20話 久闊
「殺すんじゃないよ、ティグ」
「分かってるよ」
その後ろから現れたのは、狐の耳や尻尾のようなものが生えていることを除けば、ティグという亜人よりも人間に近い見た目をしていた。
髪は金髪、尻尾も金色に輝いている。
キリッとした目つき、妖麗その言葉が似合う亜人だった。
いや、そんなことは後だ。
だが、どこに逃げるというんだ?
ノアのところに向かうにはこの亜人達を超えなければ、、、
その時ノアのあの言葉を思い出した。
危険な時は部屋がある方向と真逆に走れだったか?
仕方ねぇ、、、
「さぁ、一緒に来てもらうよ人間」
「おーいクソ女ぁ!
そいつは俺の獲物だから横取りすんな!」
その時オーガが俺を追いかけ、接近してくるのに皆気づいた。
今だ!
俺は地面を殴り壊し、煙を上げその隙に俺は逆方向に走り出した。
「しまった!」
「だけど、あの傷じゃ僕からは逃げられないよ」
俺は必死に走った。
部位強化で脚を強化し走り続けた。
ノアはなぜ、逆方向に行けと言ったのだろう。
ダンジョンに仲間や安全な場所でもあるというのか?
考えても分からない今はただ走るし、、、
その時、俺は蹴飛ばされていた。
「おー、君結構速いねー。
追いつくのに3秒も掛かっちゃったよ」
は?3秒?
俺は部位強化まで使って、逃げたんだ。
脚力だって俺は高い。
こいつ、ありえないくらい速い。
「もう諦めなよ、悪いようには、、、
あっ、また逃げやがった!」
クソ!どうする?
あいつは俺よりも何倍も速い、見る限り身体強化も使ってねぇ。
だが、やられっぱなしってのも少しムカつくか。
だったら、、、
その時ティグは考えていた。
あいつ、何が目的だ?
僕とあいつじゃ、スピードには圧倒的な差がある。
なのに逃げるなんて、、、もしかして馬鹿か!
うんうん、それなら仕方ないよね!
自分と僕の距離が分かっていないのは馬鹿なせいなんだから!
「だけど、流石に逃すと僕も怒られるから脚の一本はもがせてもらうよ」
その瞬間僕はあいつとの距離を一瞬で詰める。
僕は、そいつの衣服を掴み、捕まえようと手を伸ばす。
だが、僕の手がそれに届くことはなかった。
その瞬間僕の視界が欠けた。
それと同時に激痛が走る。
僕は一度下がり、そいつと距離を取る。
ッ!何が、、、、起こって。
僕はその事実に気づく。
刺された、左目を。
「イッテェェェェェェェ!!」
何とか、うまくいった。
流石に、ただ目強化しただけじゃ追いきれない。
だから、片目だけに集中させたおかげでうまく反撃することができた。
速く逃げないと。
「ティグ、何してんのよ!」
「あいつ、いい気になりやがって。
僕はただ遊んでいただけだったのに、ぶっ殺してやる!」
「言っただろ!生かして拘束し、、、」
私は気づいた。
その人間が向かっている方向から、どこに行くのかが。
「おい、クソ女」
「分かってるよ、ティグ!」
「言われなくとも!」
その瞬間、俺に向かって虎の亜人が急接近した。
反応が遅れ俺は蹴飛ばされた。
「ッ痛」
「このクソ野郎、ズタズタに蹴り殺してやるよ!」
俺はその瞬間恐ろしいスピードが乗った蹴りが俺の腹に突き刺さった。
その衝撃で俺は後ろに飛ばされる。
「ティグ!」
その言葉を聞かずそのティグとやらは俺に攻撃を仕掛ける。
何回も蹴飛ばされる。
ティグは俺に近づきまたがり身動きを取れなくする。
「スカッとしちゃった?
僕から逃げられるとでも思った?
無駄だよバァカ!」
ティグは僕を罵りながら、何回も何回も何回も何回も殴り続けた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
殴られ続けると嫌でも思い出してしまう。
何回も柳に殴られ蹴られを繰り返されてきた、あの生活。
「はっ!
どうした?ブルブル震えて泣いてるのかよ」
あの時オークを倒すと決めた、封じたはずの恐怖心。
怖い、トラウマを刺激され殴られ続けなんて情けないんだ。
まだだ、俺は死ぬわけにはいかないんだ。
ゴギッ
そんな謎の鈍い音と同時に俺は悲鳴をあげた。
「逃げられると面倒だからね、折らせてもらうよ」
ゴギッ
そう言うと同時にもう一つの足の骨も折られる。
「治癒は使わないほうがいいよ、どうせ逃げられないんだから」
痛い痛い怖い怖い怖い。
なんで俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだ。
ただ、訳もわからずダンジョンに来てこんな辛い思いして……
で、でもまだ……
「あのさぁ、治すなっていたっでしょ?
僕の忠告を無視してさぁ」
え?
気づいたら足と腕の痛みが消えていた。
足が動く、手が動く。
その手足はなぜか治っていた。
治ってしまっていた。
「それじゃあもう一回行くよ」
「や、やめ……!」
もう一度鈍い音が響き渡り、喉を壊してしまうほどの大声で叫ぶ。
「だから治すなって言っただろ!」
また鈍い音が響く。
またまたまたまたまたまたまたまたまたまたまたまたまたまたまたまたまたまたまたまたまたまたまたまた………
「ゃ…ぇ」
「やっと治すかやめた?
