後は、お任せしてもよろしいでしょうか?
読みに来て下さって、ありがとうございます。
なーんか、オルツァーさんが出ないと、ちょっと詰まらないなぁ。と思いつつ、書いてます。
私とジルバさんは、身軽でエルディアナ様の執務室に向かった。
「オルザインさん、そっちは終わりました?」
執務室前の廊下で、3人のじい様達が男を縛っていた。
オルザインさんが1人で執務室の中に入り、侵入者を引っ掴んで廊下に放り出した所を、じい様達が縄で縛ったらしい。
「もの足らんな……」
オルザインさんが、ボソッと呟いた。
「まあ、確かにもの足りませんね。もうちょっと暴れたかったって言うか」
「これなら、ベルリーナ様の畑の雑草の方が手強いな。ジルバ、早朝に手伝いに来るか?」
庭師のフォスターさんやオーベンさんは、普段から闘っているモノが違うからね。毎日、あんなに沢山の大きな魔草と闘っていたら、こんな侵入者の1人や2人は、雑魚なのかもしれない。
「ミネちゃんとジルバの方の侵入者は、何処だ」
私は、首から下げている鍵を持って、掲げて見せた。
「マジックバッグとかいう奴がありますよね」
私がそう言うと、オーベンさんが怪訝な顔をした。
「ああ。だが、あれは、生きてるもんは入れれねーぞ」
流石、元魔法薬材料調達係。ご存知ですね。いや、ひょっとしたら、使っていたのかも。
「アレグサー教授が、この度、生き物を生きたまま入れれるモノを作られまして」
「時空間理論の天才だったな。あの時の厄介な奴か」
オルザインさんが言っているのは、多分、アレグサー教授がわたしを誘拐した件だ。
嫌そうな顔をして、オルザインさんは私の手の中の鍵を見る。
まあ、確かに厄介な人です。優秀なんですけど。
「教授の作った空間では、物理攻撃も効きませんし、魔法攻撃も効きません。恐ろしい話ですが、ここに閉じ込められたモノは誰かが出してくれるまで、一生、このままです」
そう、この鍵を失くしてしまえば、この中のモノは永遠に出す事が出来なくなる。本当に、怖い話。
「おまけに、何もない空間に閉じ込められてますから、早く牢に出してやらないと狂ってしまうかもしれません」
牢番の詰所では、今日の牢番の2人が椅子に力なく腰かけていて、ヘムスさんが2人に水を手渡していた。
「今回の件の何が大変だったって、侵入者を捕まえちゃなんねえって事ですよ」
2人は、侵入者の持ってきた差し入れのワインを飲む振りをして倒れて見せたらしい。
「うちじゃあ、全員が顔見知りな上に、エルディアナ様やタンディン様が、牢番当番への差し入れは厳重に禁止してるのを知らないなんてね。調査不足にも程がある」
牢番も含むじい様達は、タンディン様の現役時代から忠誠を誓っている人達だし、それ以外の者達もタンディン様に性根を叩き直されているので、規則を破る者は、滅多にいない。
もしも、そんな人がいたら、もう一度、今度は念入りに、心が綺麗になるまで、とことん、タンディン様に性根を叩き直される。
いい例が、この間、私の小屋に侵入しようとして魔樹に捕まった奴らだ。今では、皆、人相が変わって、スッキリ、キッチリした人間になっている。
「ここに侵入した奴は牢の中の連中に、外へ出てデザリスタの第2王子の残党に加わるように皆を説得しようとしてたんですがね。
前回の件があったので、囚人は誰一人耳を傾けようと、しませんでしたよ」
こっそりその様子を覗いていたと言うガウスさんが、ほくそ笑みながら私に言った。
まあ、当たり前かな。今回、牢に来た侵入者は前回とは別動隊なのか、それとも図太いのか莫迦なのか。
牢にやって来たガウスさんとガルドさん、ヘルメスさんの3人は、侵入者と闘う振りをして追い出し、侵入者達が作った砦の外壁の穴の1つまで追い立てた。
唯一残してあったその穴は、魔道具製作部長によって、外への一方通行しか出来ない様にしてある。
穴をくぐって外へ出た侵入者の後を、ガルドさんとヘルメスさんが密かに追跡中との事。
この件が終わったら、部長さんと共に穴を完全に塞がないとね。
「ガルド達が奴らのアジトを見つけ次第、団長と共に編成済みの部隊が出発する手筈になっている」
オルザインさんは、そう言いながら、執務室で捕まえた侵入者を空いている牢に放り込む。
と言う事は、後の私の仕事は、鍵を開けて、私とジルバさんが捕らえた侵入者を引き摺り出して牢に放り込むだけ。
ん?これはひょっとしてチャンス?
「オルザインさん、侵入者がずいぶんと武器庫を荒らしたんで、私、後で武器庫の片付けをしてきますね」
フフフフフフ。先程、チラリと見たけれど、武器庫には珍しいモノが色々と詰まっていたからね、ちょーっとばかり見学して来ようかな。
「何処を片付けるんだ?」
皆が、一斉に武器を構えるのが見えた。
私が背後を振り返ると、何もない所に黒い穴が出来ており、中から片手が伸びている。
誰?……いや、この声は、あの人だ。
「ミネルバ、私を除け者にして楽しそうな事をしようとしているな。だが、先に実験の記録を取ってからにしろ」
手に続いて、年齢不詳の美形、アレグサー教授が穴から出てきた。
いい加減、こんな登場の仕方は心臓に悪いから止めて欲しいんですが?
「副団長、こいつを牢に放り込みに行って、そのままこいつらのアジトを潰しに行くぞ」
「おい、何処へ行く。オルツァー」
「後は頼むぞ、ベンデン。騎士団は半分置いていく。私は、こいつらの仲間が逃げる前に、アジトを潰しに行ってくる。時間との勝負だ」
「おい、オルツァー!副団長は、置いていけ」
「すいません。部隊長は何人か置いていきますので。それで、ご勘弁を。私がいないと団長が暴走するんですよ」
「いや、駄目だろう。私は砦の部外者だぞ」
「ベンデン、修行が足りないですわよ。セルマン、皆を部署ごとにまとめる様に、部署の責任者に言ってちょうだい。それと、残った部隊長をここへ連れてきて」
「はい、アメリアお嬢様」
オルツァーが任されていた砦での侵入者の陽動騒ぎの詳しくは、『元魔王な令嬢は、てるてるぼうずを作る』のep.210『逃避行の裏側で、メイド見習いは見た!』をご覧下さい。




