115話 手紙
ノヴァはまだ被害がない方向へ雫を抱え人混みを掻き分けて走っていた。
胸の5つの切り傷がかなり酷い、応急処置程度はしたがこのままじゃ……
そう思い、ノヴァは誰かいないかと周りを見渡すと安全な場所へと案内している二人の少女が目に入った。
あれは……
「リリ!ルル!」
「ノヴァと……雫さん!?」
そこには住民の避難を手伝っているリリとルルの姿があった。
リリとルルに敵にやられたことを伝えると、キリサメのことがよぎったのか顔を青くし急いで魔法での治療を進める。
ノヴァは治療を任せ、その間二人に代わって住民の誘導を進める。
「ん……」
「雫さん!大丈夫よ、絶対に死なせないから!」
「悪いねぇ、二人とも……」
雫は二人にそう言い、頬に手を置く。
ノヴァは雫が意識を取り戻したことに胸を撫で下ろし、誘導を続ける。
治療を進めていると、雫さんがルルに口を開いた。
「ルル、私の服の胸にあるもん……取り出してくれるかい?」
「わかった……?」
ルルは困惑しながら雫の服に手を入れる。
手を入れると、何かが入っていることに気づきそれを取り出した。
「これは……"手紙"?」
雫の胸の中には五枚の手紙が入っており、それは綺麗に折りたたまれていた。
そしてその一枚一枚には「リリへ」「ルルへ」「慎へ」「慎二へ」「住民のみんなへ」と書かれたものだった。
リリは雫の治療をしながら横目で見るがどういうことかわからず困惑する。
だがルルにはそれがなんなのかを……誰が書いたものかが一瞬でわかった。
「雫さん……これ!」
「そん中の一枚、慎二に届けてくれるかい……?もうちょい後で、渡そうと思ってたんだけどね。
事情が変わっち、まった……」
「ルル、一体これはなんなの?」
リリはその言葉の意味がわからず困惑する。
ルルは深く深呼吸をした後、その疑問に答える。
「多分……"遺書"だよ」
「一体誰の……まさか雫さんのじゃないでしょうね!?」
リリは声を荒げながらルルに聞くが、ルルは首を横に振った。
だが住民の誘導をしていたノヴァが書かれている文字を見た瞬間、ルルの持っている"遺書"を見る。
「この文字……いやんなことありえねぇ」
「ノヴァも?一体、それは誰が書いたものなの?」
ルルとノヴァは困惑した様子で、顔を見合わせる。
視線を交わし、二人が思い浮かべている人物が同じであることを察し二人が同時に口を開いた。
「「"キリサメ"」」
「……え?」
それを聞き、動揺のあまりリリの治療の手が止まった。
雫を除いてみんなその遺書が存在していることに、困惑を隠せなかった。
「ありえないでしょ……だってキリサメは!偶然死んだんだよ?!
たまたまあの日に、柳蓮が来て……それで!」
「だから困惑してんだよ……
そいつ一体、何考えてたんだ……?」
リリ、ルル、ノヴァはその"あるはずのない遺書"を見続けるのだった。
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「みんな!あっちの方向へ急げ!」
俺、伊藤慎二は一番被害の酷いその場所で住民の誘導を続けていた。
瓦礫に巻き込まれ、意識を失った人を助けたりお年寄りを運んだりと……誘導に勤しんでいた。
クソ……被害がデカすぎる!それにみんなパニック状態だ。一人ずつ声かけて落ち着かせてはいるが、人手が足りない。
こんな時、師匠ならどうする?一体どうする?!
「ウォォォォ!!」
「──ッ!」
気づけば目の前に、そいつは立っていた。
肌の色で先ほど慎が投げ飛ばしたそいつであることがわかったが、姿形はまるで変わっていた。
ライオッド以上の巨大な体を持つそいつは、路地に収まりきらず街を壊しながら移動し続けていた。
師匠だったら……キリサメなら、まず被害の大元を断つ!
