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98話 剣


「あれ……俺」


「起きたか、慎」


「心配したわよ……」


 俺、大雲慎は見知らぬベッドに横たわっていた。

 そこには慎二とリリがおり、ここは闘技場の医務室であることが告げられる。

 リリは雫さんに俺が起きたことを伝えてくるらしく部屋を出ていった。


「慎二、俺負けたよ……」


「──ッ……」


 俺は溢れ出る涙を慎二に見せまいと手で顔を覆いながら苦しそうに何とか声を絞り出しながらそう言う。


「あの後、何があったか……聞いていいか?」


 慎二は言うか一瞬躊躇いながらも口を開いた。


「あの後、俺たちは……」


──────────────────


 時は少し前、慎がライオッドと戦っているところまで遡る。


「教訓としてこの敗北を刻んどけ。

 "剣気解放"『ヴォルカニカ焔刃』」


「避けろ!慎!」


 もう試合は決している、その攻撃を喰らったらただでは済まない。

 俺は急いで観戦室から闘技場へ飛び出したが遅かった。


「綺麗だ」


 慎は何か小声でボソッと呟き、その攻撃は繰り出された。

 衝撃波で土埃が舞い、俺は後ろへ飛ばされそうになるが何とか耐える。

 慎もその衝撃で吹っ飛ばされ壁に激突する。

 俺は何とか土埃の中に慎に寄ってくるライオッドの姿を捉える。


「慎!」


 俺は急いで駆け寄り呼びかけるが意識はなかった。

 骨も内臓も損傷しているようでかなりのダメージを負っており、左半身にかなり酷い火傷を負っていたが呼吸はしていた。

 安心と共にある感情が湧き上がりライオッドの方を向く。



「『不倶戴天』打つ必要なんかなかったはずだ!

 勝負は決まってた……なのに!」


「2回も戦ったんだからわかった、そいつは天才側の人間だ。

 だってのにそいつそれを自覚してねぇ。

 なのに自分は強くなりたいとか抜かすんだ、テメェはもうそれを持ってるってんのに。

 見てるとムカつくんだよ、昔の俺みてぇで」


「だとしても……殺そうとしたのは事実だろ!」


 俺がそう言うとライオッドはため息をつきながら後ろを指差す。

 そこにはクレーターのような地面の凹みができていた。

 あそこ慎の真横らへん……


「直前で軌道を逸らした。

 流石に殺したらお前、俺に協力しなくなるからな。

 第一試合は俺の勝ちだ、残り二試合頑張れよ」


 そう言い、ライオッドは魔法陣に乗り消えていった。

 その瞬間、審判がライオッドの勝ちを宣言し観客の亜人たちは歓声を上げた。

 クッソ……

 俺は慎を背負い、審判から医務室の場所を聞いた後闘技場を去る。

 通路の先に雫さんとリリが心配そうな顔で立っていた。


「生きてはいるそうだ。

 これから医務室に運んでくる」


「私もついていくわ、医務室に着くまでにできる限り傷を治し──」


「……ん」


 その瞬間、慎からか細い声が発せられた。


「ご…めん……」


「ッ……寝てろ」


 その謝罪を聞いた瞬間、俺たちは顔を俯かせた。

 俺のせいで慎をこんな目に合わせた、死なせるかもしれなかった……

 俺のせいで……

 俺はリリを連れ医務室へ向かうのだった。


──────────────────


 慎二は事の経緯を説明し終える。


「そうか……」


 俺はそれを聞き終えると肩を落とし、そばに置いてある『布都御魂』を見る。

 キリサメ……俺、何もできなかったよ……


「大丈夫だ!

 あの二試合、絶対に勝ってきてやるから……!

 だから……」


「お前はいいよな……」


「……え?」


 俺はそれを言った瞬間、目を見開き思わず手で口を塞いだ。

 馬鹿か俺……慎二もこんなことに巻き込んで責任感じてるはずだ。

 慎二は今、いちば──

 だが俺は慎二が一番辛いと、心の底から思えなかった。


「悪い、悪い慎二……

 ホントに、ごめん……」


 俺は自分の弱さを、自分の発言を戒めるようにそう言う。

 そうすると慎二は精一杯の笑顔を浮かべながら……


「起きてくれたようでよかったよ!

 そのままちゃんと寝とけよ、傷開いたら洒落になんねぇからな!

 んじゃっ俺は観戦室に戻って雫さんの試合でも見るとするわ!」


 慎二は何も気にしてないと言うような顔で部屋を出ていった。

 俺、俺は一体何してんだよ……

 負けたイライラを慎二にぶつけて、それでも俺に気にさせないように気を遣わせて。

 これからあいつは試合だってのに、俺は足を引っ張るばかり。


「こんなことなら、剣なんてや……」


「ダメだろ、その言葉は。

 お前が一番いっちゃいけねぇ言葉だぜ?」


 その瞬間、扉の方からそんな声が聞こえる。

 この声……

 その方向を向くとそこには……


「ノヴァさん……?」


「よっ慎、慰めに来てやったぞ」



──────────────────


「そうかい、慎は起きたんだね」


 私はリリから慎が起きたことを伝えられる。

 生きてるようでよかったよ、けど精神の方はかなり来てるだろうね……

 ここで私が負ければ終わり、全てが終わる。

 何も救えないまま、全てが失われる。


「んじゃあ行ってくるよリリ」


 私はリリの頭を撫でながらそう言うと、その通路を通っていき闘技場へ向かう。

 懐かしいねこの感じ、負けちゃいけない、何も取りこぼしちゃいけない……


「もう感じたかなかったけどね」


 私は歩きながら襷をかける。

 やるとしようかね……

 そして私はそこへ出た。


「「「「ウォォォォ!!」」」」


 観客の声や照明が私を照らす。

 みんなは慎が負けてかなり下がってる、逆に亜人側はテンション高いもんだ、おかげで耳が痛い。

 そしてそいつは奥の通路から顔を出した。


「さぁ第二試合、ルルvs雫!」


 審判がそう何かを口に当てながら言うと会場中にその声は響き渡り、観客たちは湧き上がる。


「へぇ随分と便利なもんだ、声をでかくできんのかい」


「うん、マイクっていうらしいよ」


 私がそう言うとルルは反応して答える。

 ルルはいつも以上に無機質に、まるで感情を押し殺しているような様子だった。


「一応聞くがこっちに来る気はないんだね?」


「ないよ雫さん。

 悪いけど、全力で倒させてもらうよ」


 その瞬間、前に慎二と戦ってた時に見せた気の羽のようなものを形成し大人びた姿へ変貌していく。

 ルルのその言葉に私は鼻で笑い飛ばしながら……


「そういう冗談は、ちゃんと目ぇ見て言いやがりなルル!」


 そして第二試合が開始するのだった。


裏話

このマイクはタシテスが作ってくれました。

魔法とか色々応用して作ってあるそうです。

是非、ブックマーク登録や評価を楽しみに待ってます。


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