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10話 躍動


「ノア?

 修行っつても何するんだ?」


「あなたにはまず、筋トレと体力作りをしてもらいます」


 ノアはそう淡々と告げる。

 筋トレ?

 なんでそんなことしなくちゃいけないんだ。


「今筋トレなんでしなきゃいけないんだとか思ってますよね?」


「、、、はい」


 ノアに考えていることを見抜かれ、少し肩をすくめながらそう言う。


「まぁ、筋トレをすることで筋力、脚力の能力値も上がっていくんですよ。

 筋力と脚力の能力値が高ければ高いほど身体能力も上がりますが、身体強化も能力値が高ければ高いほど強化にかかる倍率を上げることができます。

 逆にいえばその能力値が低かったら身体強化の本領を発揮できません」


「なるほど、体力作りは戦いの中体力切れにならないためってことだな」


「はい。

 タスクを私から出すのでそれをクリアしてください。

 ちゃんと報酬も用意しています」


 なるほど、報酬で俺の意欲を高めようというわけか。

 そんなのに俺が乗るとでも思っているようだな。


「さて、ノア私めは何をしたらよろしいのでしょうか」


「なんですか気持ち悪い」


「酷すぎるだろそれは」


 俺はそのタスクをこなし、筋トレに励んでいった。


___________________


 よっしゃ、まぁまぁステータスも上がり、体力もついてきたな。


「てか、ノア聞きたいんだけど。

 俺報酬でレベル上がってるけどさ、本気になれば俺のレベルをカンストすることってできるのか?」


「いえ、別にそういうわけではありません。

 私があなたのレベルを上げられるのはただ溜めている経験値を渡しているだけなので」


「貯めている経験値?

 部屋に入ってきたモンスターとかの経験値とか貯めてるのか?」


「まぁそんなところです」


 なるほどね。

 おかげで疑問が解けた。


「ある程度筋トレや体力作りは終わったので新しいスキルを覚えていきましょう」


「やっとか」


 ノアが教えてくれたのはMPの変換だった。

 MPは火、水、風、土に変えられる。

 ゴブリンが使ってたのはMPを火に変換して操作して色んなことができてたらしい。


「まぁ、火と同じ要領でやってみましょう。

 一回やれればスキルを獲得できるのでそっからは結構簡単です」


「まぁ、やってみるわ」


 火を出した時と同じ感覚だ。

 体が熱くなるイメージ、それを手に集中させて。

 吐き出す。


「おー、火出てきたわ」


「そうです、それと同じ感じでやってみてください」


 やってみろって火とかはあったかくなるイメージでできるけど、水とか風、土はよくわかんねぇんだよな。

 水とかなら全身が冷たくなるイメージとかか?

 体を全力で冷ます、それを手に集中して吐き出す。


「スッー、出来ねぇな」


「はぁ」


「んだよ!

 ため息つきやがってこっちだって頑張ってんのに」


「火球は簡単にできたじゃないですか。

 何が違うんです?」


「イメージしずらいんだよ。

 火出した時とかはめっちゃ焼かれまくってたから体が覚えて、うまくできたけどさ」


 あれ、俺やばいこと言った気がする。

 謎の悪寒が身を包む。


「あぁ、いっぱいやられたから上手くいったんですね。

 だったら次は水のゴブリンでやってみますか」


「いやちょっと待ってくれよ。

 俺、また何回か死にかけるよな」


「強くなりたいんじゃないんですか?」


「ッ……

  わかったよ、わかりましたよ。

 じゃあさっさと出せよ!」


 そこからは、地獄だった。

 プール作れるくらいの量の水が俺に向かって襲いかかってきたり、溺れ死にそうになったり、圧力かけた水で体貫かれたり。

 思い出したくもない。


「掴んできましたか?