「"剣気解放"『雨之御嘉神』反転率45%」
周りに被害を出したくない、最初から全力で倒しにいく!
走り出すと同時にそいつは動き出し、俺を狙って左腕を構えて殴る。
それを上に飛ぶことで避け、左腕に乗り駆け上っていく。
肩ほどまで走ったところで左に曲がり、頸動脈を狙って刀を抜く。
だが当たる寸前にトラウマがフラッシュバックし、腕が硬直する。
なんとか刀を振り首を傷つける。
「浅い……!」
だが止まったことで威力が死んでしまい、思った通りに切ることができなかった。
そして上を通り、着地しそいつの背中を取る。
だが雨之御嘉神は大業物、切れ味からなんとか切れる。
こいつは体が大きすぎるせいで後ろ向くのも一苦労、背中を取った今……
そして俺は走り出し、刀を構える。
刺して『焔刃』で内部から燃やしつくす!
「ホウシュツ」
その瞬間、光に包まれ衝撃波が発生し後ろにぶっ飛ぶ。
何とか羽を動かしそれに耐える。
そして衝撃波が止み、周りを見渡す。
そいつを起点に半径20mの建物が消し飛び、衝撃波のせいで頭を打ち気絶するもの……血を流し倒れるものがいた。
「──ッ!」
唇を思い切り噛み締め、怒りのままにそいつに向かっていく。
なぜだかそいつは先ほどと違い体が縮み、子供ほどのサイズになっていた。
だが頭に血が上ってしまっていた。自分の仕事を全うできなかった。
そのせいで……思考が鈍った。
「『不倶──!」
『待つのじゃ慎二!何かがおかしい!』
"悪食"が久しく出てきて、俺にそう叫ぶが耳には届かず気づいたら走り出していた。
刀にすぐに乗せれるだけのせ、炎に変換して込める。
一瞬、師匠のことが頭によぎり体が膠着する。
「ウォォォォ!」
雄叫びを上げ、力のまま思い切り……
「──戴天』!」
……振り下ろした。
爆発が起こり、そいつと俺は反発するように飛んでいく。
不倶戴天の反動で、元の姿に戻る。
その敵は炎に包まれ、燃え続けていた。
普通なら死んでるはずだ、だが……
「マジかよ……」
だが俺はわかった。感知でそいつがまだ……
その瞬間、そいつの体を包んでいた炎が吸収されるようにそいつの体内に入る。
そいつが起き上がると同時に、先ほどとは比べものにならないほど肥大化した。
横幅は大体15mはあるだろう、身長は40mほど……
こいつのスキルは恐らく相手の攻撃をエネルギーにして吸収……その内包するエネルギーの大きさに比例、体が肥大化するのだろう。
そして吸収した攻撃のダメージは無効化される。
さっきの攻撃で無傷なのが何よりの証拠だ、"影縫い"のように再生したわけでもない。
「どうすりゃ──」
その瞬間、衝撃波が俺の方だけに飛んでくる。
先ほどとは比べものにならないほどの威力、神気を纏っていない今……俺は軽々と吹っ飛び壁にめり込んだ。
衝撃で脳が揺れたのか、意識を失いそうになる。
そいつは俺にトドメを刺すことなく、街の……避難所の方へと歩いていく。
どうして、俺にトドメを刺さない……?何が目的で……
震える足を叩き起こし何とか立つ。
さっき出したからまだ神気は出せない、どうにか注意を引け……
そして、思い切り叫ぼうとした瞬間……
「クソ野郎ぉぉ!みんなのとこには行かせない……この僕が相手になってやる!」
「……カイ?」
その子供は一人、恐怖で震え泣きそうな顔でその敵にそう叫ぶのだった。
裏話……
慎二の予想通り、この敵の持つスキルは蓄積というもので食らった攻撃を吸収してそのまま相手に返す力です。
最初はダメージを食らいながら吸収してたのですが、時間と共にスキルが進化してダメージを食らわなくなりましたね。
あと元は人間でした。
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