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99話 第二試合


「"剣気解放"『荒吹雪』」


 そして私は刀を抜き、刀の中にいるそいつの気を引き出した。

 私が解放した瞬間、ルルは顔を顰める。


「安心しな、この刀には何の力もこもってないよ」


「……信じるとでも?」


「んじゃ、試してみるかい?」


 私はそう言いながらルルとの距離を一瞬でゼロにし、そいつの首に刃を振るった。

 だがルルも反応してその攻撃を後ろに飛び軽々と避ける。


「あら、惜しかったね」


「どこが──」


 その瞬間、そいつの首から血が吹き出した。

 それを見たルルは一瞬で青ざめ傷口を抑えて治……


「させないよ」


「……ッ!」


 再度は私は距離を詰め、刀を振り下ろすがルルはすんでのところで杖で守り鍔迫り合いへと持ち込まれる。

 力勝負じゃ私は負けるが、治すのに力使ってるから弱いね。


「"炎の太刀"」


 私は剣気を炎に変え、ルルを巻き込みながら爆発させる。

 逃げられたね、爆発の寸前に手応えがなくなった。

 瞬間、後ろからルルが何かを練っていることを察知した。


「"ブレイズアーク"」


 後ろを振り向くとそこには大きな炎の球を構えるルルの姿があった。

 そしてルルはその貯めた炎をこちらへ飛ばす。

 当たったらただじゃ済まないが……


「んな見せびらかすもんじゃないだろうに。

 『水の太刀』」


 そして私は刀に水をこめて飛んでくるその炎へ斬撃を飛ばす。

 炎と水がぶつかり合い、白い煙を上げ爆発を起こしルルが視界から消える。

 あの状態のあいつと私じゃ力勝負じゃ分が悪い。


 その瞬間、目の前の煙からルルが這い出て拳を振るう。

 だが感知でそれをわかっていた私は避けるが頬を掠める。

 手に持っている刀を腹から鎖骨を切るように振り上げるが、地面の土が隆起しそれを防ぐ。


「チッ……!」


 その隙にルルは振るった腕で私の服を掴み引き寄せ、隆起させた岩を壊しながら私の腹に膝を入れた。

 ルルは私の服を離さず、残るもう一本の手で追撃を入れようとするが……


「"風の太刀"」


 刀に込められている風が回転、私の周囲に竜巻が発生する。

 ルルは後ろに飛んでそれを回避するが、私の服を掴んでいたルルの腕が巻き込まれて切り落とされる。

 部位硬化でこれかい……

 先ほど膝を入れられた腹がズキズキと痛み抑えていると、ルルの腕は一瞬で治っていく。


「嫌になるねぇ治るってのは」


「………」


 ルルは私と全く目を合わせようとせず何も言わなかった。

 闘技場に来て対戦を決めた時もそうだ、ルルはずっと何も言わずに顔を俯かせていた。

 そっちにも何か理由があんだろう……


 その瞬間、ルルは地面を思い切り殴り土埃を上げる。

 また隠れんのかい、無駄だがね。

 ルルの今の状態は自分の周囲にある気を吸収し押し固め背中に生やして擬似的に器を作ってる関係で……


「見やすいんだよ」


 私は居合の構えをして刀に気を込め、切れ味を強化していく。

 借りるよキリサメ……

 そして私は刀を抜く──


「『天絶』」


 そして私はそれをルルに向かって放った。

 私の感知に映るそれは『天絶』で首が飛んでいく。


「ふぅ……私の勝──」


 その瞬間、背後からルルの声が聞こえた。

 なぜだ、切ったはず、感知に引っ掛からなかった、その疑問はルルの姿を見た瞬間解消された。

 "子供の姿に戻っていた"──

 ダミーか……!


