97話 第一試合
俺たちは試合が決まったのち観戦室に戻っていた。
俺の相手は影縫い、異名やナマケモノの発言から察するに影を自由に操るスキルを持っている。
99階層のエリアボスで樋口くんに倒された、つまりいつかクラスメイトのみんなが来るかもしれない。
今すぐ来ても、おかしく……
「そろそろ、行ってくる」
そんなこと考えていると慎は立ち上がる。
こいつ、ライオッドと戦うことを聞いた時からずっと緊張してる様子だ。
待つ側はこんな気持ちだったのか……
「勝ってきなよ」
「あぁ、キリサメの代わりにきたんだ。
それに慎二たちの命もかかってる、絶対に負けられない」
慎はそう言いながら部屋を出ていく。
俺は闘技場へ目を向け、試合の始まりを待っていると闘技場の真ん中に亜人が現れる。
ナマケモノじゃないのか……
その瞬間、闘技場の地面に魔法陣が現れそこからライオッドは召喚される。
続いて慎は左側の通路から現れた。
「さぁやってまいりました!
初戦はライオッドvs大雲慎、勝ち星を掴み取るどちらか……!」
「行くぞ大雲慎、加減はなしだ」
「来いよライオッド!」
その瞬間、戦いの火蓋は切られた。
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俺、大雲慎は足を強化。目にも止まらぬ速さで走る。
背後を取って……
一閃──ライオッドは大剣を振るう。大剣を振るっただけだった。
だがその時、俺の体が宙を浮かぶ。
ライオッドは一振りで風を巻き起こし、俺を飛ばしたのだ。
「止まってんぞ!」
その隙にライオッドは一瞬で背後を取る。
反応するより先に大剣が俺に接近、捉える。
「見えてるよ!」
俺は感知で一瞬で状況を把握。
空中で身を翻し刀でその攻撃を弾く。
「おっ……!」
弾かれるとは思っていなかったのか驚いた様子を見せる。
追撃しようと俺は走り出す。が俺は距離をとった。
これほどとは……
顔を顰め腕を抑える。
俺がさっきライオッドの攻撃を弾けたのは器を壊すほどの過剰強化、予想外の強い痛みに思わず距離を取り俺は腕をすぐに治す。
「追撃すればよかったのに……よ!」
「はっ……?」
体が先に反応しその攻撃を受け流す。
ライオッドは自分の持つ大剣を俺に向かって投げたのだ。
なんとか刀で受け軌道を変えようと踏ん張る。
だがすぐにライオッドは接近、俺を思い切り蹴り飛ばす。
壁に大剣と共に激突、硬化はしたが内臓まで衝撃が走り血を吐く。
俺はアンデッドモンスター、体は気で構成されている関係で吐いた血液はすぐに霧散する。
揺れる視界を叩き起こす。
なんとかライオッドを捉えるがすでに大剣を持ち上げ、俺に向かって振り下ろす。
その衝撃で地面にヒビが入り、土埃が舞う。
「……ぶっっねぇぇ」
俺は立ち上がり刀でその攻撃を受けていた。
踵、腕の骨にヒビが入る。
痛みより先に思考を働かせろ、このままじゃ圧殺される。
受け流すのは無理だ……!
「うぉ……?!」
ライオッドの足の土を操作し浮き上がらせ体勢を崩し後ろによろめく。
力が緩んだ一瞬の隙を見てそこから抜け、ライオッドの眼前に迫り刀を突き刺す。
気色の悪い感触と共に全身に生暖かい液体がかかる。
たがそんなこと気にも留めず俺を掴もうと腕を伸ばす。
「もうちょい痛がれよ!」
刀を引き抜き俺は跳躍、宙を舞う。
ライオッドは倒れざまに大剣を俺に振るう。
足場もないし受けれねぇ!
機転を効かせそれを足場がわりに俺は闘技場を抜け30mほど飛び上がる。
今のうちに思考を回せ、あいつの対抗策を講じろ……!
