23話 懇願
僕はその部屋でまた目を覚ました。
体を起こそうとしても鉛のように体が重く動く気が起きない。
こんなことしてていいのだろうか……
僕は今までなんのために戦ってきたんだ。
最初はとにかく生き抜くことだけを考えていた。
でも藤宮さんが危ないと知って、守るために僕は力をつけてきたんだろう?
記憶を失った僕を見てくれた、伊藤慎二を見てくれた数少ない人なのに。
僕はまたあの人を裏切るのか?
「ックソ……」
こんなことを考えているが、どうしても頭によぎる。
もしかしたらあれは藤宮さんじゃないのかもしれない。
あれは未来じゃないその可能性がある。
その可能性が僕の堕落を正当化する。
なによりもあのオーガや亜人たちに植え付けられた恐怖が、、逃げた今でも俺を縛り続けている。
「なんにも変わってねぇなお前」
僕は自分にそう告げる。
自分のために人を傷つける。
傷つけたら傷つけたで勝手に罪悪感に苛まれて、謝ろうって決めたのに謝らなくて………
本当になんなんだろうな。
「なんなんだよそれ!
そんなことする必要ねぇだろ!」
怒鳴り声がこっちの部屋まで響いてくる。
なんなんだろうか、この声は……大雲慎か。
耳をすましてみるとリリ達の声も聞こえてくる。
僕はなんとかその重い体を起こし、襖を開けその声がするであろうリビングに足を向ける。
そしてリビングの前に着く。
少しだけ空いている襖の隙間からリビングをのぞき聞き耳を立てた。
「慎、少し落ち着け」
「落ち着けだと?
なんで見ず知らずの奴のために師匠まで命懸けねぇといけないんだ!
あいつが戦いで負けたら師匠が死ぬだと?
ふざけんじゃねぇ!」
「まだ確定したことでもないだろ」
キリサメがそう言うと同時にリリも口を開いた。
「キリサメ!
確定したことでもないとはいえ、その可能性が一つでもあるってことだよ?!
慎二は、、、あいつはいい奴だよ?見れば分かる。
そういうやつの気と目をしてた。
でも私はキリサメに助けてもらった。
私はキリサメに死んでほしくないよ……」
キリサメが……死ぬ?
話を聞く限り僕が戦いに負けたらあの人が死ぬのか?
なんでなんでなんで!
意味がわからない。
その言葉に驚き、一歩引いてしまったせいで床が軋む音が響く。
「まさか!」
慎が襖を思い切り開けた。
そして僕とそいつは目が合った。
「伊藤慎二、お前のせいで!」
「やめろ、慎!」
慎は僕の胸ぐらを掴み上げ、拳を思い切り振るう。
その反動に抗えず僕は尻もちをついた。
「なんで、なんでこんな奴のために!」
慎は僕にまたがり拳を振り上げる。
ヒッと情けない声が思わず出てしまう。
その声を聞き、慎は拳を解き僕の胸ぐらを両手で掴む。
クソッという声が慎の口から漏れ出す。
キリサメは慎の肩にポンと手を置きなだめている。
「なん、なんだよ」
その声でみんなの視線が僕に集中する。
「なんで、僕にそんなに背負わせるんだよ。
こっちだって頑張ってんのに、ふざけんじゃねぇよ。
僕だって頑張ってきた、必死に恐怖心押し殺して、モンスター達と戦って、一人だけで寂しくなっても自分を奮い立たせて。
この街に来たとき、嬉しかったよ。
やっと人と会えた、もう一人じゃないんだって。
でもまた背負わせるのかよ。
またあいつらと戦わなくちゃいけないんだろ?
ボコボコにへし折られて……
痛くて、辛い思いはもう十分してきたんだ、耐えてきたんだ。
頼むよ、、、もう僕に戦わせないでくれよ」
僕は涙を流しながら必死に懇願する。
「……慎二、今は一旦いい。
悪かったな、少し横になってこい」
キリサメは今どんな表情をしているのだろう。
みんなも今どんな表情を……
だが、今の僕に皆の顔を見ることはできなかった。
【 名 前 】 伊藤慎二
【 レベル 】 370
【 H P 】 37900/37900
【 M P 】 3790/3790
【 S P 】 250/250
【 魔 力 】 0/0
【 筋 力 】 786
【 脚 力 】 785
【 抵 抗 】 177
【 感 覚 】 177
【 スキル 】 身体強化《大》身体強化《中》治癒《中》治癒《小》隠密 火操作 水操作 風操作 土操作
【固有スキル】 亜空間収納
【ステータスポイント】 0




