↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/71

良い想い出だけ、心の中に仕舞い込みました

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 王都から辺境砦まで、ひとっ飛び( ≧∀≦)ノ

ワイバーン航空でお送りします。


『元魔王な令嬢は、てるてるぼうずを作る』のep. 227『元魔王な令嬢は、大所帯で王都に帰る』~ep.230『元魔王な令嬢は、草原に降り立つ』のオルツァー&ミネルババージョンのお話です。



 空を飛ぶのは、どんな気持ちだろう。


 かつて砦から飛び立つワイバーンやそれに乗る人達を、そう思って見上げていた。

 よもや、まさか自分が他の人に見上げられる方の存在になるなんて思いもしなかった。


「オルツァーさん、オルツァーさん。下を何かが走っています」


「ああ、魔獣だな。あれは、魔牛だ。あっちの小さいのは、魔狼の群れだろう」


 ワイバーンの背に私とオルツァーさんは乗っている。オルツァーさんは前に乗っている私を後ろから包む様にしてワイバーンの手綱を握る。とても、昨日初めてワイバーンに乗ったばかりとは思えない程、滑らかな手綱捌き。

 背中から感じるオルツァーさんの体温が、心地良い。


 いや、ここまで心地よくなるまでには、私の苦労もありましたがっ!


 最初は、ワイバーンに乗る準備として、オルツァーさんが大きな毛布とワッサワサのフワフワの毛皮(明らかにオルツァーさんが仕留めた魔獣から作ったヤツで騎士団長室のソファーの上に置いてあったモノ)で、私を頭からグルグル巻きにして、抱っこ紐の様にロープを自分の身体にくくり付けようとした所から始まった。


