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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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やるなら、とことんやって欲しい

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 アレグサー教授、マイペースに驀進(ばくしん)中です。



 当然の様に、アレグサー教授の後ろから助手のレガスさんも出てきた。


「よかった。教授1人で来たのかと思って、焦りましたよ」


 私がそう言うと、レガスさんは、ムッとした表情になった。

 オルザインさん達は、何故か武器を構えたまま一触即発の空気が流れている。

 いや、別に今から闘いが始まる訳ではないでしょうに、武器を下ろしてアレグサー教授達を睨み付けるのは、やめて欲しい。物騒だから。


「そんなわけ、ねえだろう。こいつを1人にすると、とんでもない事をやらかすからな。

 付いていくのは面倒なんだが、放っておいて後始末をさせられるのは、もっと面倒だ」


 私に手を伸ばす教授の襟首を、レガスさんはグイっと引っ付かんで自分の方に引き寄せてくれた。

 ありがとう、レガスさん。そして、そのまま持って帰って欲しい。


「ミネルバ、例の物置に誰か捕まえて入れたんだろ?研究室で、物置の使用中のチャイムがなったぞ。

 さっさと出して見せてくれ」


「レガス、でしゃばるなよ。僕が言おうとした事だよ。ほら、ほら、ミネルバ。早く出して見せてくれ。どうだったんだろうね。ワクワクするよ。早く、入ってみた感想を聞かせて欲しいよ」


 レガスさんとアレグサー教授の言葉に、私は、どう反応したら良いのか判らない。こんなモノに放り込まれて無事な人は、いないと思う。

 私だったら恐いし、気が狂う。


 オルザインさん達が臨戦態勢のままなのは、良かったかも知れない。

 ここに入れて捕まえた侵入者が、おかしくなっていて暴れ出したら、皆で押さえ込んで貰おう。


 私は鍵を出して何もない空中に差し込んだ。


「判りましたよ。じゃあ、皆さん、準備は良いですか?3、2、1、はいっ!」


 私が鍵を回すと、そこに黒い空間が出来た。そこへ、侵入者の姿を思い浮かべながら私が手を突っ込むと、何かの手応えがあった。

 それを掴んで引っ張ると、中から虚ろな表情をした男の顔が、私を見る。いや、見えているのか?

 そのまま、男の手をグイッと引くと、ズルンと男がこちら側に出て来た。


「ミネちゃん、離れろ!」


 オルザインさんが叫ぶのが、聞こえた。


 男は耳が痛い程の声で叫び出すと、私の手を離して、私の肩に両手で掴みかかり、私を物凄い勢いで揺さぶり続ける。


 手が私の後ろから伸びてきて、男の頭を開いた手の平と指でガッチリ掴んだ。


『昏倒排除』


「僕の可愛いミネルバに、何をする」


 男は、意識を失って崩れ落ち、オルザインさん達の方へ吹っ飛んで行く。オルザインさんが、男を受け止めてそのまま拘束した。

 ナ、ナイスキャッチ?


 男を吹っ飛ばした手は、私の頭の上に伸び、私の頭を撫でる。

 ああ、アレグサー教授の手だ。


「大丈夫?何ともない?」


「だ、大丈夫です、アレグサー教授。ビックリしただけ」


「はあ、抱っこしたら駄目なんだよね。ミネルバは、もう、小さな子供じゃないんだから」


「そうです。私は大人の女の人になったので」


 アレグサー教授は私の頭の上に手を置いたまま、私の顔を覗き込み、口を尖らせてちょっと拗ねた顔になった。


「つまんないな。子供は、すぐに大人になってしまうんだよ。本当に、速いよね。この間まで、ミネルバは、こんなに小さな子供だったのに」


 そう言いながら、アレグサー教授は、もう片方の手の親指と人差し指を、ちょこっと広げて見せた。


 いくら何でも、私は、そんなに小さくありませんでしたっ!

 妖精じゃあるまいし。


「もうちょっとばかし、でかかったよな?ミネルバ」


 ニヤリと笑って、レガスさんは、私の頭の上にある教授の手の上に自分の手を重ねた。


 懐かしいやり取り。


 小さい頃は失敗すると、よく落ち込んでいた。そんな時に、アレグサー教授は下を向く私の頭の上に、こうやって手を乗っけ、そして、その手の上にレガスさんが自分の手を乗っけた。


『次は、上手くやれるさ』


 私は、小さな自分には足りない部分をお祖母様から習った重ねがけ魔術で補い、色んな仕事をこなせる様になってきた。


 失敗しても、2人は決して怒らなかった。常に励まし、促すだけ。

 そしてそれは、1人で生きて行かなければならなくなった私の糧となった。


「僕も、ミネルバの魔術が上手になったでしょう?」


 私は、アレグサー教授に頷いてみせた。




「それにしても、この鍵は、もう少し改良の余地があるね」


「アレグサー教授、この鍵の先の空間って、どうなっているの?」


 アレグサー教授は、私の問いに頭を傾げながら考える。


「うーん?言ってみれば、真っ白い箱、かな?」


 真っ白い箱?え?


「何もない真っ暗闇の空間だと恐いと思って、真っ白い箱にしてみたんどけど……」


 真っ白い箱の中に、1人で佇む自分……こ、恐い。そんな所にずっといると、確かに気が狂いそう。


 


「団長、千切っては投げ、千切っては投げしてもいないで、もう少し丁寧に敵をこっちに寄越して下さい」


「そんな暇は、ないっ!!」


「一体全体どうしたっていうんですか」


「今がこの瞬間、ミネが誰かと、いい雰囲気になってると腹の虫が告げている気がする。急いで帰らねば」


「なんですか?それ」





  オルツァーさんのお腹の虫、またもや活躍中。

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