私が最後に帰って来る場所
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前々回の続きです。『元魔王な令嬢は、てるてるぼうずを作る』のep.225『元魔王な令嬢は、魔女のお願いを聞く』のミネルバのバージョンです。
「オルステッド男爵……確か、仮面の男爵が根ぐろにしていたのが、オルステッド男爵邸じゃなかったかしら」
一瞬、アメリア様が何の事を言っているのか判らなかった。が、マリシアが『根ぐろじゃなくて、根城では?』と指摘したので、話が飲み込めた。
どうやら、アメリア様は難しい言葉は苦手らしい。まあ、5歳だから、そんなものかな。
以前、ベルリーナ様とアメリア様は仮面の男爵に誘拐されて、うちの屋敷に連れて行かれたらしい。
それに関しては、溜め息しか出ない。仮面の男爵が捕まってから、その件に関してエルディアナ様から聞いていた時には、ビックリした。
実際に被害者であるベルリーナ様達からこの話を聞くと、自分のせいではないにしろ、申し訳なく思う。
父親は、借金のカタに仮面の男爵に屋敷を取られたのだろうか。王都の郊外なので、周りには林しかない様なただっ広い土地だから、仮面の男爵に狙われたのかもしれない。
あの時、大叔母様の元へ行かずに研究塔に帰って、カウマン教授やアレグサー教授に相談すれば良かったのだろうか……いや、その場合、アレグサー教授の監禁コースにまっしぐらかも。
だが、実際はこうなってしまったから、運良くオルツァーさんと出会った訳で。後悔は、全くない。むしろ、お陰で私は自分の居場所を見つけたのだから。
けれども、未だ私には、やり残した事があった。
私は、オルツァーさんをジッと見つめた後、ベルリーナ様とアメリア様を見た。
「ええ、そうなんです。私もエルディアナ様から聞いた時には、びっくりしました。まさか、うちが、そんな事に使われていたなんて。
実は、ここまでお話したのには、理由がありまして。今からお聞きしますのは、ベルリーナお嬢様とアメリアお嬢様には、少しばかり辛い事を思い出させてしまうかもしれませんが、申し訳ありません。
庭に、墓石が未だ置いてありましたでしょうか?」
2人の小さなお嬢様方は、首を傾げて可愛らしく考えてくれた。
どうだろう。男爵邸の庭にあったあの墓石は、未だあるのかな。
「実は、大叔母が、亡くなる前に祖母から私への遺言を伝えてくれまして。
『ミネルバが一人前の魔法薬剤師になったら、マリアンの墓に姉さんの魔法薬のレシピを埋めた事を伝えて欲しいと言われてたんだよ』
そう大叔母に言われたんですが、父親と遭遇するのが嫌で、中々、取りに行けなかったんです」
この件は、私が、エルディアナ様から王太子殿下の御一行を王都に送って行く時に一緒に王都まで連れて行って貰えないかと相談しに行っ時に、以前、お二人が誘拐されて私の家に監禁されたと聞き、ダメ元で尋ねてみようと思ったのだ。
マリアンは、お祖母様の昔飼っていた猫。昔から、どうして、男爵邸の庭にお墓を作ったのか謎だった。最初から、レシピ本を隠す為だったのだろう。何しろ、私が自由にコッソリ出入り出来る場所は、あそこだけだったから。
「私達があそこに連れて行かれたのは夜でしたから、庭は見えませんでしたわ」
「アメリアの言う通りよ。でも、フレンお兄様やハジェスとジェンナなら知っているかも」
ベルリーナ様とアメリア様は、お互いの顔を見つつ、一生懸命悩んでくれた。
ああ、そう言えば、ハジェス達は仮面の男爵の元で仕事をさせられていたのだった。
「私は、エルディアナ様から、ミネが王都に帰りたがっていると聞いたんだ。
だから、慌てて休暇を貰って、君に告白しに来た。その、ここに帰って来るんだろうね、ミネ。
いや、是非とも、帰って来て欲しい。君が好きなんだ」
オルツァーさんは、私の手を取ったまま、ジッと私の目を見て、いきなり話を突っ込んできた。しょうがないなぁ、オルツァーさんは。
一体全体、どうしちゃったのやら。
「その、えーと。元から砦には帰ってくるつもりでしたが。
私は今まで、その、団長さんの事をそんな風に考えた事がありませんでしたので、よく判らないです」
オルツァーさんは、私を逃がすものかと思っているのか、更にしっかり私の手を握り締めた。
はぁ。手も痛いけれど、オルツァーさんの真剣な視線が更に痛い。本当に、オルツァーさんは急にどうしちゃったのか。
でも、私としては満更でもないけど。私はオルツァーさんの顔を直視する事が恥ずかしくなって下を向き、自然と声が小さくなってしまった。
「では、これから考えてみて欲しい。貴女を好きな男がいると言う事を、知っていて欲しい。駄目だろうか?
そうだ!何だったら、私も一緒に王都に行かせて貰おう。ちょっと、今からワイバーンを捕まえて来るから、明日はそれに乗って一緒に行こう」
ち、ちょっとオルツァーさん。何言ってるの?ワイバーンって、今からって、本気?
私は、びっくりして顔を上げ、オルツァーさんの顔をまじまじと見てしまった。
その場にいた皆が、驚きながらもオルツァーさんが本気で言っているのを理解した様な顔をする。
(絶対、こいつは、やる)
皆の顔がそう語っている。
「じゃあ、私はワイバーンを捕まえに行ってくるから、ミネは王都に行く準備をしていてくれ」
それだけ言うと、颯爽と、オルツァーさんは小屋から出て行った。
「取り敢えず、私から魔道具製作部長に言って、ワイバーンの鞍や手綱等をもう1式用意して貰っておくわね」
ベルリーナ様が、可哀想なモノを見る様に私を見て、そう言う。
「え!?あれって、本気なの?冗談でなく?」
ちょっとビックリして意識が飛んでしまっていた私は、オルツァーさんが出て行った扉をまじまじと見ていた。
「ええ、そのようね。私のベンデンもあんな感じで、ペガサスをその日の内に捕まえて来たもの」
ミザリア殿下は、『当然でしょう?』と言う顔で私を見て、お茶を飲んでいる。
オルツァーさんが特殊なのかと思っていたけれど、ベンデンさんもか。
王女様や公爵令嬢になると、これ位の事では驚かないらしい。
赤いドレスの女の事は、どうなったのか少し気になるけれど、オルツァーさんが私の事を好きなのなら、今は、それでいいかな。
私は、気を取り直して、皆に新しいお茶を入れた。
オルツァーさんには、お薬を用意しておこう。
「はい、魔女さん。これをあげます」
「はっ!これは、ベルリーナ様が育てているベビーキャロットマンドラゴラ。ありがとうございます」
「騎士団長さんが、怪我して帰ってきても、これを食べたら、キレイに新品状態に治ります」
「イキが良いですね~ピチピチしてます」
「あ、あんまり見ちゃったら、何となくこわくて食べれなくなりますよ?」
「?薬材ですから、そんなもんですよ」
「あはははは……はーあ」
やっぱり、可愛いお姉さんでも、魔法薬剤師は皆、反応は一緒かも~とベルリーナは思いました。