無駄な抵抗しないでよ」
何回も折られ足の感覚ももうない、叫び続けたことによりもう声を出すことも叶わない。
もう涙も枯れてしまった。
僕はやっぱり、変われない。
「、、やっぱり、なんか変だな?」
後ろで僕らを見ているオーガがそう呟く。
「どうした?」
「いや、俺の攻撃であいつ片腕吹き飛んだはずなんだが、、、もう治ってるからよ」
「あの足同様治癒でもしたんだろう?
でももしそうじゃなかったら」
その狐の亜人は不気味に微笑む。
「ティグ!その子こっちに連れてくるんだよ!」
「分かったよ!」
もう、体が動かない。
いやもう抵抗もしたくない。
もう、いいだろう。
そう思うと同時に僕の意識はそこで途切れた。
「さて、君には僕たちと一緒についてきてもらうよ。
まっ、もう聞いてないか?」
「ちょいとまちな、ガキ」
「、、え?」
その瞬間、首筋に冷たい何かがあてがわられる。
刀だった。
僕は一切動けなかった。
本能で感じた、こいつには絶対勝てない。
殺される。
「ッ!キリサメ」
「悪いな、こいつを殺させることはできねぇな」
「なんのようだい。
あの約束で、お互い不干渉を貫いていただろう?」
私はキリサメにそう言った。
「あぁ、そうだな。
だが、こうも約束したはずだ。
俺の仲間に手を出したら、殺すってよ」
「そいつが仲間とでも言うのかい?」
「お前も気づいてるとは思うがここからは俺の縄張りだ。
俺の縄張りに入ったやつは俺が裁くべきだと思うがな」
キリサメ、面倒くさいことしてくれたね。
でも、私だって引き下がるわけにはいかない。
「だけど、その子は人間、その事実は揺るがないよ。
もしかして、元人間のよしみで情でも湧いたのかい?」
「そうだ、キリサメ。
その人間は殺すべきだ」
「こいつも懐かしいな。
だったらよ、分かりやすくしよう」
キリサメはニヤリと笑いながら地面に刀で切り込みを入れた。
「この線を越えたら、斬り殺す」
「「ッ!」」
その敵意、殺意からくる威圧。
一挙手一投足が死に直結する。
空気が恐ろしく重い。
「脅し?」
「そうとってもいいぜ?」
膠着、ピリついた空気が漂う。
どうする、もう戦うしか。
だけどここで戦ったら間違いなく。
「はぁ、分かったよ。
だったら条件をつけよう」
「何?」
「3ヶ月、それでこいつを強くする。
その時好きにやり合えばいい」
「それじゃダメだよ、長すぎる。
最高でも2週間」
キリサメはニヤリと笑い「それでいいぜ」と言った。
嵌められたね、わざと大きい数字を出して自分が望む期間を引き出した。
まぁいい。
「流石に、お前ら二人でやるわけねぇよな」
「私は戦わないよ。
したいこともあるしね」
「俺はタイマンでそいつを潰してぇけどな」
「許すとでも?」
「へいへい」
クソ、キリサメの手のひらで踊らされてしまってるね。
だけどこっちもやられっぱなしってのも癪だね。
「キリサメ。
こっちもかなり譲歩してやってんだ。
修行をつけ強くなった童がもし試合に負けてしまったら、わかってるね?」
「そんときは腹切るわ靴舐めるわなんでもしてやるよ」
なんでも、、か。
いい条件になったじゃないか。
上手くいけば、キリサメと童両方取れる。
「もういいか?
そろそろ行くぜ」
「それなら、さっさとティグを解放しな」
「おっと、忘れてたぜ。
早く行きな、ガキ」
ティグは顔を真っ赤に染め上げながら、私の方に走ってくる。
「んじゃ、俺はこいつ連れて帰るわ」
「あっ、ちょっと待ちなさい!」
キリサメはなんだ、と面倒臭そうに振り向く。
「なんで、あんこんな都合よくここにこれたんだい?」
キリサメは少し考えた様子を見せる。
「そうだなぁ、ただの気まぐれだよ。
散歩してたらたまたま見つけただけさ」
キリサメはそう言いながらその人間を抱えながら去っていった。
「"気まぐれ"か。
それじゃあ私たちも行くよ」
「ちょっと待ってよ、なんであいつに従ったんだよ!
こっちには、オーガもいるんだどうして戦わなかったんだよ!」
「わからねぇのかガキ」
「あぁ?!何がだよ」
「あそこで戦っても、良くて私とティグが死ぬ。
悪かったら相打ちか、全員やられてたよ」
私は淡々とそう告げた。
「なんで、、
そんなにキリサメは強いのかよ」
「あいつは、、、英雄よ、最後のね」
私はそう言い、歩いていった。
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【 名 前 】 伊藤慎二
【 レベル 】 370
【 H P 】 ?????/37900
【 M P 】 300/3790
【 S P 】 10/250
【 魔 力 】 0/0
【 筋 力 】 786 +163
【 脚 力 】 785 +162
【 抵 抗 】 177
【 感 覚 】 177
【 スキル 】 身体強化《大》身体強化《中》治癒《中》治癒《小》隠密 火操作 水操作 風操作 土操作
【固有スキル】 亜空間収納
【ステータスポイント】 0