強化しすぎると壊れる、その痛みに俺はまだ耐えられねぇからまともに動けねぇ。
使うならここぞって時にだ。
それにあいつの皮膚も鋼みたいに硬い、攻撃が通る気が……
『小童、随分と苦戦してんじゃねぇか。
私の力はいらんのか?』
その瞬間、刀の中に引き摺り込まれ血の海の世界に俺はいた。
そこは数々の骸骨が転がっている、まるで地獄のような光景だった。
「御魂か……
そりゃ欲しいさ。
けど言っただろ、俺はまだ剣気はできねぇんだ……」
それに剣気解放したとして、お前の気の量に俺の器が耐えられない。
俺にはまだそれは早すぎる……
『できないねぇ……
それほどの才を持っときながら、宝の持ち腐れだな』
「俺に才能なんかねぇよ、俺が特別なわけが……」
『そうかい、無自覚ってのはタチが悪い。
この試合、随分とつまらなくなりそうだ……』
その瞬間、元の世界に引き戻された。
俺はすでに天井についており、下には闘技場が見えた。
負けられない、俺は絶対に……慎二たちのために。
やるしかねぇ……!
俺は天井に足をつき、自分の限界まで強化を回す。
壊れてもいい、ただ一度だけあいつを超える速さを……!
瞬間、視界が狭まり前方の景色しか見えなくなる。
耳に届く声も、音も何もかもが……無くなった。
そして一歩、踏み出した。
ゴオンッ──!
雷の降る音や大爆発のような凄まじい衝撃音が鳴り響く。
その衝撃で土埃が舞い、俺たちは見えなくなる。
確かに俺は音速にまで到達していた。
通常なら絶対に反応できないそのスピード、だが……
ライオッドは立っていた。
相手が悪かった。
そいつは戦争時、神と名がつくほどの強者、音速などとうに"慣れていた"。
俺の攻撃は歯が立たず、壁に深々とめり込んでいた。
硬化が間に合わず先の攻撃で内臓にダメージが入り、体の中にあるすべての血液が込みあがり、そのドス黒く赤いそれを……
「オェ……」
完全に合わせられた、俺の攻撃が全力は圧倒的な力で上からねじ伏せられた。
全部、俺の血か……
内臓を負傷し、大量の血液を吐き出し、圧倒的な実力を見せつけられ、慣れない痛みに苦しみ早く休みたいと……
そんな感情、俺にはなかった。
次に備えるため俺はすぐに回復を回す。
あの時合わせられたのは狙いがわかりやすすぎた、攻撃通らないからって焦りすぎた……
俺は音速にまで到達したはず、だというのにあいつは慣れていると反応してきた。
これが戦争を生き抜いたモンスター……
「はっ……
随分と男前な面じゃねぇか」
「え……?」
地面に滴る血が俺の表情を映し出す。
俺は"笑っていた"。
どうして、俺は今笑ってるんだ戦いの最中だろう。
まさか俺は戦いを……
いやそんなわけがない、ばあちゃんと約束したんだ守る剣を極めるって。
そんなそんなこと……!
それを否定するため、俺は立ちあがろうとするが刀を持つ手や支える足が子鹿のように震える。
怖いのか、俺は……?
みんなの命がかかったこの状況で、俺はなんで震えてるんだ?
「教訓としてこの敗北を刻んどけ。
"剣気解放"『ヴォルカニカ焔刃』」
「避けろ!慎!」
「避けんなよ、大雲慎『不倶──」
ライオッドの持つ大剣が紅蓮の気を纏い燃え上がる。
その火力は凄まじく、空気の温度は上がり喉が燃え、乾燥して唇も切れる。
避けなければ、これを受けてしまえば俺は丸焦げになり内臓を撒き散らかし死ぬだろう。
逃げろと脳が命令を出すがそれを拒むように俺の足は動かなかった。
なぜなら俺は、俺をこれから殺すはずのその炎はとても……
「綺麗だ……」
「──戴天』」
その瞬間、凄まじい音共に俺の意識はプツリと消えていった。
裏話
ライオッドは戦争時でもかなり不倶戴天とか見てたんで一応使えます。
まぁライオッドのセンスがあってこそですけどね。
ブックマークや評価楽しみにしてます。




