いや、ちょっと何が何だかわかりませんが
読みに来て下さって、ありがとうございます。
昨日の夕方、余分に一話この前の話を投稿しました。( ≧∀≦)ノ
この話は、前話に引き続き、『元魔王な令嬢は、てるてるぼうずを作る』のep.224『元魔王な令嬢は、魔女の過去を聞かされる』の裏バージョンになります。元魔王な令嬢の方の後書きには、ミネルバとマリシアの学生時代について、少し2人の会話が書いてあります。
オルツァーさんの赤い薔薇の花束攻撃に、私は思わずマリシアの影に隠れてしまった。だって、赤だよ。よりによって、あの女の赤。
「ちょっと、ミネルバ!人を盾にするのは止めてよ」
いや、丁度良い所に居たので、つい。マリシアは、私の代わりにオルツァーさんに薔薇の花束を突きつけられた。
マリシアは、自分の後ろに隠れた私に手を伸ばし、グイッと自分の前に引っ張り出す。
うわぁー。赤い薔薇、赤い薔薇の洪水。
「ひ、ひぃっ!だ、団長さん。何か御用でしょうか」
この高貴な皆様の前で、まさか、オルツァーさんの名前を呼ぶわけにいかず、つい、団長さんと、呼んでしまった。
オルツァーさんは、ちょっとばかり眉を寄せたが、それでもグイグイと私に赤い薔薇の花束を押し付ける。
いや、何で押し付けるの?
「先日、欲しい物はないかお聞きした時に、薔薇の花が欲しいと仰ってたので、こちらをどうか受け取って下さい」
何故かオルツァーさんも私にあらたまった言葉で話し出す。どうしたの、どうしたのオルツァーさん。ひょっとして、怒ってる?
え?何で怒ってるの。ひょっとしたら、あの赤い服の女に、私の事で何か言われた?ひょっとして、もう頭がハゲちゃったとか。
えーっと、薔薇、薔薇。何か引っ掛かる。
「あ!ああ、そうでした。わざわざ、ありがとうございます。そうそう、そう言うお話でした。ローズティーを作ろうかと思ってた矢先に、
『何か、欲しいものはないか』
と、団長さんがお聞きになったので、思わず
『薔薇の花がたくさん欲しいです』
と、答えてしまったんです。ありがたく頂戴しますね」
そう言えば、私、オルツァーさんにお使いを頼んだんだっけ。
「へ?いや、その、あの。えーと」
オルツァーさんは、焦った顔になり、私に赤い薔薇の花束を渡すと、手をわたわたと宙を彷徨わせた。
何故か、ベルリーナ様がぷんすかして、ギロッと可愛らしくオルツァーさんを睨んだ。どうしたんだろう。
「騎士団長さん、『当たって砕けろ』です」
ベルリーナ様は、椅子に座ったままふんぞり返って、キリッとした表情でオルツァーさんを睨み付けた。
「は、はい。
ミネ。その、私と結婚を前提にお付き合いをして貰えないだろうか」
オドオドしながら、オルツァーさんが私に何かを言った。いや、何かちょっと、聞き覚えのない言葉が聞こえた気がする。オルツァーさん、間違えた?
「え?誰と?」
思わず聞き返した私に、オルツァーさんが所在無げに少し小さくなった。何だか、いつものオルツァーさんらしくない。
「私と」
はぁ?
「団長さんと、誰が?」
「私と、ミネが」
「私と団長さんが、結婚を前提にお付き合い?どうして?」
私は、オルツァーさんの養女になるのでしょう?
あの赤い服の女は、どうしたの。あの女、イヤリング見せびらかして、自信ありげに結婚するとか言ってましたが?
