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番外編 記者・エマ


 私の名前はエマ・マクラス、しがない1人の記者だ。

 今私は崖っぷち、仕事でミスをしまくりクビ寸前です。

 私は会社のデスクで突っ伏している人の頭へ思い切り拳を振り下ろす。

 その瞬間その人は見てもいないのにその拳を軽々と受け止めた。


「いっきなり何だよエマ!

 気持ちよく寝てんのに……」


「流石戦争を生き抜いた人ですね、殴りたいのに殴れないじゃないですか。

 さぁ特ダネとりに行きますよ先輩!」


 この人はランド先輩、髪は赤みがかっておりかなりの巨体だ。

 顔はかなり老けているが本人は渋くてカッコいいだろうとか現実を受け入れられてない様子だ。

 私は先輩を引っ張り外へ連れ出そうとする。

 この人抵抗しすぎ、そんなに寝たいのかよ!


「いいじゃねぇかよもうちょい寝かせろ。

 特ダネなんていいじゃねぇか、最近の"墓荒らし"のことでも記事にしとけよ」


 墓荒らしとは最近多発してる墓地を荒らす輩のことだ。

 衛兵がこぞって彼を探しているが、行方が全く掴めないらしい。

 目撃情報によれば、"仮面をつけた謎の大男"という話だ。


「先輩もわかってるでしょ私が崖っぷちなの。

 手伝ってくださいよ」


 だが、そんなの有名すぎて数々の記者たちがネタにしてきた。

 私が望むのは誰も知らない世界が度肝を抜くほどの特ダネ、墓荒らしなど興味はない。

 私が引っ張っていると先輩は急に立ち上がり、そのせいでよろめき尻もちをついた。


「はぁ、せっかくいい気分で寝てたのによ。

 わぁったよ、さっさと行ってパッて終わらせんぞ」

 

 先輩は椅子に掛けてある上着を着て、歩き出した。

 この人仕事できるくせに、特ダネをあげたいって欲がない。

 もったいないなぁ。


「てか、特ダネ特ダネ言ってるがアテはあんのかよ」


 私たちはとりあえず会社を出て、ローズ王国の通りを通っていた。

 数々の人たちが賑わい、果物屋やジュエリーショップさまざまな店がある。

 ローズ王国は城を囲むように壁が建てられている。

 戦争時代の名残らしい。

 そこから北通り、西通り、東通り、南通りの4つがある。

 私たちが来ているのはその中で最も人通りの多い東通りだった。


「実はですね、最近路地裏で謎の男に襲われ負傷者が出ているという情報を手に入れたんですよ」


「暴漢かなんかだろ」


 私がそういうと先輩はどうでも良さそうに街を観察していた。


「それがどうにもおかしいんですよね。

 目撃情報によれば体は純白の肌に覆われ馬のような体をしているらしいです。

 そして、そんな状況なのに全く衛兵たちは動かない。

 おかしいと思いませんか?」


 先輩は唇に手を当てながら考え込んだ。

 食いついてる食いついてる、調べた甲斐があった!


「亜人か何かなのか?

 ダンジョンから連れ去ったモンスターが街に放たれてしまったってところか?」


「その可能性もありますよね〜」


 この世界にはダンジョンのモンスターを連れ去り高値で売り捌く闇ギルドというのが存在する。

 いつ、どうやって連れ去っているのかはわからないがレベルを上げるために買う人が多数いることは確かだ。


「着きましたよ」


 私はその裏路を指を刺した。

 そこは最近その亜人らしきものが目撃されたところだった。

 なにか痕跡があるのではないかと急いできたしだいだ。


 私たちはその裏路地へ入っていく。

 さっきまでの賑やかな雰囲気が急に変わる。

 薄暗く、背中をなぞるような不気味な風が吹いている。

 思わずその様子に身震いをした。

 歩いていると床に謎のシミを見つけた。


 私はよく観察しようとしゃがみ込んだ。

 これって、、まさか……!

 ーーそれは血痕だった。

 そしてその瞬間。


「避けろエマ!」


 私はその言葉に従い一瞬でその場を離れる。

 その瞬間後ろからは謎の破壊音が響く。

 後ろを振り向くとそこには、何かがいた。

 暗くてよく見えないが、鋭い眼光、四足歩行、髪は虹色?


「こいつは、、亜人か?