 水の感覚」


「そりゃ、こんなに死んだらな」


 触れてみて、死んでみてわかった。

 水の質感、重さ、どんな匂いで、どれくらいの温度なのか、体内に水が満ちる感覚も。

 目を閉じで集中する。

 再現しろ、そして手に集中させ、吐き出せ。

 目を開けてみるとそこにはスーパーボールサイズだが確かに水玉ができていた。


 よっしゃこれで。

 案の定ステータスを見てみるとスキルの欄に水操作が追加されていた。


「これで、やっと終わったー!」


 やっと、寝れる。

 やっと飯が食える。

 その開放感で今にでも踊り出しそうなほど喜んだ。


「喜んでいるところ申し訳ないですが、まだ風と土が残っていますよ」


「、、え?」


「水操作が習得できたことでこの修行の仕方がいいと証明できましたので、次は風操作を獲得しましょう」


 俺はその言葉に絶望しながら、目の前に出てきたゴブリンと戦う羽目になったのであった。


___________________


「抜き足、差し足、忍び足」


 俺はモンスターに気づかれないよう、音を立てずに動き回る。

 ノアと出会って早一週間、俺はかなり強くなった。

 レベルはなんと136になり、頑張れば外の弱いゴブリンなら倒せるとノアに言われ、初のダンジョン探検に来ているのだった。


「それにしても、静かだなぁ。本当にゴブリンなんかいんのか?」


 俺は辺りを見渡しながらそう言う。

 それもこれも全て、最近手に入れたスキル、【隠密】のおかげだ。

 読んで字の如く隠れるのに特化したスキル。

 お金がなさすぎて頑張って自力で習得したスキルだ。

 これのおかげでかなり動きやすい。


 俺が呑気に歩いていた時近くから轟音が鳴り響いた。


「なんだなんだ?」


 俺はそこへ向かい岩陰からそっと覗き込む。

 そこではなんと亜人とオークとの戦闘が繰り広げられていた。

 オークは一振りで岩をも砕くその腕力で亜人を蹂躙していた。

 だが亜人も負けじと応戦。

 あいつらの攻撃を目で追うのがやっとだ。

 オークたちの攻撃の余波がここまで届いている。

 俺の背中に汗が伝うのがわかる。

 首筋に傷跡が残っていない、前のやつとは違う個体のようだ。

 馬鹿!何安心してるんだよ。

 俺はあいつを倒さなくちゃいけないんだ。


 それにしてもなんだあの腕力、身体強化使ってる様子もないし。

 流石腕力特化のオークだ。腕が大木みたいな太さしている。

 亜人はコウモリ型と蜘蛛型、虎にヤモリに色々いた。


 虫嫌いにはきつい絵面だな。

 その瞬間蜘蛛が素早い動きでオークの足に食らいつき傷をつけたと同時に蜘蛛の亜人は斬り殺されその死体がこちらまで飛んでくる。


 うわぁ、えげつない。

 これは亜人の負けかな。

 そう思っていた時オークの体がふらつき膝をついた。

 何があったんだ?!

 俺はオークの体を見渡しなぜオークが膝をついたのかすぐに気づいた。

 先ほど蜘蛛が傷つけた足が変色し血が流れ出している。


 おそらく蜘蛛の歯に毒が仕込まれていたんだろう。

 その隙に亜人達はオークに食らいつき頸動脈を噛みちぎり殺すことに成功していた。

 俺が蜘蛛と戦う時はできるだけ攻撃は喰らわないでおいた方がいいか。


 俺は首だけとなった蜘蛛を収納した。

 気づかれるかもしれないのでとりあえず俺は隠密+身体強化でその場を離れた。


***


 ここまでくれば大丈夫だろ。

 俺は亜空間収納(インベントリ)から水を取り出して水分補給をする。

 それにしてもあいつら強かったな。

 やっぱり、モンスターたちは基本群れで行動するのか。

 今の俺が太刀打ちできるのか?


 その瞬間ペタペタと音が響き渡る。

 来るか。

 俺は亜空間収納(インベントリ)の中から短剣を取り出し、構える。


 そこから顔を出したのは三匹のゴブリンだった。

 一匹じゃないのか、俺なんかで勝てるのか?

 いや、弱気になっていてはダメだ。

 今はただ集中しろ!

 あちらもこっちに気づいたらしい。

 部位強化を眼と手足に回す。

 必死に震えそうな手足を叩き起こす。


「、、、来い」


「グラァァッ!」


 俺がそう言った瞬間、一匹のゴブリンが先陣切って直進してきた。

 瞬間二匹のゴブリンも動き出す。


 まずは先に出てきた方を潰す!