「いきなり何するんですか!オルツァーさん」


 そして、更に防塵眼鏡に兜を被せられ顎に紐を結ばれ、念の為だとかで、その上にストールを被せられ、顎で結ばれる。


「ああ、顔も寒いな。よし、これも」


 止めてよねっ!他の皆は、こんな格好してないでしょ。苦しいし、重いし、身動き取れないから。


「ストップ!待て!ステイです、オルツァーさん」


「だが、ワイバーンに乗って飛ぶのは、寒いんだぞ。風も強いし。私が抱き抱えているが、風邪を引いたらどうする」


 オルツァーさんは、止まらない。さらにマフラーを私の目から下に巻こうとするので、私は頑張って首を振って最後の抵抗をした。


「他の方々は、各々、ワイバーンと連携して騎乗しても大丈夫な魔術を使えるのだが、私は、そこまで、このルーバーと通じあっていないからな」


 何度もマフラーを巻き直し、それでもオルツァーさんは諦めない。

 そう言えば、オルツァーさんは身体強化魔法や武術系の魔術は得意だったけれど、それ以外を使った所を見た事がなかった気がする。


「取り敢えず、この、私の重装備を何とか外して下さい!後は、私が!何とかしますから」


 ようやく、オルツァーさんは、私の鼻と口にマフラーを巻くのを諦めた。


「いくらなんでも、窒息しますからねっ!ほら、一旦、全部外して下さいっ!!先ずはロープからです」


 オロオロとするオルツァーさんに私が指示すると、渋々ながらオルツァーさんは私の周りにある“壁”を辿々しく何とか外し始めた。

 このロープ、切らなきゃ外れないかも……。


 休憩の度に、これを外して装備し直すつもりだったのか?それとも、私はトイレ無しに王都まで連れて行かれる所だったのか。

 まあ、オルツァーさんの事だから、装備が解けなくても、ご飯だけは私に食べさせてくれただろうけれど。


 私は、エルディアナ様にお借りしたズボンを履いて、自前のフード付きマントを着込んでワイバーンに乗った。


 ワイバーンには魔道具製作部長さんが作ってくれた騎乗具が装着されている。それに付随しているシートベルトを、しっかりと締める。

 この魔道具で、ワイバーンから決して落ちる事はないらしい。OK、OK。

 魔道具製作部長さんの魔道具は、見せてもらったどれも出来栄えが素晴らしい。信用出来る。うん。


 次いでオルツァーさんが荷物をワイバーンの後方に乗せる。


「はい、準備が出来たら、オルツァーさんも乗って下さい」


 今度は、私の番だ。


『防風防寒』


 こんな時こそ、私の複合魔術を使わなくて、どうするんですか、オルツァーさん。



 オルツァーさんに初めて馬に乗せてもらった時は、馬酔いと、お尻が痛くて死にそうだった。けれど、ワイバーンはそれ程でもない。


「まあ、高い所が苦手な奴や浮遊感が嫌な奴もいるが、ミネは大丈夫そうで安心した」


「ワイバーンが羽を動かす時に少し上下に揺れるのは気持ち悪いですが。その辺は、今回は以前作った馬酔いの飴を作って持ってきているので、大丈夫です」


 前回の馬酔いの時の様に、その辺の草むらに駆け込んで、薬草を千切って食む事もないだろう。この年であんな事をするのは、ごめん被りたい。




 途中、八咫烏達と高貴なチビッ子達が戯れる麗らかな昼休憩を経て、私達は、男爵邸に着いた。


 ただし、そこには何もなく、ただ一面に草原が広がっているだけ。


 前もってエルディアナ様からは聞いていた。その時も、ただ、そうなのかと思っただけ。実際に見てみても、特に何も感じなかった。


「いつまでも、半壊した屋敷を放置しておくと、またもや誰かに利用されても困るからな」


 魔術師団長が、ボソリと言った。


「家、無くなりましたね」


 私は、誰に言うともなく、呟いていた。


 オルツァーさんは、そっと私に寄り添い、手を握ってくれた。


「オルステッド男爵は、デザリスタとの密輸と人身売買に荷担した罪で、家財没収、貴族位剥奪の上、牢に入っている。そして、ここは既に、国からイースタン公爵家に買われ、イースタン公爵の土地となっていて、男爵家の領土は王領となっている」


 魔術師団長が、厳しい態度で私を見て言った。

 彼にすれば、仕事上で得た事実であり、罪人の消息不明だった家族への事後報告に過ぎないのだろう。


「大丈夫か?ミネ」


 オルツァーさんが心配そうに私の顔を覗き込んだ。


「何か、こう、スッキリしました。小さな頃の母との想い出もあったんですが、それ以上に父親との嫌な想い出が重くて。

 父とは、余り顔を合わせる事も無かったんですが、会う度に、母への金の無心や怒鳴り声、借金取りと共に無くなる調度品の数々、領地の経営だけでは成り立たず、母は内職までしていました。

 最後は、私自身も売られそうになりましたしね。

 重い想い出です」


 家が無くなったのは、悲しくない。ただ、ここが小さい頃の私が母と暮らした場所なのが信じられなかった。


 学園に入学してから、父親に呼び戻されるまで1度も帰った事のない家だった。もう私には必要のない場所だった。

 

「楽しかった想い出だけ、取っておけ。いらない想い出は、全部、捨ててしまえ。その分、新しい想い出が入る場所が出来るからな。

 私が、ミネの新しい想い出をたくさん作ってやる」


 オルツァーさんは、自信満々に私に語りかける。

 確かに、オルツァーさんは私に沢山の想い出を作ってくれるだろう。

 もう既に私の中には、どんな想い出よりもオルツァーさんと過ごした時間が、1番色濃く残っている。

 

「うん。沢山、沢山、一緒に作って下さい。まだまだ少な過ぎるので。約束ですよ、オルツァーさん」


 私は、そう言いながら、オルツァーさんに身を寄せた。オルツァーさんは私と繋いでいた手にギュッと少し力を込めて握り直してくれた。


 そして、私達は寄り添いながら、マリアンの墓があったと思われる場所へと歩いて行った。





「オルツァーさん。ワイバーンの名前なんですが」


「おう!良いだろう、ミネ。『ルーバー』だ」


「ルーバー。どう言う意味ですか?」


「いや、名前から取った」


「(嫌な予感しかしない)……誰の名前ですか」


「ミネの本名の『ミネルバ』だ。今後ミネの名前で通すのなら、ルバが行方不明になるからな」


「(何かビミョー)行方不明って……」


「私の相棒は、ミネとルーバーだからな。常に一緒にいる事になる。あ、後、馬のオルスターを忘れちゃいかんな」


「ルーバー、雄ですよね」


「あー、まあ、うーん」





 ミネルバは嬉しくないやら、嬉しいやら。オルツァーさんのビミョーな命名でした。


 王都から砦まで、馬で何日もかかった旅でしたが、ワイバーンだと1日かかりません。因みに龍のイカロスは、ワイバーンやペガサスに飛行速度を合わせてゆっくりと飛んでいます。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。