約束は、利子付きの有言実行でした
読みに来て下さって、ありがとうございます。
本日は夜中に1話投稿済み。2話目の投稿になります。
頼もしい味方、マージョリー様ご出馬です。
「マージョリーお義姉様……どうしてこちらに」
「お久し振りね。アニータ。それは、私の台詞だわ。
それに、私をお義姉様なんて呼ばないでちょうだい。貴女は、もう赤の他人でしょう?」
どうやらオルツァーさんのお義姉様のマージョリー様は、かなりアニータ嬢がお嫌いらしい。アニータ嬢の顔を見るなり、マージョリー様の顔が引き吊り、穢いモノを見る様な目でアニータ嬢を睨め付けた。
「こちらのオーナーから、今日は貸し切りとお聞きしましたのに。何故、貴女がここにいるのかしら。
確か、貴女は実家の領地で謹慎中の筈では?」
怖い。アニータ嬢とは貫禄が違う。オルツァーさんまで、私を抱いたまま後退った。
「あら、貴女、大丈夫?アニータ、まさか、貴女がやったのでは、ないでしょうね」
マージョリー様は倒れている侍女を見ると、連れていた女性騎士に目で合図をし、頬を腫らした侍女を助け起こさせた。
歪んだ笑顔を顔に張り付け、アニータ嬢の方を向くと、マージョリー様は益々冷たくなった声でアニータ嬢に話しかけた。
「アニータ。貴女、家に帰られた方が良くてよ。領地へ帰る準備がお有りでしょうし、お父上の伯爵がきっと、首を長くしてお待ちでしょう。それとも、私が良い修道院をご紹介しましょうか?
セイラ、アニータと侍女をうちの馬車で伯爵家まで、しっかりお送りしてちょうだい。伯爵へは、後程、私から手紙を書くと伝えてちょうだいね。
おそらく、こちらのオーナーからも手紙が行くのではないかしら」
「高々、平民からの苦情など!お父様は、お気には、なさらないわ」
「あら、こちらのオーナーは、さる高位貴族の方よ。私、その方にお話をいただいて、こちらに来たの。貴女が、いるなどと、思いもしなかったけど。まあ、お家に帰って首を長くしてお待ちになる事ね」
すっかり意気消沈し、顔を青くしたアニータ嬢は騎士のセイラ様にエスコートされ、アニータ嬢の侍女はマージョリー様の侍女に支えられて店を出て行った。
「楽しい気分が、すっかり削がれてしまったわ。まったく、あの駄犬ときたら、キャンキャンと。
オルツァー。あの女が何を言ったのか知らないけれど、信用しない方が、良くてよ」
マージョリー様の言葉に、オルツァーさんが反応した。
「何でも、メルビンが浮気三昧だったので離縁したと、莫迦な事を言っていたな。メルビンは、逆立ちも出来ないが、浮気も出来ないだろう」
「そこで何故、逆立ちが出てくるのかは判らないけれど、確かにあの子の細腕では無理よね。真面目すぎて、浮気も無理だわ。
メルビンの出張中に男妾を取っ替え引っ替え呼び込んで、よろしくしているから、私がメルビンと一緒に濡れ場を押さえ込んで、家から追い出したのよ」
アニータ嬢が言っていた事と、逆だった。
オルツァーさんは呆れた顔をしているし、お店の人達も、目を泳がせていた。こんな所で、そんな話をしても良いの?
