー


___________________


「慎二! 早く降りてきなさい!」


 母の声で目が覚めた。

 空は暗くなっている。

 ……そっか、帰ってきてからずっと寝てたのか。


「分かりました」


 そう言い、部屋を出て階段を降りる。

 リビングに着くと、母はすでに椅子に座っていた。

 僕も向かいの椅子に座る。


「今日はあなたの好物のカレーよ!

 いっぱい食べなさい」


「いただきます」


 母さんと一緒に食事を始める。

 僕あんまりカレー好きじゃないんだけどな、、、

 だとしても食べ進めようとしたが、渚さんとの一件が頭から離れず、あまり食欲はなかった。


「もしかして、1学期の時もそうだけど……学校で何かあった?」


「なんでそんなこと聞くの?」


 その瞬間、心臓が跳ねた。


「母親だからね。そういうの、少しは分かるのよ」


 今まで心配させまいと、いじめのことは隠してきた。

 でも、もう気づかれているなら仕方がない。

 僕はいじめのこと、渚さんともめたこと、すべてを話した。

 話し終えると、母は間髪入れずに言った。


「今すぐにでも、渚ちゃんに謝ってきなさい」


「……やっぱり、母さんも渚さんの味方なんだね」


 そう言って立ち去ろうとしたが、母に呼び止められた。


「私は渚ちゃんの味方をしているつもりはないわ。

 でも、その話を聞いて、慎二が悪いと思ったから言ってるの」


 その言葉に、少し苛立ちを覚える。


「しょうがなかったじゃないか……病院で僕が昏睡状態から目覚めたとき、僕は何が何だかわからなかった。

 病院を退院したら編入試験を受けさせるために無理やり勉強させられてさ。

 学校に行くことになっても、親友と聞いていた人が僕のことをいじめてきたり、でも母さんが僕を心配してくれてるのは本当にわかってた。

 だから僕は本当に頑張って学校に行ってたんだよ。

 でも母さんが見てるのは過去の、記憶を失う前の僕だ!

 お願いだよ、、、今の僕のこともちゃんと見てよーーー」


 胸の奥に溜めていた思いを、すべて吐き出した。

 母は目に涙を浮かべた。


「それはごめんなさい……

 確かにあなたの言うとおり私はあまり今のあなたに目を向けてなかった。

 これがいいだろうと、勝手に過去の慎二と今の慎二を同じ人間として考えていた。

 本当にごめんなさい。

 でも、それでも渚さんには謝るべきだと私は思う」


「……どうして?」


「あなたが眠っている間、渚ちゃんは毎日お見舞いに来ていたのよ。

 部活にも入らず、あなたに会うために。

 毎日、今日あった出来事を話してくれていたわ」


 その言葉に、息を呑む。


「……そんなことあるわけないだろ、、、

 別にあの事故は渚さんに何か責任があったわけじゃないんだから」


「嘘じゃないわ。

 それは、あなたが一番分かっているはずよ」


「どういうこと?」


「あなたが目覚めた時、最初に会ったのは誰?」


 その瞬間、記憶が蘇る。

 目覚めた時、そばにいたのは――

 母さんじゃない。渚さんだった。

 その瞬間母さんは俺を強く抱きしめた。


「許せない気持ちもあるかもしれない。

 蓮くんのことはこっちで何とかしてみる。

 でも、まずはちゃんと渚ちゃん謝って話しなさい。分かった?

 それでも許せなかったらもう学校なんて行かなくてもいい。

 ちゃんと"二人で"考えましょう」


 その時母さんは初めて今の僕を見てくれたような気がした。

 その夜食べたカレーは冷めていたけど、僕が食べた中で1番美味しかった。


___________________


「転送の準備は、いつ頃整いますか?」


 金髪の少女が尋ねる。


「魔鉱石は十分です。

 あとは魔力抽出の準備が整えば、いつでも可能です」


 銀髪の少女が答えた。


「そう……今回の転移者たちが、優秀なスキルを持っているといいのですが」


「……また、召喚しなければならないのでしょうか?」


「仕方のないことよ。

 来る子たちには、本当に申し訳ないけれど」


 銀髪の少女は唇を噛み締め、静かに頷いた。


___________________


 翌朝。

 僕は駆け足で学校に向かっていた。

 学校に着いて下駄箱を見た時もうすでに半分以上の生徒が来ていた。

 その中には渚さんもいた。


 僕は急いで教室に向かい扉の前に立つ。


 ――今日は、渚さんに謝る。


 そう決めて、教室の扉を開けた瞬間。

 青白く光る魔法陣が、床一面に広がった。

 懐かしい感覚。

 一瞬で、教室が光に包まれる。


 目を開けると、そこは教室ではなかった。

 みんな困惑した様子を見せている。

 だが、柳だけは焦っている様子と裏腹に少し期待した顔をしていた。

 その中に、渚さんと柳、樋口くんの姿もあった。


「私の名前は、アーシャ・ローズと申します。

 貴方たちは、この世界に召喚されました。

 どうか、私たちを助けてください」


 少女は、深々と頭を下げた。


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