 だがどこか雰囲気が、、、」


 その瞬間その亜人らしきものは私に向かって襲いかかる。

 私は隠密を使い、その場から姿をくらました。

 私は仕事柄、隠密のスキルを使ってきた。

 そのおかげか、気配だけでなく姿までもを消せるまでに成長した。

 そして私はその亜人の背後を取り、隠し持っていた短刀で背中を突き刺す。


「グアァ!」


 その亜人は短刀ごと私を振り払い、その衝撃で飛ばされるが先輩に何とかキャッチしてもらう。

 その亜人は恐れたようで、尻尾を巻いて逃げ出した。


「先輩!」


「あぁ、わかってる!」


 先輩はその亜人を追いかける。

 私も短刀を拾い、先輩の後を追った。

 身体強化を回し追いかけるが、流石先輩とてつもないスピードでその亜人を追い詰めていった。

 だがその亜人は背中から鳥のような白い翼を生やして飛んでいった。


「エマ手ぇ貸せ!」


 その瞬間私は手を掴まれ思い切り上に放り投げられた。

 あんのクソ上司、部下をなんだと思ってんだ!

 帰ったらなんか奢らせてやる!

 私はなんとか着地をし、その亜人の血の跡を辿り追いかけた。


***


 亜人はその塀をよじ登り、その建造物の中へ入っていった。

 そこは、神宮教の本部だった。

 なんでこんなところに、、、

 塀をよじ登るわけにもいかないので私は正門へ走る。

 そうこうしていると先輩も追いついてきて、私たちは正門は向かった。


「どうして、、、」


 私たちはその閉じられた柵を掴み、その本部を眺めていた。

 神宮教とあの亜人は何か関係が……


「どうしたのですかな?」


 私たちが本部を眺めていると1人の老人が柵越しに声をかけてきた。

 その方は真っ白な服に身を包み、長い髭を蓄え、古びた本を片手に持っていた。


「教皇様ではありませんか」


 その男は神宮教の教皇だった。

 なんでわざわざ私たちに……

 だが好都合。

 私たちは亜人がこの中に入ったことを説明した。


「なるほど、事情はわかりました。

 ですが部外者を中に入れるわけにはいきません」


「どうして!

 凶暴なモンスターがこの中に入っていったんですよ?!

 衛兵を呼ぶべきでは……」


「申し訳ありません、教皇様。

 この子はなにぶん新人なもので、よく言って聞かせますので」


「いえ、大丈夫です。

 私はこれで失礼させていただきます」


 教皇はそう言い、本部内へ戻っていった。

 先輩は背を向け歩いていく。


「どうして、食い下がらなかったんですか……」


「お前は新人だからわからないだろうな。

 神宮教には"異端審問官"という人間が存在する。

 そいつは神宮教に害するものを排除する、いわば門番。

 恐らく、あの亜人は異端審問官に排除されるだろうから大丈夫だ。

 絶対に余計なこと考えるんじゃないぞ」


 先輩はそう言い歩いていく。

 だが神宮教はこの世界で最重要の組織、"孤児院"やあらゆる企業のサポートまでしている。

 この王国も神宮教のおかげで助かっている部分も多々あるだろう。

 神宮教はこの世の根幹を支える組織、みんな神宮教に助けられてきた、私も例外ではない。

 だから私は心配で仕方がなかった、神宮教が穢されてしまうことが……


***


私はこっそりと神宮教の本部へ侵入していた。

 あの亜人がどうなったのか、異端審問官とはどのようなものなのかが気になったからだ。

 まぁ特ダネを手に入れたいって思いもちょっとだけある、カメラで撮るくらいなら問題ないよね……


 私は隠密を使いこっそりと本部内を歩いていった。

 にしてもとても広いな。

 私はその中を見渡していた。

 活動時間外らしいので、光は消えて真っ暗だった。

 私は壁伝いで歩いていった。

 亜人を見つけたいとは言ったものの、流石に不法侵入はやりすぎだよなぁ。

 私が歩いていると廊下の奥から謎の光が漏れていることに気づいた。


「まさか被験体がこんなに早く戻ってくるとは思わなかった。

 やはり適合しないと自我を無くして、人を見境なく襲ってしまうね。

 レベルが高いと適合する確率が上がるのが最近わかったからね。

 動物なら簡単だが、流石に空……」


 話し声も聞こえる、まさか残っている人がいたのかと思い私は全力でその場を離れていった。

 やばいやばい、どこかに隠れないとぉ!

 私はとにかく走り、目の前にあるその部屋に飛び込んだ。


「はぁ、はぁ」


 私は汗を拭い、その部屋を見渡した。

 この部屋、やけに豪華だな。

 まさか教皇様の部屋なんじゃ……

 私は慌てて出ようとしたが、机の上にある本に目がいった。

 これって昼の時見た、教皇様が持ってた本だ。

 私は申し訳なさと好奇心が、せめぎあったが結局好奇心が勝ち、その本を手に取った。


 私が本を開くと1ページには謎の写真があった。


「……え?」


 その写真は意味がわからなかった。

 そこに写っているのは白髪の少年、だが普通じゃない。

 翼が生えていたのだ、白い翼が。

 これ、、人間?