「わ、私がミネを好きだからだ」
「団長さんが、私を、好き!?」
突然、何?何がどうして、こうなった訳。
私は、赤い薔薇の花束を抱えたまま、足元が覚束なくなり、目眩がした。
誰かが(あ、オルツァーさんか)咄嗟に花束ごと私を抱き止めて椅子に座らせた。
「すまない。その、急な話で。ビックリさせてしまったな」
「え?いえ。ちょっと、想定外でしたので」
とりあえず、薔薇の花束は大き過ぎて前が何も見えないので、マリシアが預り、台所に持って行ってくれた。
大きな花瓶なんてないよ?大体、ローズティーにして蜂蜜の使用方法の宣伝にしようかと思って頼んだんだし。
それが、どうしてこんな事態に。
いや、ほら、嬉しいんだけれど、ねぇ、ちょっと本当にビックリして何が何だか混乱していると言うか。
「あ、天井」
ベルリーナ様が天井を見上げると、私を初め皆も一斉に天井を見上げた。
「ああ、そうですね。それが、良いかもしれません。後で、早速吊るしておきます」
皆は首を傾げていたが、確かにそこしかないだろうと思う。
「何処にいても眺められますし、せっかく人生で初めて異性から告白していただけたんですから、保存魔法をかけてしばらく眺めていてもいいかもしれません」
「え!?あ、では、私とお付き合いを?」
ちょっと、オルツァーさん。何だか口調が変だよ。
「あー、団長さん。それは、ちょっとまだ……よく、わかりませんので。その、団長さんの事をそう言う風に考えた事がありませんでした。すいません。
何しろ、ベルリーナお嬢様の薬草に夢中で、その、そちらにしか頭が回っておりませんでしたので」
オルツァーさんと再会してからこっち、色んな事がありすぎたしね。特に、あの赤い服の女とか。
「ミネ、私では駄目だろうか?」
「いえ、そう言う訳ではありませんが。あー、まあ、取り敢えず、その、団長さんも、ちょうど今からお話ししようとしていた私の身の上話を、お聞き下さい。
まあ、大した事じゃあないんですけどね」
まあ、オルツァーさんにも話した事はなかったし、この際、丁度いいから聞いて貰おう。話している内に、私も落ち着くかも知れない。
「実は、私は、オルステッド男爵家の一人娘でして。現在、家出中です」
私は、溜め息を吐きながら話を始めた。
「学園から急に家に呼び戻されたと思ったら、父親のギャンブルの借金のカタに、他の貴族に売り飛ばされそうになりまして。
何とか逃げ出して、大叔母の小屋に辿り着いたんです」
「若い女の身で、よくぞ無事でここまで辿り着いたな」
いや、オルツァーさんが連れてきてくれたんでしょうが。まあ、確かにオルツァーさんに出会う前に何事もなかったのは、幸運だったかも。
実際、オルツァーさんが一緒に旅をしてくれなかったら、どうなっていた事やら。
まあ、今頃はアレグサー教授に捕まって、監禁されてたかも知れないけど。
オルツァーさんは、床に膝を付き、私の両手を取って、自分の両手で包み込み、私の顔をじっと見た。
いや、別に嫌ではないけれど、何か突然、こう言う事をされると照れると言うか。
いきなり、どうしたの!?オルツァーさん。
「それにしても、オルステッド男爵は、せっかちよね。もうすぐ卒業だったんだから、貴女を魔法薬剤師として働かせれば、お金になったのに」
「そうね、マリシア。まあ、研究員として施設で働かせたいと先方は言っていたので、悪い話ではなかったんですが……以前、その方にお会いした事があったんですが、その、その方が怪しすぎたので、思わず逃げてしまいました。
だって、常に仮面を被った異国の男爵ですよ?何をさせられるかわかったもんじゃありませんよね?」
怪しすぎるよね。どうして、仮面を被っていたのか謎だし。そもそも、あの仮面自体が怪しすぎた。何だか、見ていてゾワゾワゾワしたのだもの。
「父親には、『ここまで育ててやった恩を返せ』と言われたんですが。
小さい頃は母親が領地を管理していたんで何とかなりましたが、母親が病気で亡くなってからは借金が嵩むばかりで。学園の費用を母方の祖母が亡くなる前に全額支払ってくれていましたので、学園寮に入りましたしね。
正直に言って、育てた恩と言われても。実感はないですね。
まあ、父親に無理やり連れて行かれそうになりましたが、その辺にあった酒瓶で父親を殴って家を飛び出し、祖母が『いざと言う時に売れ』と、私にくれていた指輪を売って、男の子に変装して、ここまで辿り着いた次第です」
「苦労したんだね、ミネ」
オルツァーさんが熱の籠った目で私を見ていた。私は、どうしていいかわからず、慌てて皆の方を見て、ワタワタしながら話を続けた。
「いや、もう。ここに来てからは、森の小屋で大叔母と2人、毎日、研究三昧。楽しくて楽しくて、天国でしたので。
そんな事は、すっかり忘れてました。
まあ、そんな大叔母も去年亡くなったんですが。
ところが、薬を納品しに来たこの砦で、素晴らしい薬草を見かけまして。しかも、毎日、育つと言うじゃありませんか。
狂喜乱舞して、気がついたら、ここに居着いてしまいました」
私は、出来るだけ明るく、あははと笑って誤魔化しながら、オルツァーさんから視線を外して皆を見回した。
いや、本当にどうしちゃったのオルツァーさん。何か変な魔術でも掛けられたとか。
ベルリーナ様の呪いも思わず吹っ飛ぶスペシャルドリンクでも飲む?
「オルツァーさん、はい、これ飲んで下さい」
「何だ、これは。ミネ」
「ベルリーナ様のスペシャルドリンクです。ほら、ぐぐいっと、一息に行きましょう。あの赤い服の女がオルツァーさんに何をしたにしろ、どんな呪いも魅了魔法も一発で治ります」
「おい、ちょっと待てミネ。私は、何も。ぐぇーっ。不味っ!」
ベルリーナ印のスペシャルドリンクは、心身共に回復、解毒作用、解呪作用、皺も減ってシミも薄くなり、髪の毛がちょこっと生えてくる、王城で人気の栄養剤です。
次回は、オルツァーバージョンで、お楽しみ下さい。