「入るね、雫さん」


「しまっ──」


 その瞬間、腹に触れられ気を流し込まれ私とルルの意識は飛んでいった。


***


「んっ……どこだいここ?」


 私は真っ白の空間で目を覚ました。

 そうだ私はルルに腹触られて意識を……


『──ル、ルル……』


 その瞬間、何者かの声が頭に響く。

 何だいこれは……

 そして頭の中に何が情景が浮かんでくる。

 もしや……ルルの記憶?

 気とは心の源、ルルは私の器に気を流し込んだ。

 そのせいでルルの記憶が流れ込んで……


『ルル、アンタに頼みたいことがあるんだ』


 これは……タシテス?

 その瞬間、頭にかかっていた霧が晴れルルの記憶が鮮明に見えた。


『何で、ここに……』


 ルルとタシテスが喋ってる場所は、私たちの街だった。

 どっかで隙を見て侵入されたのか……

 その瞬間、その時のルルの感情が私に流れ込む。

 畏怖、嫌悪、吐き気、汗が全身から吹き出し、頭が真っ白になり血の気が引き、過呼吸になる。


『アンタには、キリサメを殺してほしいんだ。

 できるね?』


『……だ、嫌だ!私はキリサメを殺したくない!』


 やっぱりルルはやりたくてやったわけじゃない。

 一体何が……

 そしてそう言われたタシテスはため息をつきながら口を開いた


『アンタとリリの気の器に"爆弾"を仕込んである。


『ぁっ……』


 タシテスこいつ、リリを人質に取ったのか!

 私たちは気で体が構成されている、もし気の器が完全に壊れれば体は崩壊して死に至る。

 やっぱり、リリやルルが何も仕込まれてないわけがなかった。

 キリサメがリリとルルをタシテスとの交渉の末に連れてきた時私たちは何かないか必死に調べた。

 気の器までは気がまわってなかった……!


『私の合図一つでアンタたちは死ぬ。

 アンタとリリは仲良しだったよな、いいのかい死ぬことになっても……?』


『リリは、関係ないじゃん!

 どうして……殺すなら私にしてよ、私なんかただの紛い物なんだから死んでもまた作ればいい!