 私はその写真の裏を確認すると日付と文字が書かれていた。


「これって日付的に100年以上前に撮られた写真だ。

 あとこれは……なんて読むのだろう。

 天の使い?」


 私はとりあえずその写真を置き、その本の中身を確認することにした。

 さて、、どんなことが書かれているのか……

 私は後悔した、その本を読んで。

 知らない方がいいこともある、この世の中の闇を。


 本を開くと、そこには"百年戦争"と書かれていた。

 百年戦争ってなんだろう、昔の戦争の名前かな?

 私は次のページを開いた、それはあるものたちが残した研究日記のようなものだった。


「……なに、、これ」


その中身は、、業だった。

人間のドス黒い悪意という悪意憎悪敵意醜い欲望それを煮詰めたようなそんなとても言葉で言い表せないほどのとてつもない醜悪な内容怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもいきもい気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪きもちわきもちきもちきもちきもちきもちきもちきもちきもちきもちきもちきもちきもちきもち良い気持ち良い気持ち良い気持ち良い気持ち良い気持ち良い気持ち良い気持ち良い気持ち良い気持ち良い気持ち良い気持ち良い気持ち良い


「うおぉえっ……あ、ごほっ……」


その込み上がる何かに私は身を委ね吐き出した口を押さえる暇もなくドロドロとした不快な液体がポタポタと床に垂れる音だけが耳にこびりついている脳が理解を拒む気持ち悪いを無理くり気持ち良いに変えないと精神が壊れる


「落ち着け落ち着け……」


私は何度も深呼吸をして平静を取り戻そうとする。


「ふぅ、ふぅ、ふぅ」


 気分も少しずつ落ち着いてきた。

 もしも、、もしこれが世に出てしまえばこの世界は混沌の闇へと突き落とされるだろう。

 どれほどの人間に被害が出るのだろうか……

 これを公表するべきなのだろうか。


「いや、とりあえず今はここから出ないと!

 そしてこの本に書いてあることが本当なら、教皇を止めないと。

 神、ステータスの真実、モンスターの起源、そして、最後の、最後の英雄たちを探さな……!」


「楽しそうではないか」


 その瞬間、私の心臓は凍りついた。

 その声に手足は震え、唇が震える。

 聞き間違いだ聞き間違いだ聞き間違いだ聞き間違いだ。

 そんなことあるわけが……


「そうであってほしくないかい?」


 その瞬間耳元で呟かれる。

 老人の声私は急いでその男を跳ね除ける。

 白い服に、蓄えられた髭、最近聞いた年老いた声。


「教皇、、、」


 こいつはこの本を持っていた、つまりこの世界の真実を知っているということだ。

 何故この本を持っているのだとか知ったこっちゃない。

 今はとにかく逃げないと殺される。

 扉の前に立っている教皇を無理矢理にでもどかして早く出ていく。

 その瞬間私は隠密を使い姿をくらませる。


「ほう、中々の熟練度じゃないか。

 その年でよくやっている方だね」


 教皇は警戒もせずに歩を進める。

 その瞬間、後ろのドアが開く音が聞こえる。


「なるほどそうくる……」


 その瞬間私は教皇の後ろに回り込み首を掻っ切る。

 そして教皇の首から大量の血が飛び散り、教皇は力無く倒れた。

 ーー絶命した。

 その事実に私はどうしようもない気持ち悪さを覚えた。

 早く逃げないと……

 私は扉へ歩を進める。


「でも、なんで"百年"なんだろう」


「それはねまだ終わっていないからだよ」


 その瞬間後ろから若い青年の声が聞こえる。

 私は短刀を持ちその声のする方向へ薙いだ。

 私の短刀は確かにそいつの首を刺した。

 だが、そんなこと気にも止めず私の首を掴み上げた。


「な、、、んで、殺した、のに」


「悪いね、その程度では"私達"には届かない。

 冥土の土産だ教えてあげるよ。

 百年戦争はねみんな大好きな、かの神様がつけた名前だよ。

 恐らく百年後に何かがあるとみんなに伝えたかったんだろうね」


「お、まえは、、あの……!」


「そうか、本を見たんだから私の顔に見覚えがあるのは当然か。

 さて、そろそろ」


 その青年は首に刺さっている短刀を抜き取る。

 もちろん血がとてつもない量流れ出るが一瞬にしてその傷は治った。

 その瞬間私はその男に手をかざされ、意識を失った。


***


「あれ、私何してたんだっけ?」


 私は神宮教の正門の前で意識を取り戻した。

 あれぇ?

 私亜人を先輩と追いかけてたんじゃなかったっけ?

 てかなんでもう夜なの?

 まぁいっか、とりあえず帰らなきゃ。

 私は自分の家へと戻っていくのだった。


___________________


「良かったのですか、処分せずに逃してしまって。

 ご命令があれば、私は急いで殺しに行きますが」


「いや、いいよ。

 あの子はもう"全てを忘れている"からね。

 慎重に行こうじゃないか。

 彼女と私の悲願のためにね」


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