 俺は目の前にいるゴブリンと距離を詰める。

 ゴブリンは蹴りを繰り出してきたがそれを防御し、その首にナイフを振ろうとした。


 その時後ろのゴブリンが現れ、ナイフを振ら下ろされる。

 俺は後ろに下がり右手に火球を生み出しゴブリン達に放つ。

 ゴブリンたちも火球を放ち相殺される。


 ふぅ、やっぱり三匹相手はキツイな。

 俺のほおには先ほど避けきれなかったせいでできた、切り傷があった。

 その垂れた血を拭いながら、思考を巡らす。


 相手はゴブリン三匹、お互いをカバーし合う形で戦ってくる。

 多分先に飛び出してきたやつ、あいつが1番強い。

 それなら、まずは分断する。

 俺はゴブリンが走り出すと同時に走り出た。


 ゴブリンは高く跳躍し、俺との間合いを詰め拳を振り下ろす。


 MPはあらゆるものに変換できる。

 力にも炎にも水にも風にも土にも。

 ノアに教えてもらった土操作のスキル。

 土を操作することで、先に出てきたゴブリンと俺との間に仕切りを作る。


 当たる寸前俺はスライディングして避け、地面に手をつく。

 それと同時に地面が隆起し飛び出してきたゴブリンと俺との間に壁を作った。


「さぁ、これで1対2だ」


 先に右にいるゴブリンを潰す。

 俺は短剣を右手に持ちゴブリンとの距離を詰める。

 ゴブリンは驚き動きが遅れた。

 その隙に短剣を腹部に刺そうとしたが左にあるゴブリンが火球を生成、俺に向かって放たれる。

 なんとかそれを避け、一度距離を取る。


 土の壁から破壊音が響く。

 土の壁はそう頑丈じゃないすぐに破られて面倒になる。

 それなら手と眼に身体強化を回すことをやめ、足に一気に力を込める。


 先刻の立ち会いでゴブリン二匹は俺の速さに慣れた。

 それを逆手に取り、身体強化を足だけにこめることでゴブリンたちの裏をかく。


 俺は一瞬にしてゴブリン達との距離を詰め、短剣をゴブリンの喉に突き刺す。

 それと同時に土の壁は破られ二匹のゴブリンは俺に向かって走り出す。

 距離を取ろうと短剣を引き抜くが虫の息のゴブリンが俺の手を掴み骨を折る。


「いってぇぇ!」


 これじゃ短剣が使えない、と思ったゴブリンたちは

俺に飛びかかる。

 これはチャンスだ、ゴブリンたちが勝利を確信し俺との間合いを極限まで詰めるその瞬間を待て!


 ーーー今だ!

 俺は短剣を収納→再排出し左手に短剣を持つと同時に飛び込んできたゴブリンの喉めがけて振り払う。


 一匹のゴブリンは空中で身を翻してなんとか喉をかすめながら避けたがもう一匹のゴブリンは喉を引き裂かれる。

 鮮血が宙を舞う。


 ゴブリンは俺と一旦距離を取る。

 チッ、さっきのでやりきれなかった。

 こっちは右腕が粉々で使えねぇ、だがあっちも首の傷は深いはず。

 そう思っていた瞬間、ゴブリンの喉が輝く。


 部位治癒(ヒール)か!

 スキルはイメージの世界。

 自分の傷が完璧に治るイメージをあいつはできる。

 俺は自分で身につけたわけじゃない。

 やっぱり強いなこいつ、しかも治癒(ヒール)の効果も多分俺より上だ。


 しかも治癒(ヒール)ができるってことは、、、

 ゴブリンの手足が強化される。

 やっぱり使える、どうするか?

 その瞬間ステータス画面が表示される。

 レベルアップしたのかこれなら、、、

 俺はゴブリンと向かい合う。

 さっき切り伏せたゴブリンの首元からコポコポと血が湧き出る。

 

 静寂ーーーゴブリンの首元からの最後の一滴まで血が搾り出されたその瞬間、、、

 同時に、俺らは動き出す。

 ゴブリンはそのナイフを俺めがけて振り下ろす。

 俺はそれを避けながら右手に火球を生成し放つ。


 炎と煙が舞いゴブリンの視界から俺が消えたその瞬間。

 俺は筋力と脚力に全てポイントを使い、身体強化を足にこめる。

 煙幕が掻き消えると同時に俺は隠密を使い宙を舞う。


 俺は天井に足をつき炎、風による推進力+部位強化+先程のステータスアップ。

 全てを込めた一撃をゴブリンに見舞う。


 轟音が鳴り響き、突風が巻き起こると同時にゴブリンの首元からは血が流れ出る。

 ゴブリンの目から光が失われると同時にステータス画面が開き、レベルが上がった。


「はぁはぁ、俺は勝ったのか?」


 ーーやっとだ、俺はやっと拳を固く握りしめながら地に伏した。

 まだだ、俺はショップで買った治癒(ヒール)の効果があるポーションを亜空間収納(インベントリ)の中から取り出し一気に飲み干す。

 みるみるうちに傷は治り、腕も完全に動くようになった。


 とりあえず、ゴブリンたちに触れ収納する。

 もう疲れた、今日はもう戻ろう、、、


 ーーーあれ?

 あの部屋の場所って〜どこだっけ?

 スゥーーー、終わったか?これ。

 俺はダンジョン内で一人彷徨うことになったのだった。

___________________


もう1話投稿するつもりなのでぜひ読んでください!

次気になる方はブックマークぜひよろしくお願いします!



 【 名 前 】 伊藤慎二

 【 レベル 】 153

 【 H P 】 14200/16200

 【 M P 】 800/1620

 【 S P 】 80/150

 【 魔 力 】 0/0

 【 筋 力 】 350 +42

 【 脚 力 】 350 +42

 【 抵 抗 】 70  

 【 感 覚 】 70  

 【 スキル 】 身体強化《小》治癒(ヒール)《小》隠密 火操作 水操作 風操作 土操作

 【固有スキル】 亜空間収納(インベントリ)

 【ステータスポイント】 0


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