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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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取り敢えず、お持ち帰りして頂けると嬉しいです

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 アレグサー教授が出てくる話は、何故かいつでも大騒ぎになる気がします。



 いや、何と言うか。面倒臭い。


 これが修羅場で、男3人が1人の女の愛をめぐってお互い火花を散らすとか言うならまだしも、適齢期をとっくに過ぎた女の父親役をめぐって睨み合ってるなんて。

 本当に、莫迦莫迦しい。


「あー、お取り込み中、悪いんだが。オルツァーを貰っていくぞ。

 おい、オルツァー。お前、ミネちゃんが心配なのは分かるが、仕事をしろ。エルディアナ様達が帰って来られたぞ。今回の件の報告に行け」


 オルツァーさんのせいで建て付けが悪くなって半開き状態になってしまった扉から、オルザインさんが、ひょっこり顔を出した。

 何だか少しいたたまれない顔をしているオルザインさんが、オルツァーさんの首根っこを引っ掴む。


「叔父上、今、肝心な所なんです。私の将来が、人生が掛かっていると言っても過言じゃありません」


「いいから、頭を冷やして、仕事をして来い。ミネちゃんも困ってるぞ。

 あー、アレグサー教授。例の鍵の件で、エルディアナ様に説明をして貰えないか」


 オルザインさんが、何とかオルツァーさんを外に連れだそうとするけれど、オルツァーさんは一向に出ようとはしない。

 一方、アレグサー教授は、オルツァーさんを睨み付けたまま、口を開く。


「ああ、そうですね。ミネルバもお世話になっていますし、エルディアナ様に1度ご挨拶しておこうと思ってましたので、一緒に行きますよ」


 アレグサー教授はレガスさんを促すと、オルザインさんの後を付いて行こうとした。


「ミネ、1つだけ聞かせてくれ」


 オルツァーさんが、いつになく真剣な顔で私を見つめる。


「何?オルツァーさん」


「ミネは……この4人の中で、誰と一緒にいたい?」


 私に縋る様に、オルツァーさんは私を見つめ続ける。

 

 何か、1人増えてるよね。オルザインさんは関係ないと思う。


「オルツァー、俺を巻き込むんじゃない」


 オルザインさんが、オルツァーさんを引っ掴んでいない方の手を自分の額に当てて、如何にも頭が痛そうな顔をする。


「オルツァーさんだよ。約束したよね。一緒にいるって」


 私の返事に気を良くしたオルツァーさんは、ニヤリと笑うと、フフンと他の3人を鼻で笑い、オルザインさんの手を振り払うと、上機嫌で私の小屋を出た。


 まったく、しょうがない人だよね。オルツァーさんは。

 そんな所も、憎めないけど。


「レガス、研究塔に帰ったら、早速、奴について調べてくれ」


 アレグサー教授は小声でレガスさんに指示を出し、レガスさんは無言で小さく頷いた。


「教授、程々にしてくださいね」


 こちらも、本当に厄介な父親達よね。


 私の言葉を聞くと、一瞬、寂しそうに微笑んだ後、アレグサー教授は私の頭を撫で、オルツァーさんやオルザインさんの後を追って小屋を出て行った。


「心配なんですよ、あなたが。私もアレグサーもね」


「うん、ありがとう」


 ポンと私の頭を軽く手の平で叩いて、レガスさんも教授の後を追いかけた。




 その日の私は、何となく心が騒ついてしまい、研究が捗らなかった。


 修繕係のじい様は『まったく、オルツァーの奴め』とボヤキながらやって来て、


「薬の魔女さんは、しっかりあいつを尻の下に敷いてしまった方がいいぞ」


 等と、意味不明な事を言いながら、小屋の扉をサッサと直して帰って行った。


 クスクスと、何だか笑いが込み上げてくる。

 私もすっかり砦の生活に馴染んで来たのかも?小屋はすっかり私の家の様だし、砦もまた私の居場所な気がする。


 それより何より、オルツァーさんがいるこの場所が、私のいたい場所なのだから。




「ミネ、入っていいかな」


 躊躇いがちにノックの音がし、オルツァーさんの声がした。らしくないけど、どうしたのかな。


「はぁ。叔父上とエルディアナ様に、ミネについて色々と説教されたんだ」


 オルツァーさんは、まるで、しょげた大型犬が尻尾を丸めてお尻の下に敷いているみたいに見える。何だか、しゅんとしていて、いたたまれない。


「あまり不遜な態度をとっていると、ミネに愛想を尽かされるぞと言われた」


 昼間とは打って変わって、縮こまってこちらの様子を伺うオルツァーさんは、何だか可愛らしい気がする。

 別にそんな態度を取らなくてもいいのに。私は、全然気にしてないよ?


「食堂で夕食を籠に詰めて貰ったんだ。今日は、ここで一緒に食べないか」


 そう言って、オルツァーさんは、イソイソとテーブルの上に料理を並べ始め、私達は誰にも邪魔される事なく、夕食を楽しんだ。


 何か好きだな。こんな時間。





「そう言えば、町に一緒に買い物に行こうと言う話をしていたが、行けてないな」


「オルツァーさんは忙しいから」


「いや、忙しさにかまけていては、いけない。日々の努力が大事だ、とにかく、事ある毎に顔を売れと習った」


「はい?誰にですか」


「タンディン様だ」





 エルディアナの夫のタンディンは、行け行け、押せ押せが売りですからねー。

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