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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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優秀な腹の虫だって、わからない時がある

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


今回は、オルツァーの視点です。



        オルツァー side



 私にだって、我慢ならない時がある。


 騎士団長などというモノをやっていると、大抵の事には、冷静に考え、行動出来る。と言う自信があった。筈だった。

 だが、今回は別だ。


 他の男の子供を作り、私に婚約解消を叫んだくせに、執拗に私に復縁を迫って刺客を送ってくる元婚約者が、私がプロポーズをしようとしている愛しい女性に絡んで傷つけ、しかも、逮捕した折りに、私が彼女にプロポーズする為に買った薔薇をぐちゃぐちゃにしやがった。


「牢屋に入れる前に、破れた服を何とかしてやってくれ。後で訴えられても困るからな、ジェンナ。囚人服でも着せとけ」


「何で私が、そんなモノ着なきゃならないのよ!オルツァー。それに、牢屋ってどういう事。私は貴族なんだから、貴族牢でしょうが」


「これ以上、私を怒らすな。ここにそんなモノが、あるわけないだろう。他の囚人とは別の牢に入れてやるだけ、マシだと思え」


 上手い具合に別件で正式に逮捕は出来たが、あの女は、私の可愛いミネに罵詈雑言を浴びせ、私とあの女が愛し合っており結婚すると嘘八百をまくし立てていたらしい。

 もう、それだけで赦せんだろう。


「と言うわけですので、早々に、薬の魔女様の所へ行って、誤解を解く事をお薦めします。団長が捨てられる前に」


 ギロリと私を睨み付けて、ミネとあの女の事の次第をジグナムが語った。その時に一緒にいたと言うケグレブもしたり顔で頷いた。


 何で、ちょっと人がプロポーズの薔薇を買いに行っている間に、こんな事態が起きているのか。どうやら、いつもはヤバい事態を察知する私の腹の虫の調子が悪いらしい。腹立たしい。


 慌てて、私は再び町の花屋に行き、ボロボロにされたピンクの薔薇の花束の代わりに、花屋の女将のお薦めのプロポーズに最適の赤い薔薇108本を買い求めて、砦に戻ると、今度はエルディアナ様とタンディン様、更には王太子殿下に捕まった。


「赤い大きな物体が移動して行くから、何かと思ったぞ」


 薔薇を抱えた私の姿は、演習場から丸見えだったらしい。


「騎士団長。いよいよ結婚を申し込みに行くのだな」


「はあ、まあ。そうです」


 6歳で既にプロポーズを済まし、恋敵を蹴散らし続けていると言う強者に、何をどう言えば良いのか。


「薔薇は良いな。私も、以前、ベルに薔薇を1株贈った事がある。

 今ではその薔薇はベルの庭の垣根となり、アーチを作り、侵入者からベルを守ってくれている。イカロスでさえ、その薔薇には敵わないぞ」


 イカロスって、龍のイカロスですよね?まあ、薔薇には棘があるしな。棘に引っ掛かって、侵入者がボロボロになると言う事か?


 とにかく、薔薇は強いんだな。良し。


「まあ、とにかく当たって砕けろだぞ。騎士団長。骨は、拾って埋めてやる」


 王太子殿下、埋めないで下さい。頼みますから。


「何を言うか、ラインハルト。当たって砕けても、自分で骨を拾って、何度でも当たって砕ける根性が必要だ」


 王太子殿下のアドバイスはともかく、タンディン様のアドバイスは、適当に聞き流しておこう。


「まあ、いつもの調子でうだうだしてないで、こういう時ぐらい、真剣にビシッと決めてちょうだい。

 このままだと、ミネはベルリーナの薬草欲しさに、王都に帰るベルリーナに付いて行ってしまいそうだわ」


 え!?そんな莫迦な。


「エルディアナ様、まさか、そんな話が」


 エルディアナ様は、焦る私に冷たい視線を向けた。

 いや、確かにミネの事だ。私の事より、薬の研究の方が重要かもしれない。いや、そちらの方が明らかに重要視している気がする。


 私は、慌てて薔薇を散らさない様に用心しながらも、急ぎ足でミネの小屋に向かった。


 小屋の扉の前に立つと、かつてない緊張に手が震えた。だが、どうやってミネに切り出したものか。

 ここまで来たものの、プロポーズって、どうやるんだ?薔薇を渡しただけじゃ駄目だろう。

 王太子殿下に聞いておけば良かったな。


 私が悩んでいると、中からベルリーナ様達の声がした。


 いかん。このままでは、ミネがベルリーナ様に連れて行かれてしまう。そうは、させるか。

 こうなれば、出たとこ勝負だ。


 私はノックと共に小屋の扉を開けて、薔薇と共に中に飛び込んだ。

 いざとなったら、ミネをかっ拐って何処かでゆっくりと結婚の話をすれば良い。


 そう思っていたのに、緊張のあまり、私の口から出たのは……。


「やあ、ミネ。今日はちょっと時間が出来たから町に出掛けたんだ。これは、お土産だ。どうか、受け取ってくれ」


 いや、違うだろう。私は、何を言っているのだろうか。

 おまけに、ミネは、何故か薔薇に怯えて居合わせたミザリア殿下の侍女の後ろに隠れてしまった。


 薔薇に怯えたんだよな?私に怯えたんじゃないよな。

 畜生。エルミラめ。一体、ミネに何を吹き込んだんだ。益々、赦せん。


 頼む、ミネ。私を見捨てないでくれ。


 私は、かつてミネが私の目の前で暗闇に飲み込まれた事を思い出した。


 消えるな、ミネ。私の前から。


 



「ひいお祖母様、騎士団長は、ちゃんと薬の魔女殿にプロポーズ出来るのだろうか」


「まあ、頑張るしかないでしょうね」


「大人は、厄介だな。ベンデンもプロポーズの折りにミザリア殿に叱られたらしい」


「一体、どんなプロポーズをしたのか、聞いてみたいやら、聞きたくないやら」





 プロポーズのシチュエーション、キャラごとに考えるのは、ちょっと楽しいです。



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