マージョリー様は、ニヤリと笑って、既製品の服を次々と手に取りながら、話を続けた。
「あの女、あちこちで貴方達が聞いた様な話を広めているから、こちらでも、皆様に事の次第をお話ししているのよ。宜しくね」
宜しくとは、何の事なんだか。
ただ、他の皆には合点がいったらしく、良い笑顔で静かにマージョリー様に微笑み返している。きっと、皆が宜しくしてくれるに違いない。
「城にいたオルグレイブに、ノースター公爵令嬢から、直々に、お声掛かりがあったのよ。
貴方1人では心許ないから、誰かをこちらに行かせた方が良いと。私が取るものも取り敢えず来たわけだけれど、急いでやって来て良かったわ」
私は、靴屋に足を測られ、試着室で身体のサイズを測られ、取っ替え引っ替えどんどん試着をさせられた。
「時間がないから、既製品しか選べないのが悲しいわ。オルツァー、これなんてどうかしら」
「いや、こちらの方がミネに似合うな」
「あら、オルツァー。貴方、中々センスが良いのね」
「ミネ自身が美しいからな。インスピレーションも涌き安い」
「確かに、着飾らせ甲斐があるわ。今日の晩餐用の服が1着、明日の登城用の服が1着、それから町着……」
「ワイバーンに乗る為に乗馬服と、作業用に防火防水の服が欲しい」
「ワイバーンとか、何か、サラっととんでもない事を言ったわね」
「ここまでワイバーンに乗る為に、エルディアナ様の乗馬服をお借りした」
「もっと凄い事をぶっ込んで来たわね。ミネさんが、随分仕立ての良いズボンを履いていると思ったら、とんでもないお方の名前が出てきたわ」
試着をどんどんこなし、2人にお披露目する間に、靴や小物も揃えられた。
え?こんなに?しかも何だか、素材からしてお高そうなモノばかりよね。
「オ、オルツァーさん?こんなに買って貰う訳には」
「何を言っているんだ。5年前から剣やら防具やらミネには色々買ってやりたかったんだが、ミネの大叔母上に止められてたんだぞ。
オマケに先日も買ってやると約束していただろう?こんなのは、利子だ、利子。騎士団長の給料を舐めんなよ。討伐した魔獣の素材を売った金もある」
いや、利子って何?利子って事は元金もあるとか。いやいやいや、考えないでおこう。
ふふんと笑って、オルツァーさんは私を見つめた。何だか嬉しそうだ。
私とオルツァーさんを見るマージョリー様も、とても嬉しそうで、今度は宝飾品を手に取っていた。
「今度は貴方の目が曇ってなくて良かったわ。そして、身を固める決心をしてくれて大助かり。毎日の様に貴方宛に、家に縁談が届いているのよ。しかも、あのアニータの様な難有り物件ばかり。縁談が来る度に、お義母様とオルグレイブが相手の令嬢の釣書を引き裂いているわ」
釣書が引き裂かれる程の難有りのご令嬢。かえって、どんな方達なのか気になるかも。
でも、先程のアニータ嬢みたいな人とオルツァーさんが結婚するとなると、頭に血が上りそうになる。
オルツァーさんに飛び付かれるのも、引っ付かれるのも、媚びを売られるのでさえ、嫌だもの。
あれ?これって。
「これって、嫉妬?よね」
私がポツリと溢した言葉に、オルツァーさんが私に飛び付いて抱き締めてきた。
え?何?いきなり何なの?オルツァーさん。
「ちょっと、お聞きになりまして?かの有名な元伯爵夫人が、服飾店で大暴れなすったんですって」
「あら、相変わらず賑やかなお方ね」
「何でも貸し切りの店に乗り込んで、元義理の兄であるアーバス伯爵の末の弟君に、弟君の婚約者の前で媚びを売っていたので、アーバス伯爵夫人に店から叩き出されたそうよ」
「え?アーバス伯爵の末の弟と言うと、エルディアナ様の騎士団の団長でしょう?中々のイケメンで美丈夫だけれど女嫌いで有名な。
かの有名なホブスタ家のご令嬢が狙っていたのでは、なくて?」
「同じく有名なキルギスタ家のご令嬢も、あの方を狙ってらっしゃったとか?」
「フフフフフ。あの方々には、皆様、辛酸を舐めさせられましたものね」
「オホホホホホ。まったくですわ。『ざまぁ』ですわよね」
オルツァーさん、変なムシいっぱい案件。