 なのに……!』


『だったら断るかい?』


 クッソ……

 私は思わず拳を血が滴るほど強く握りしめる。

 キリサメだけじゃ飽き足らず、リリやルルまで……

 ルルは膝から崩れ落ち泣き続ける。

 そしてルルの心が私にも流れ込んでくる。

 嫌だ、キリサメを殺したくない……助けてもらったのに、恩を仇で……

 けどそしたらリリが……

 キリサメならもしかしたらなんとかしてくれるかもしれない、だが心の奥底まで刻まれたタシテスの恐怖には……


『……わかり、まっ……した』


『それでいい、大事な人は死んでも守るべきだ……

 決行日や殺し方は追って連絡する。

 脅すようなことして悪いねルル』


 そう言いタシテスは転移でその街から去っていった。

 そしてまた、場面は切り替わる。

 これは、亜人が慎二を目的に街に来た時だ。

 陽動だったのか……

 そしてタシテスはルルにその刀を渡す。


『これでキリサメの腹を突き刺しな。

 そうすればアイツの気を吸い取り、殺してくれる。

 できるかい?』


『……』


 ルルは無言でそれを受け取り頷く。

 タシテスは優しく微笑み頭をポンと撫でた後、転移で去っていった。

 また場面は切り替わり、そこはうちのリビングだった。

 机には食べられたケーキやリリが作ったご飯が並べられ、私や慎二と慎、リリとキリサメが床に寝転がっていた。

 誕生日、キリサメが……


『……』


 そしてルルは幸せそうに寝ているリリの頭や顔、頬をつねったりした。


『むにゃむにゃ……』


 それを聞いたルルは目に涙を浮かべた。

 けど、最後は笑顔の方がいいよね……

 というルルの心が流れ込み、袖で涙を拭き取り精一杯の作り笑顔を浮かべながら……


『"バイバイ"』


 ルル……作り笑い、下手すぎだよ……

 そしてルルは寝ているキリサメを揺すり起こした。


『ルルか……』


『話したいことがあるから、着いてきて』


『そうか……わかった!』


 キリサメはそう言い立ち上がり、ルルの後をついていく。

 不安、恐怖、後悔、色々な感情が渦巻き手が震える。

 その瞬間、キリサメがルルの頭をポンと撫でた。


『ごめんな、ルル』


 そしてキリサメの部屋に入ったところで記憶は途切れた。

 私は後ろにいるそれに気づき、目に浮かべていた涙を拭った後に振り向いた。


「よぉルル」


「……」


 私はそう言うがルルは目を合わせず、何も言わなかった。

 そして私はルルの方へと歩を進めた。


「……ッ」


「動くな、じっとしてな」


 ルルは頬に汗を流し、拳を握りしめる。

 そして私が手を振り上げると、ルルは覚悟を決めたように目を瞑る。


「……え?」


 私はルルを抱きしめた。

 ルルは何が起こっているかわからないようで、そんな声を上げた。

 殴るとでも思ったのか、全く……


「悪いねルル、私たちはあんたを信じさせてやることができなかった。

 もしも私たちがあんたにもう少し、もう少しいい背中見せられてたら変わってたのかもしれないねぇ……」


「……して、どうして……

 怒ってよ、憎んでよ、殴ってよ、貶してよ、怒鳴ってよ……

 私のことなんか、殺してよ……」


 今、ルルと私は一心同体。

 そのおかげかルルの思っていることが何となくわかる。

 怖いんだろう、騙して殺して貶して酷いことをした。

 なのに一ミリも怒ってくれないことに……


「私はあんたを憎んじゃ居ないよ」


「何で……

 私を、嫌いになってよ……」


「嫌いになられて楽になりたかったかい?

 恨まれて苦しんで妬まれて、そうして少しでも罪を精算したかったかい?

 そりゃ無理だよ、あんたはずっとその業を背負って生きていくしかないんだ」


「……ッ!」


 ルルは手を振り上げ、私を殴ろうとする。

 認めたくないんだろう、私を殴って少しでも怒って欲しいんだろう。

 だけど……

 私はルルの手首を掴み、それを止めた。


「やっと、目を見て話してくれたね」


「あっ……」


「ごめんね、あんたを信じさせられなくて……

 だから次は信じて欲しいんだよ、私じゃなくていい、誰でもいい。

 そんなでかいもんを一人で背負おうとすんじゃないよ」


「……ッ!」


 ルルは私を拒絶するように突き飛ばし、そして私たちは元の世界へと帰っていく。


***


 そして私たちは同時に起き上がり、走っていく。

 ルルは再度気を集め、大人びた姿になり拳を構える。

 あぁは言ったが試合は試合、だからこそ倒させてもらうよ。

 そしてルルの拳が私の眼前に迫り……


「陸天流居合──」


 そして私は踏み込み、刀を抜く。

 どちらの攻撃が入るかの勝負私はルルの横を通り過ぎた。

 そして私は刀をしまい……


「『無明・五蘊』」


 しまうと同時にルルの体から血が吹き出し、倒れる。

 だが私も少し擦り頬から血が垂れる。

 私も鈍ったもんだ、あれも避けられないとは……


「だっ、第二試合勝者は……雫選手!!」


「「「ウォォォォ!!!!」」」


 その瞬間、勝利のファンファーレが鳴り試合は決着した。

 街のみんなは私が勝ったことで士気が上がり、歓声を上げた。

 ……そうだ!

 そして私は審判からマイクとやらをぶんどり観戦室にいる慎二を指差した。


「さぁ道は整えたよ!あとは頑張りな慎二!」


 私がそう言うと共に街のみんなは再度歓声を上げ、戦いの幕は閉じていった。



無明・五蘊は通り過ぎざまに相手にめっちゃ速いスピードで5回切るって技です。

陸天流の奥義なんでかなり雫さんすごいです。

ブクマや評価楽しみに待ってます。


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